実習スタート
「道具がもうほとんどないだと!?」
珍しく0が驚いている。
無理もない、現在この道具屋に売れる道具が生徒が買い占めていきほとんどないらしいからだ。
「次の入荷はいつなの?」
鈴も参加している。
ぼくは…ウィンドウショッピングを…。
「は、早くても明日じゃよ。ルスピカまで向かわなければいけぬからのう。」
道具屋の店主であるおじいさんが気圧されている。
ちなみにルスピカはヒラブルから北に向かった街である。
「…回復道具を有るだけくれないか?」
「あるのはヒールカプセルが2個にチャージカプセルが1個じゃ。」
「これだけで乗り切るのか…。難しいかもね。」
いつになく鈴が真剣な表情をしている。
「それだけを貰おう。あとそこのウィンドウショッピングしている奴にその剣を買ってやってくれ。」
0が突然こちらを指差して言った。
「ちょっと待って下さい!ぼく買えるだけのお金持ってないよ!」
「安心しろ、俺の奢りだ。貸し一つだからな。」
いつもは厳しく冷たい0が優しい。
やっぱり同じ班だからかな…。
今は危機的状況だからなるべくダメージを少なくしたいからかな?
「なにボケッとしている。早く来い。」
「わかった〜。」
…後者だろうな、きっと。
街の外へと続く門にたどり着いた。
そこには先生がいた。
「お前ら遅かったな。お前らの班以外の班は全て出発したぞ。」
「くっ、まずいな‥。」
0が悔しがっている。
なぜだろう。
「明日の夕方までに戻ってくるんだぞ。」
出発した。
0が早足で進んでいく。
「0〜、どうしてそんなに早く歩くの?」
あまりにも先に行きすぎているためぼくが止めようと思って声をかけた。
「お前ら遅いぞ。早く行かないと最初に戻ってこれないだろうが。これもお前らが鈍くさいせいだ。」
0の目的が「一番最初にゴールする」ということはわかったが、遅いのをぼくたちだけのせいにするのは納得いかない。
少しくらいは自分にも責任があるだろう。
「わかったから、こっちも少しはペースを上げるからさ、そっちも少しペースを落としてくれない?」
「ああ、いいだろう。」
「ありがとっ、ぜろ。」
仕返しに少し呼び方を変えてやろうかと思った。
するとぜろは顔を真っ赤にして顔をそらした。
「は、早く行くぞ!」
やっぱりどこかおかしい…。
ダンジョン−そこは魔物(人によってはモンスターともいう)が生息する場所。
しかし、その魔物もE級危険地区の魔物に比べたらかわいいものだ。
それに苦戦する私たちもまだ半人前以下ということだろうか?
「飛鳥、そっちのウルフお願い!!」
いつもは「飛鳥っち」と呼んでいる鈴も真剣だ。
「わかりました!『燃やせ フレア!!』」
魔法陣が私の周りに現れ、そこから火の玉が発射される。
やっぱりまだ威力が小さいらしく、あまり利いていないようだ。
「魔法に頼るな。『閃風刃』」
ぜろが剣を風のように振り下ろす。
「みんな、どいていて。『我に仇なす者、天雷によって裁かれん ヘヴンズライトニング!!』」
空から白い雷が落ちる。
そして周りの魔物が一瞬によって消滅する。
「ふっ、その魂、天に捧げよ」
あとは決め台詞で締める。
ちょっとかっこいい。
「どう?魔術を覚えていけばこんな呪文書にない呪文を考えれるし、こんな複合魔術を身につくよ♪」
「すごいですね!私もそんなやつをやりたいです!」
「ならまずは剣士スキルからやってみろよ。」
ぼくがあこがれにふけていると、ぜろが口を挟んできた。
口を挟むのは彼の趣味なのだろうか?
「わかってますよ。そういえばさっきの閃風刃もオリジナルだよね?」
「ああ、そうだ。あと敬語とタメ語が混じって変だぞ…。」
「うるさいな。けど、今回ぜろがここに魔物の群れがいるのを知っていながら『最短ルートだから仕方ないだろ』とか言っていなければこんなことには…。」
「黙れ。」
低いトーンで言われる。
その威圧感で何も言えなくなってしまった。
「とにかくさ、あんな魔物邪魔だから倒していけばいいんだよ。簡単なことじゃん。」
「だな。」
「…倒していたら逆に時間くいません?」
あれ?なんで飛鳥が魔術を?
剣士スキルでカッコよくキメさせるはずだったのに…。
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