閑話~暗躍~
無駄話
「報告よろしいでしょうか?」
暗い部屋
しかしそこには無数の機械のようなものや薬品みたいなものが多数散らばっている。
研究室だろうか、そこで機械を弄っていた少年が身軽な服装の人物に声をかけられていた。
少年は機械を弄る手を止め
「何だ?」
と言う。
開発の邪魔をされたからだろうか、とても不機嫌な様子である。
「俺の手を止めさせるっていうことは余程の事なんだろうな?」
「はい、例の一行の件についてです。」
その言葉により、少年の目付きが変わった。
「その件については確か2日前に目標人物の消滅という報告を受けたが?なんだ、やはり俺の言った通り馬車の中に隠れていたか?」
「いえ、旅の間にそのような気配はありませんでした。」
冗談で言ったつもりだったが事務的な反応しか返されなくて少年は心の中で舌打ちした。
「それに境界付近に待機させていた盗賊どもに捕まったという報告も受けています。」
「なら盗賊共から逃げて合流したってことじゃないのか?ったく、あいつらどうせ俺の渡した魔力吸収縄じゃなくて普通の縄でも使ってたんだろ。使えないな。」
「ええ、恐らくは。それで一行はアクナリアに付き、今朝になって宿屋にいるのを確認したのですが、妙でして・・・。」
「・・・どういうことだ?」
「目標人物以外の二人と同様なのですが、アクナリアの街の門をくぐったという報告が無いのです。」
少年は思った。
それは見張りが見落としただけではないのかと。
しかし少年が送り出している人物は皆偵察などその手の実績が多くある精鋭のみ。
その彼らが見落とすなどありえない。
ならばどうやって宿屋に出現したか?
目標が未知の魔術である空間魔術を行使できるということは少年は知っている。
しかしそうなるとなぜ盗賊に捕まってから五日間もの間姿を暗ませていたのかが謎になる。
「・・・面白い。」
そう少年は感じた。
報告をした人物が予想外の反応で驚いていたがそんなことどうでもよかった。
「やっぱりあいつは俺の期待からさらに上をいく。実に面白い。」
少年には目標人物が五日もの間一行とは別のここではないどこかにいたという確信があった。
というかそれしか可能性が残されていなかったのである。
ここではない場所「ウラル」、空間魔術によりそこへ行ったのだろうと少年は推測した。
そしてそういった特殊な能力ばかり持つ彼女を早く手に入れたくなってきたのだ。
空間移動に異世界移動、数多の剣技に魔術、そして精霊・・・。
少年は機械を弄る手を再開させた。
「早くこれを完成させないとな。待ってろよ『スピカ』。」