閑話~一方その頃・・・~
今回はいつもと違い三人称視点でお送りします
※「幕間」という表現が適切でないと判断しサブタイ変更しました
一方その頃・・・、とは言っても飛鳥達がウラルへと空間移動した三日後のことである。
ちなみに飛鳥達が買い物に行ったのはウラルへ行った次の日なのでそこから二日経っているということになる。
ここは地精霊の加護する領域から水精霊の加護する領域に入って約100kmの位置に馬車を曳きながら歩く少年・少女達の一団があった。
そう、残された6人である。
「なあ、そろそろ休憩にしないか?」
「馬鹿言うな、爪。まだ歩きはじめて30分も経ってないぞ。それともお前は言葉通り馬鹿だからそういうことも理解できないのか?」
骸亞が爪を煽る。
彼は爪は単純馬鹿だからこういえば反発してしばらくは歩き続けるだろうと思ったのだろう。
しかし普段ならそうなのかもしれないが今は
「そうはいってもよぉ、疲れたものはしょうがないだろ。」
「私も賛成。飛鳥達がいないから私達が休むまでの時間も休める時間も短くなって夜すぐに寝ても疲れがあまりとれなくなってきたみたいなの。」
普段は爪の意見にあまり賛成しようとしない琴葉もこの時だけは爪の意見に同意した。
飛鳥達がいなくなってからはあまり親しくなかった彼らも飛鳥達の穴を埋めるために協力し話す機会が増え今では仲間として気兼ねなく話せるようになっていた。
もちろん0は自身の本名(骸亞)をすでに教えている。
「・・・その分野営に入る時刻を早めているだろ。」
「それでもよ。野営に入るとしてもその準備等で体力使って結局ちゃんと休める時間になるのは前と変わらないじゃない。一日くらいは完全に休みの日くらい作ってもいいんじゃない?」
「・・・それはわかっている。だがアクナリアには今日着く予定だ。着いたらそこで宿を取って二日は自由時間を得られる。どうせあいつらとあそこで落ち合うのは二日後だ。」
アクナリアとは水精霊の加護する領域の街で最大の場所であり、豊富な水による文化が発展した「水の都」と呼ばれるとても清らかできれいな街である。
彼らはウィンへ行くための寄り道としてアクナリアで一息入れるつもりであった。
しかし、今ではそこで飛鳥達と落ち合うという目的に変わってしまった。
「しかし、一番心配なのがあいつらが本当に盗賊から逃げ延びることができたかってことだ。いや、飛鳥や鈴の強さは十分わかってはいるがそれでも飛鳥は俺らが最後に見たときは捕まっていたし大の大人相手に符養と鈴が飛鳥を取り戻せるとは思えないんだが・・・。おい骸亞、そんな怖い顔をすんなよ。もちろん逃げれていることは信じてはいるがどうしてもそう思っちまうのが普通ってものだろ。」
「フーちゃんいる。フーちゃん強い、心配要らない。」
「俺だって鈴の強さをわかってる。それでも多対二や三なら当然不利だろ。」
「まあ待て。確かに竜の言うことには一理ある。だが信じてやるっていうのが仲間だ。そうだろ?」
だが骸亜は逆を言えばそれしかすることができないという自分達の無力さを実感していた。
だがそこに琴葉が割って入る。
「でも私は普通に大丈夫だと思うけど?飛鳥には言わないでって言われてたけどこの際だから言っちゃうけど、飛鳥って精霊を召喚できるの。だからそう心配することは無いと思う。」
「は?精霊をか?流石にそれは信じがたいぜ。」
爪がそう言いながら鼻で笑う。
この世界では精霊と契約できる者は実力者の召喚士でも極稀であり、複数体と契約できる者などその中でもそうはいない。
ましてや飛鳥は魔術師であり、知人以外からは召喚術の知識は無いと思われている。
故に普通なら爪の反応のように戯言のように思われてしまう。
しかし爪のこの反応は飛鳥や琴葉と出会って間もなく彼女らのことをあまり知らないからであり、少なくとも琴葉の言葉を完全に疑っていたのは彼だけで、流流や竜は武器召喚等変則的な召喚を行える飛鳥ならあり得なくはないと半信半疑、鳴はグラン戦の後日琴葉から精霊と契約したという話を聞いていたので疑うことはなかった。
そして骸亜には思うところがあった。
約2ヶ月前、あのヒラブル役所で閉じ込められたときだ。
自分や鈴に感覚遮断魔術を使ってまで隠したかったこと・・・。
ずっとそれが気になっており、もしやと思っていたがそれが今確信に変わっていた。
琴葉は爪が笑ったことに対して少し癇に障ったのだろう。
「そんなこと言うならここで精霊グランを呼び出して聞いてみようか?精霊と契約したのは飛鳥だけじゃないんだから。」
その言葉に爪は「え?」聞き返してしまう。
飛鳥の精霊召喚について知っているという事実があるなら彼女もという可能性があるはずだが、それ以前に爪は飛鳥は召喚術をできないと思っているため、その可能性すら無意識に否定していたのだ。
彼以外も予想はしていたが今ここに精霊召喚できる人物がいるという事実に驚きを隠せなかった。
琴葉は皆が驚いていることを気にも留めずさっさと召喚の詠唱を始める。
「『契約者琴葉が呼び出す。出てきて、グラン!』」
魔方陣が展開され、そこから年老いた男性が出現する。
一見普通の人間に見えるが彼にはただならない風格があった。
琴葉は他の皆が呆気に取られていることに気づきもせず、男性と話始めた。
「小娘、貴様が儂を喚び出すとは珍しい。何か用か?」
「精霊グラン、私達旅の途中で飛鳥達とはぐれちゃったの。それで彼女達が無事か・・・。」
「ああ、無事だ。盗賊に捕まったあやつ等に喚び出されたからな。儂やルナらが解放したから今頃貴様等を追いかけているのではないか?」
「・・・飛鳥達無事なの?」
「そう言ったつもりだ。」
「よかったぁ~。」
琴葉は安堵の溜め息を吐いた。
先程まで飛鳥の無事を確信していた彼女も内心ではとても心配していたのだろう。
そして骸亜も、皆に気づかれないくらいに同じくホッと一息吐いてた。
「なら大丈夫だろ。あいつ等が追いかけているのかウラルで待っているのかはわからんが兎に角俺達はアクナリアにさっさと行けばいいだけになったというわけだ。そこで待てばいい。」
グランも含めて彼らは影月の怪我を知らない。
それ故にウラルへ行かざるを得なくなったのだがもし影月の怪我がなければ彼女らは自分達だけウラルでのんびりしてられないと思うか、そもそもそんな発想せず骸亜達を追いかけていただろう。
もしかしたらもうこの時点で追いついていたかもしれない。
「そうね。・・・そういえば街に着いたら幾らか自由な時間はあるんでしょ?それにふかふかのベッドでゆっくりすることもできるよね?」
「ふかふかかはわからないが旅の予算を考慮しながらその中でできるだけ最高の宿泊施設にするつもりだ。」
彼らは旅の資金として幾らか武具屋の親父から貰っている。
これは食糧費や街での宿泊費に使う分であり、勝手な事には使うなと釘を刺されている。
みんなはちゃんと自覚しているだろうと飛鳥は信じていたが、念のためとして一番金銭の管理に厳しそうな骸亞に管理を任せている。
「ついでに何か旨いものも食いに行こうぜ。あいつらには内緒でさ。」
「神、それはやめておいた方がいい。もし鈴達が俺達を追いかけてきているのならあいつらは俺達みたいに食糧を持っているわけじゃないからな。ひもじい思いをしながら俺達を追いかけてきているならそんなことしちゃ悪い。」
「だが、あいつらがウラルに行っているなら俺達に黙って旨いものを食っているはずだ。その時は遠慮なく実行させてもらうか。」
骸亞が悪い顔をする。
こういうことに関しては世界が変わっても、長い時が経とうとも、彼とは意見が合うみたいだった。
そして彼は悪い顔をしながらあっちの世界での飛鳥の料理の味を思い出す。
他の人からしたら普通の料理と何ら変わりがないのかもしれないが、骸亞はあの料理をまた食べてみたいと思ってしまうのだった。
他の人間は街についた後の自由時間について各々考えていた。
グランは自分のようはもう済んだのだろうと思い静かに元の場所へ戻ってしまった。
「・・・久しぶりに義妹の顔を見に行ってやるのもいいかもな。」
骸亞も自分が街に着いた後のことを考える。
彼らは再び歩み始めた。
ちなみに彼ら一団が街に着くのはこの日の夕方であり、飛鳥達がこの世界に戻ってくるのはそこから二日後のことである。
幕間ですが見てわかるように前回の幕間とは繋がってません。
あれはあれでいつか時期が来たとき差し込みます。
キャラ紹介は前に大雑把に書いた爪の紹介です
今回はまじめにやります
爪 戦士科 四年
竜や鈴の幼馴染。
平行世界と違いこちらでは骸亞とは知り合いでもなく今回の旅が初対面。
単純で勉学が苦手だが、戦闘に関しては学科内だけではなく学年内でもトップクラス。
一度決めた目標は絶対曲げずに実現しようとする。そのため周りが見えなくなることも。
鈴などストッパー役がいないとわがままになることがある。
ちなみに彼のために今回の精霊についてのことをフォローしておくと彼は飛鳥とまだあまり交流が深くなく、またあの反応はこの世界の普通の人なら当然の反応です。
仮に「彼女は精霊を召喚できます」と言っても鼻で笑われるだけです。
爪は琴葉がグランを召喚したのを見たことにより彼女の言葉を信じ、あることを決めました。