ごめんなさい
その後はもう姉さんの企画は実行するものとして話は進み、私たちはそれぞれ一人ずつ一日だけ飛鳥たちの代わりに飛鳥たちの学校へ行くことになった。
順番としては、鈴、私、影月の順になった。
そしてそれからはグダグダと会話しているだけで、1時間が経過する頃、
「よし、ならもう俺達は帰ろうかな。このままグダグダ話しててもしゃーないしな。話が他に無いなら帰らせてもらうぜ。」
「それなら麻雀しようぜ。みんなできるだろ?」
「えー?竜にぃや神は鈴ねぇや望たちと打ってるかもしれないけど俺この前ルール教えてもらってやっとのことで役覚えたばかりなんだけど?」
「大丈夫、大丈夫。カモらねえから。」
「神なら逆にカモられるだろうな。」
「あー、私パス。昼にみんなで買い物行こうかと思ってるの。」
「あ、鈴ねぇ、それ私も行ってもいい?」
「もちろん。というわけで麻雀するなら竜の家で雷牙入れて三麻してね。」
「おお、そうさせてもらおうかな。というわけで竜、雷牙行こうぜ。」
「ちょっ、鈴ねぇ、さっきの話聞いてた!?俺ルール覚えたてなんだって。普通の麻雀ならともかくいきなり三麻とか。」
「大丈夫だって。役の作り方とか基本は4人の時と同じだから。」
「・・・そうだな、久しぶりに三麻で神とやりあうのもいいかもな。最近は鈴の独り勝ちばっかりで全然和了れなくてつまらなかったし。」
そう言いながら竜さんは立ち上がり、雷牙を引っ張って神と一緒に部屋を出ていった。
・・・正直私にはさっきの会話でみんなが何を言っているのかほとんど理解できなかったけど。
わかったのは午後に残ったこのメンバーで買い物に行くことだけだ。
私は「まーじゃん」、「さんま(秋刀魚?)」というのがどういうのか気になったけどとりあえず竜さんたちが家を出てから椿と影月を連れて部屋を出て椿の部屋に行くことにした。
そこで私は先ほどの影月が椿を騙したことを弁解し、謝罪させた。
「・・・というわけなの。この子も悪気があってあんなことをしたわけじゃないの。」
「・・・清香、あんまり椿に本当のこと言ってほしくなかった。」
「椿を怒らせたままにさせることなんてできないでしょ。」
「・・・。」
「あと、悪気はなかったとはいえ椿の親切心を踏みにじるようなことになったんだから謝ろう?私も謝るから、ね?」
「・・・ごめんなさい。余計な心配をかけさせたくなかったから。」
「・・・いいわよ。形はどうあれ私に本当のことを伝えてくれたんだから。」
椿は照れながら影月にそう言った。
影月も照れていたが、椿と違ってそれに加えて拗ねているように見えた。
恐らく私が勝手にばらして無理に謝らせたからだろう。
私は影月の頭を撫でながら
「ちゃんと言えたね。」
「・・・子ども扱いしないで。」
「13歳はまだ子供だと思うけど?もちろん私もだけど。」
「・・・けど、子ども扱いはされたくない。」
「なら大人にみられるような行いをしなさいよ。そうすれば飛鳥も子ども扱いしないわよ?」
「・・・。」
影月はどうしてか返答に困っているようだった。
そしてどうしてか私を見てきた。
なんだろう?私にフォローでもしてほしいのかな?
「なによ、やっぱりまだ子供ね。」
椿がニヤニヤしながら影月に言った。
どうやら椿は影月が思っていることを理解しているらしい。
「・・・・・・もう子供でいい。それにこのことで私が子供ならあなたも人のこと言えない。あなたも鈴に・・・。」
「あー!言うなー!」
椿が影月の言おうとしたことを止める。
私は何が何だかわからなかったけど、椿と影月が楽しそうならそれでいいかと諦めた。
「さて、話も終わったしそろそろ戻ろっか。椿ごめんね、わざわざ別の場所に連れてきて。」
「別に謝ることなんてないわよ。私も誤解したままでいたくなかったし。」
椿はやはりまだトラウマが消えないのか私にしがみついてきた。
しかもさっきよりも強くつかんでくる。
それに気づかなかった私は
「ちょ、ちょっとフー、どうしたの!?」
「・・・ごめん飛鳥、しばらくこうさせて。」
そこで私は影月のトラウマ再発に気が付いた。
「大丈夫なの?」
椿も心配してくれる。
「・・・平気。少し経てば気にしない程度になる。」
今回は無理に自分のトラウマを自分で掘り起こしたからこうなっているのだろう。
説明するにしてももうちょっと方法があったのかもしれない。
トラウマのことを話せば影月がまたそのことを思い出すことくらいわかっていたんだから配慮して私がフォローを入れなきゃいけなかったのに・・・。
そして、「平気」と言った影月は私に抱き付いたまま小さい声で「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」と、自分が殺してきた人たちへひたすら謝っていた。
私は影月を安心させてあげようと抱き付き返した。
椿も影月が大丈夫じゃないことに気付いたのか頭を撫でていた。
影月が落ち着いてから私たちはもといたリビングに戻ってきた。
時間にして30分くらいだろうか?それくらいしか空けていなかったはずだが、その間にカオスなことになっていた。
「飛鳥って、朝起きたときすごい稀だけど寝惚けるときがあるんだけど、その時に私をお母さんって言って抱きしめてくれるからすごい可愛いの。」
「あ、それも清香っちもだよ。私がたまたま泊まりに行ったときにそれが見れてすっごい可愛かった。」
「もう・・・、恥ずかしいからやめてよ~・・・。」
どうしてか私(飛鳥)の秘密暴露大会になっていた。
さっきの会話を聞いてる限り、どうやら私と飛鳥の秘密はかなり共通している部分が多いみたいで、それを虎と鈴と姉さんで確認しあっているみたいだ。
そして自分の恥ずかしい話を暴露されまくっていた飛鳥は顔を真っ赤にしながら、三人を止めようとしているが、半分ほど止めるのを諦めているみたいだった。
私はやっている内容を理解するなり即座にその中に入ろうとしていた影月と椿を引き止め、三人を止めさせるべく短刀を召喚し影月に渡す。
影月は何故渡されたのかわからなかったようだが、私の無言の圧力により察し鈴の背後に回る。
私は剣か銃か迷ったが、警告するためだけなので銃を召喚し話に夢中でこちらが近づくのを気付かない虎と姉さんの頭に銃を突きつけた。
「・・・何してるの?」
「え・・・何これ?」
「銃だよ。勿論本物のね。」
姉さんの表情がみるみる青ざめていく。
私も嘘をついたわけじゃない。
これは本物の銃だ。しかし弾は銃弾ではなく魔力。
そういうことを予想していたのだろう、姉さんの表情にはまだ少し余裕があった。
「へっ・・・へへっ、どうせ脅しのためのハッタリでしょ?本当は偽物か空砲でしょ?」
「・・・試してみる?」
私はそう言いながら両方の銃に魔力をこめる。
こういった時、撃鉄が無いため撃鉄を起こして「カチッ」というような音を聞かせて脅すことができないのが残念だ。
「ちょっと飛鳥!魔力を・・・」
私が魔力を使ったことで私を心配して影月に短刀を突きつけられている鈴が言った。
私はそれに対して
「少しくらいなら大丈夫だよ。この世界には魔力はないとはいえ魔力が完全に回復しなくなっているわけじゃないんだから。自分の魔力生成があればあと4日あればこのくらいの量は取り戻せるよ。」
しかし大気中に魔力はないから食事などによるエネルギー摂取からの魔力変換に頼るしかないから回復速度が通常より著しく下がる。
昨日今日でも回復量はそこまで多かったとは言えない量だが、最下級魔術を出せるくらいの量を回復できている。
けどそれは必要最低限の量しか食べていなかっただけだからもう少し多く食べれば回復量も増えるだろうし平気平気・・・だといいなぁ。
とにかく私は軽く痛い目にあわせるくらいの量の魔力を溜めてまずは姉さんに対して引き金を引こうとする。
「清香、やめてあげて。私は平気だから。お姉ちゃんたちには悪くしないであげて。」
飛鳥が止めに入った。
けど飛鳥は恥ずかしかったからか自分だけの秘密を明かされただけだと思っているらしい。
私の秘密もばらされていることは聞こえていなかったみたいだ。
私はとりあえず二人の頭に突き付けた銃を頭から離した。
そして片方をもとの場所へ返しながらもう片方を連射モードに切り替える。
その直後に引き金を一瞬だけ引いて連射モードの弾を一発ずつ姉さんと虎の背中に当てた。
「「いたっ」」
二人して針がチクっと刺さったような声を出した。
私は残った銃も返しながら言った。
「まあこれで勘弁してあげる。流石に次やったらこんなんじゃ済まないけど。・・・やるなら私や飛鳥がいないところでやってよ。」
「普段はあんまり怒ることはないけど怒った時は誰よりも怖いっていうところも一緒か・・・。」
「けど清香っちは飛鳥っちよりも短気だから、って、げったん!刃物を突き立てないで!危ないから!」
影月が鈴の首に短刀を突きつけていた。
さすがに危ないかなと思った私は影月の持っている短刀も返した。
短刀を無くした影月は私を一瞥した後、鈴を離す。
「可愛い飛鳥を確認しあっていただけなのに・・・。」
「虎、それと鈴とお姉ちゃん、今回は自業自得よ。」
「・・・自分も参加しようとして人のこと言えない。」
「あ、あなたに言われたくないわよ!」
「とりあえずお昼にしない~?」
鈴は空気を読まずにマイペースなことを言った。
だが言っていることは正しく、正直私もお腹がすいた。
とは言っても今はまだ11時半になろうとしているかどうかというくらいの時間である。
それに対して姉さんが言った。
「それじゃあ今日は外に食べに行きましょうか。ちょうど買い物にも行くつもりだったんだし。お昼を食べた後に買い物できるところにしましょうか。」
「お姉ちゃん、駅前はどうかな?あそこなら色々あるから好きなものを選べると思うよ。」
「そうね・・・。よし、駅前に行きましょうか。そこで食事した後に近くのショッピングモールで買い物をしましょう。というわけで各自、準備してきなさい。12時に玄関に集合。」
「「「はーい」」」
全員返事をして各々準備のために自分の部屋へ向かう。
私も部屋着から外用の服に着替えるために飛鳥と部屋に行く。
とは言ってもその服は飛鳥のなんだけど・・・。
そして遊びに来ている虎は1人で待っているのが嫌だったらしく、私たちについてきて一緒に飛鳥の部屋に行った。
「向こうの世界での服ってどんな感じだったの?」
「うーん、どうって言われてもなぁ・・・。とりあえず私やフーは動きやすい服が多かったはず。いつ戦闘になってもいいようにって基本的に外に出るときはおしゃれとかしないで戦闘用の服を着てたよ。それが向こうでは普通だったかな。おしゃれなんて一部の裕福な層くらいしかしなかったし。」
「家にいるときも?」
「さすがに家では今着ているようなラフな格好だよ。家でも防具着てても落ち着かないだけだしね。」
「なら・・・。わかるわよね、飛鳥?」
「うん。もちろんだよ虎ちゃん。」
二人の目の色が変わる。
私は身の危険を感じ、適当に着替える服を取って部屋から逃げようとする。
しかし途中で捕まり、二人相手に何もできずに取り押さえられてしまった。
「逃げないでよ。別に悪いことをするわけじゃないんだから。」
明らかに悪いことを企んでいそうな顔をして虎が言った。
もちろん虎ほどではないけど飛鳥も悪い顔をしている。
そのため虎の言っていることが信用できないんだけど・・・。
「やっぱりさ、普段おしゃれをしないならこういう時にやらないと機会が無いと思うんだよね。清香は可愛いんだしかわいらしい服を着ないともったいないよ。」
私を捕まえている飛鳥がそんなことを言うけど容姿が全く同じの彼女に言われても自画自賛されているようだった。
いやそうじゃなくて、それを飛鳥に言われても本心じゃないとしか思えないんだけど・・・。
もし本心だったとしたらそれ自分にも言えているということに気付いていないのかな?
私の若干の戸惑いに気付きもせず二人は怪しい笑い方をしながら虎は私に迫り、飛鳥は私を捕まえたままにしている。
私は抵抗しても無駄だと諦め、二人の気が済むまで着せ替え人形にされることになるのであった。
自分で書いててあれなんですけど異世界編長いな、おい。
というわけで次回からは当初の予定からいくつか省略して書いていきます。
・・・と言いつつ次回は幕間を挟もうかと
今ファンタジー要素がほとんどないからなぁ・・・