異世界の仲間
すみません、年末年始前後に二回風邪をひいてしまったため最近頻繁にできてた更新が遅くなりました。
その時だった。
「ピンポーン」
家のインターホンが鳴った。
「おっ、来たわね。」
そう言って姉さんが立ち上がり、玄関に歩いていった。
「何?またアニメか何かのグッズでも買ったの?」
「違うわよ。昨日来るように頼んだの。」
「宅配を?」
「竜を!」
ニヤニヤしている椿にそう言い返した姉さんは少し顔を紅くしながら玄関に向かった。
そしてもう一人の姉さん鈴は「竜」という名前を聞いたとたんソワソワし始めていた。
「ね、ねえ飛鳥っ・・・じゃない清香っち、『竜』ってもしかしてあの竜?」
「うん。・・・と言っても、こっちの世界のね。姉さんと同い年だから私たちより年上だよ。・・それよりどうしたの?なんかいつもの鈴らしくないけど。」
「な、何でもないよ。ただこっちの世界でも私と一緒に竜がいることに驚いただけ。」
「一緒と言えば、爪も幼馴染みの一人だよ。こっちでは『神』っていう名前だけど。」
「えぇ~、爪もいるのぉ~?あいつ、異世界にでも空気読めないの?」
あれ?
竜の時はすごい嬉しそうだったのに爪の時はすごい嫌そうにしていた。
わかりやすいほどの態度の違い。
もしかして鈴って・・・
「竜のこと好きなの?」
いつもなら「爪のことが嫌い」と考えてしまうんだけど、どうしてか今回はそう考えた。
いつもの私からしたら意外な恋愛面の勘の良さ。
もちろんその時の私は自分が恋愛に疎いとは思っておらず、自分のそれを知るのはもっと後のことだ。
そして、鈴は図星を突かれて
「な・・・飛鳥何言ってるの?私があの竜のこと好きなはず・・・。」
「お邪魔しまーす。」
鈴の言葉の途中で玄関から竜さんの声がした。
鈴はその時体をビクッとさせてまたソワソワし始める。
多分だけど、異世界 ・・それに年上の竜が見れるってことで緊張しているんだろう。
とりあえず私は鈴に近づき、彼女だけに聞こえる声で話す。
「もちろん他の人には話さないから。」
「・・・なんでこんな時に限って飛鳥の勘が鋭いのよ。普段はむしろ鈍いほうなのに・・・。」
「・・・別にフーや琴葉たちには言って構わないか。みんな口は堅いし。」
「え?ちょっと待・・・」
「ふふっ。そういう表情、初めて見た気がする。」
「・・・清香っち達にはあんまり見せなかっただけ。さっきも言ったじゃん、私だって乙女なんだって。」
「そうだったね。」
「入るぞー・・・おお、本当にもう一人ずつ居やがる。・・・ってこいつらは何してんだ?」
会話の途中に居間に竜さんが入ってきた。
竜さんは私と鈴が近づいて話していたのが私たちがしていることと何か違うことをしていると思われてしまったみたいだ。
竜さんにそういわれて私と鈴は結構顔が近い距離で話していること気付いた。
私たちはお互いバッと離れた。
「りゅ、竜さん、お久しぶりです。」
「ああ、お前が向こうの飛鳥か。」
「今は私と飛鳥の区別のために清香って名乗ってます。あの・・・さっきのことは・・・。」
「ああ、気にするな。お前とそっちの鈴がそっちの趣味のそういう関係だってことはわかったから。俺はそういう人間を見下すようなこと・・」
「違うわ馬鹿!」
直前までもじもじしていた鈴は竜さんに好き勝手言われたのが気に障ったのか旅でいつも竜や爪にやっていたように強烈な拳骨を竜さんに食らわせた。
しばらく竜さんは悶絶する。
そして立ち直って第一声が
「痛ってぇ・・、そっちの鈴もこっちと変わらねえのな。もしかしてそっちでも俺や神はお前と腐れ縁なのか?」
「ええ、幼馴染よ。神って人はこっちでは爪って名前だけど。」
「なら気を使わなくていいな。」
「だからってそんな冗談を真顔で言うんじゃないわよ。・・まったく、私が知ってる竜よりも年上で背も高いのにやることは変わらないなんて・・・。」
「安心したのか?」
「幻滅したの。もうちょっとかっこよくなってると・・・ううん、何でもない。」
旅の間毎日やっていたようなやりとりをしており、私はひとまず安心する。
なんだかんだ緊張してたけどいつもの調子で話せているようだ。
・・・と、安心していたら突然背中を叩かれた。
振り返ると
「ヤッホー飛鳥、久しぶりだね。」
そこにはこの世界の琴葉であり、この世界の竜の妹である虎がいた。
そしてその双子の兄である雷牙も部屋に入ってくるのも見えた。
「虎、久しぶり。」
久しぶりに会った気がしない異世界の友人はその兄の竜さんと同様どこも変わった様子はなかった。
あえて言うなら会った当初持たれていた警戒心がなくなっているところだろう。
「よく私が私だってわかったね。」
「そりゃあこっちの飛鳥とは普段一緒に学校生活を過ごしたりして一緒にいたからね。あの子のことならもしかすると鈴姉や椿よりもわかってるかも。」
「姉さんや椿よりも?それはすごいね。あ、私のことは清香って呼んで。『飛鳥』だと色々ややこしいからこう名乗ってるの。」
「わかった。それで話の続きだけど、私、結構飛鳥の鈴姉達に話せないような悩みとか色々聞いてるの。・・・まあ最近は椿に話したりもしているみたいだけどね。けど、まだ会って日が浅い椿よりも私のほうが飛鳥のことをわかっているつもりだよ。」
「・・・『まだ』って、抜かれるつもりなんだ。」
「ん?なんかあす・・清香と虎ちゃんで私の子と話してるような気がしたんだけど?」
私と虎の会話中に自分の名前を聞きつけた飛鳥が現れた。
虎はなんでもなさそうに今話していたことを飛鳥に教える。
「飛鳥のことを私が一番知っているっていうことを清香に教えてたの。まだまだ椿には負けないんだから。」
「なんか聞き捨てならないことが聞こえてきた気がするんだけど?何?私が虎より飛鳥のことを知らないって?」
そこにまた自分のことを聞きつけた椿が現れる。
私と飛鳥から見て軽い修羅場が始まったような雰囲気なんだけど・・・。
「当然だよ。いくら義妹で仲がいいからってまだ椿は飛鳥に会って間もないじゃん。それなら私のほうが一緒に過ごしている日数多いから私のほうがよく知っているよ。」
「上等じゃない。なら、どっちが飛鳥のこと知り尽くしているか勝負よ。飛鳥、審査お願い。」
「ええ~。本人のいる前でそんなことやらないでよ。それに審査もするの?」
「飛鳥、これは私達にとってとっても重要なことなの。どっちがより飛鳥のことを思ってるか白黒はっきりする時が来たんだよ。」
「だからそれを本人のいる前でしないでってば。私は二人のことどっちも大切だから優劣なんて関係ないよ。」
「そういうことじゃないの。もう、気にしないでさっさと始めるわよ。」
そう椿が言って飛鳥の抵抗むなしく彼女は二人の対決の審判として巻き込まれてしまった。
・・・多分飛鳥も思っているんだろうけど、飛鳥のことを一番よく知っているのって骸亜じゃないかな。
おそらく二人とも・・・そもそも椿は知っているのかさえ怪しいけど、二人とも忘れているんだろう。
とにかく私は三人に置いていかれる形となってしまって一人になってしまっているので周りの状況を確認する。
目の前では、ソファに座った椿と虎が飛鳥の秘密を暴露しまくって飛鳥が赤面している。
テーブルでは鈴が竜さんにいじられていて姉さんが竜さんに呆れて少し離れたところからその光景を眺めている。
そして影月は・・・
「へぇ~、そっちの世界の飛鳥から魔術のことは聞いたけどオリジナルの魔術も作れるなんて聞いてなかったぜ。」
影月は竜さんの弟で虎と双子の雷牙と話をしていた。
雷牙の言葉から察するにこっちの世界の魔術についていろいろ影月に聞いていたのだろう。
「・・・けどそれは魔術の術式の構成をちゃんと理解していないとできない。素人が挑戦すると命の危機に関わる。その例が飛鳥・・・清香のエレメントエイト。」
「ん?清香?誰だ、そりゃ?」
「私のこっちでの名前だよ。飛鳥と一緒だから区別できるようにしたの。」
私がそう言うと二人してこっちを向いた。
「フー、あんまり私の恥ずかしいことを他の人に教えないでよ。それにあれは命の危機には・・・ごめん、なってたね。けど、私は素人じゃないし、それ以外はちゃんと失敗なく作れてるじゃない。」
「・・・勝手に人に話そうとしたことは謝る。けど失敗は事実。」
「うっ・・・それはそうだけど・・・。」
「なあ、その『エレメントエイト』ってどんな術なんだ?」
「単なる八属性の合体攻撃術だよ。私たちの魔術には地水火風に・・・」
「ああ、属性のことはもう聞いた。」
「そうなんだ。で、それらには色々と性質があるんだけどその性質を全部組み合わせると小さな魔力でも大きな力を生み出せるような変化が生まれるらしいの。それで術を作ろうと思ったんだけど・・・。」
「見事に失敗した、と。」
「・・うん。ただの失敗ならよかったんだけど大事故に発展しちゃって。それも二回も。」
「・・・内一回は飛鳥の身体にも影響が出た。」
「だからフー、そういうことを言わないでよ。・・・まあとにかくそういうことだから普通は絶対に使わないようにしている魔術だよ。」
けど理論上はうまくいくはずなんだけどなぁ・・・。
どうして制御できないんだろう?
ということを考えながら今でも影月や鈴に内緒で術式だけ構築しなおしている。
私が話を終えると雷牙が目をキラキラさせていた。
「いいなぁそういうの。なんかこう、隠された奥の手!みたいな?」
「いや、本当に制御できないだけだから言うなればただの失敗作だよ?」
「わざわざ言い換えるなよ。『封印』のほうがかっこいいぜ?」
別にかっこよさは求めてないんだけど・・・。
というか姉さんもそうだけど、雷牙も「ちゅうに病」なのかな?
私はそう感じながら雷牙が色々とうるさそうだったので「封印」のままにしておくことにした。
だが雷牙の「ちゅうに」力は止まらない。
「あと八属性ってのもかっこいいな。すべての力を結集させるみたいな。」
「そうそう。全属性の力っていうのがかっこよかったから使ってみようって思ったの。」
だが私もそこまで人のことは言えず、術を作るきっかけのところで意気投合してしまった。
けど、そういう理由でないとあの時作ろうとしなかったと思う。
しかも当初は魔術を習いたてだったため、ただ単に術式に全属性を混ぜればいいかなって思っていたんだけどそれが第一の大事故になってしまい、その後も改良して大丈夫だと思っていたら第二の大事故になってしまったのだ。
「そういうのって一度は憧れるよな。ゲームとかじゃあそんな都合のいい技なんてないしな。」
「私のはゲームじゃないんだけどね。」
「ああ、そうだったな。」
「・・・私はそうは思わない・・・。」
どうやら影月はそういう人間ではなかったようだ。
後々考えるとそっちの方がよかったのかもしれない・・・。
影月は私が「ちゅうに」状態の姉さんや雷牙を見ていたようなちょっと引いた目で私を見ていた。
「なんだよ影月、わかってねえな。こういうのはロマンが大事なんだよ。」
「・・・はぁ・・。」
「・・・おい飛鳥、こいつ感情の有無の違いはあるけど根本的なところが椿とそっくりすぎて怖いんだけど」
「いや、そりゃあフーがこっちの世界の椿だから共通するところはあるんじゃない?としか言いようがないんだけど・・・。それと、言い忘れてたけど私こっちでは清香って名乗ってるの。」
「清香、お前もそういうところ飛鳥と似てるな。」
「そう?」
「ああ、そうだ。」
そんな気はなかったけどそうなのかな?
自分自身同士だから細かい違いに気付けてあんまり似ているところを意識していないから似てないと思ってしまうのだろう。
「そういや、異世界の俺ってどんななんだ?」
「・・・そういえば私、こっちで会った人の中で雷牙だけ元の世界で会ったことない。」
影月は雷牙を思ってか私に聞こえるくらいの大きさで呟いたつもりだったのだろうが、それを雷牙に聞かれてしまった。
影月がそう言うと雷牙は落ち込んだ様子を見せた。
すぐに私がフォローを入れる。
「けど私は会ったことあるよ。」
「「誰?」」
二人が同時に同じことを聞いてきた。
そんなに気になるのか・・・。
「『レオ』っていう人でね、剣士科の人でとっても礼儀正しい騎士みたいな人だよ。・・・私はちょっと苦手だけど。」
「ほう、騎士か。まさに異世界の俺らしいな。」
本人には内緒だけど正直初めて見たときは雷牙が異世界のレオさんとは思わなかった。
あの人はすごい真面目な人なんだけど、こっちの世界のあの人はそんな堅い印象を受けない。
けど私が苦手とするレオさんの熱血漢なところはちょっと違う感じであるみたいだ。
私は熱血さは雷牙の方が好きかな。
「・・・全く想像できない。」
影月がとても驚いた顔をしている。
ギャップがありすぎて驚くのも無理はないだろう。
本人を見たらそのギャップを実感してもっと驚くだろうな。
だが本人は影月の反応を見て
「そんなことないだろ?むしろお前の方が異世界の自分とのギャップあるんじゃないか?」
「・・・言われてみれば・・・・。」
「そういうことだ。だから異世界の俺が騎士でも問題ないってことだ。」
「騎士みたいなだけであって騎士じゃないけどね。」
「そこは気にしないでくれよ。」
けど言われてみたら私や骸亞は知ってるけど鈴や影月は私たちの世界の雷牙に会ったことないのか。
それを言ったらこの世界の鳴や流流・・・ついでにツヴァイにも会ったことないや。
・・って、誰か忘れているような・・・。
水星 虎 中学三年生
竜の妹で雷牙との双子の妹でもある。が、どちらかというと虎の方が姉っぽい。
イタズラ好きでよく高校生組をからかっている。
しかし親友の飛鳥にはそういったことはあまりせず出会った時から過保護気味に接してきた。
最近椿と出会い、いままで一緒にいた飛鳥が少し離れてしまった気がして寂しさを覚えている。と同時に椿に対して嫉妬している。
だが椿とは飛鳥に関して対立することが多々あるが普段は仲が良く(そうしないと飛鳥に怒られるというのもあるが)時に手を組む良きライバルとなっている。