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クロスワールド  作者: 氷冷 飛鳥
第五章 異
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姉妹

「飛鳥、さっき鈴・・・さんがこの子のことを『椿』って呼んでたけど、椿って誰?」



私と影月は飛鳥に連れられてウラルの鈴の家の風呂に向かっている途中の廊下を歩いていた。

もちろん影月は今歩けないので私が負ぶさっている。

私は『鈴』と言うとどちらかわからなくなってしまいそうだったので、区別するためにウラルの鈴を『鈴さん』と呼ぶ。

けどちょっとよそよそしくなってしまって嫌なのだから、こっちの鈴がいない時は普通に呼ぼうかな。

その意図が分かった飛鳥はどちらの鈴かは聞かずに答えてくれた。

流石この世界の私。



「椿ちゃんは鈴お姉ちゃんの実の妹。椿ちゃんは実家で暮らしているから今ここにはいないけど、遠くはないから時々ここに遊びに来て泊まったりしてるよ。だから、椿ちゃんの部屋もあって、着替えもあるの。」


「・・・それがこっちの世界の私?」


「うん。私も二人の世界から帰ってきて数日経った後に椿ちゃんのことを知ったからまだよくわからないんだけど、彼女武術をやっていてすごく強いくて頼りになるの。義妹になった私にも鈴お姉ちゃん以上に優しくしてくれて、私にとって大切な友達であって、頼りになるお姉ちゃんでもあるの。あ、同い年でも生まれは椿ちゃんのほうが早いから椿ちゃんがお姉ちゃんだよ。」



椿という人が姉であるということを聞いた時、私はほぼ無意識に影月の顔を見た。

影月は予想通り、目を輝かせていた。

その表情が可愛いのがなんとも愛らしく、こっちでは影月は年下だよという意地悪は言えなかった。



「あ、飛鳥、そういえばその椿って子が実家にいるって言ってたけどこの家が鈴さんの実家じゃないの?」


「ううん、違うよ。それは・・・ってもうお風呂に着いちゃったね。私、着替え取ってくるから先に二人はこの扉を開けて先にお風呂に入ってて。それと、脱いだ服はまとめて籠の中に入れておいてね。話はお風呂に入りながらゆっくりしよ。」



そう言って、飛鳥は別の部屋へ向かった。

階段を上る音が聞こえたから上の階に向かったんだろう。



「じゃあ入ろっか。」


「・・・飛鳥と一緒にお風呂。初めて。」


「そういえばそうだったね。」



脱衣所に入って影月を降ろし、服を脱ぎはじめる。

私が先に服を脱ぎ、次に影月の服を脱がす。



「・・・飛鳥のエッチ。」


「はいはい、ふざけないで脱がすよ。」



影月のボケをスルーして、まずは上半身の服を脱がす。

見えた影月の肌は全身痣だらけになっていた。

一度見た私でもこの痛々しさにまた驚いてしまう。



「こ、これ、骨が折れてるんじゃない?」


「・・・大丈夫だと思う。けど触ると少し痛い。」


「ごめん。私知らずにフーの体を触って・・・。」


「・・・構わない。少し痛いだけだから平気。」


「そう?フーがそういうならいいけど。」



私はそう言いながら下半身の服も脱がす。

足なども怪我しており、彼女が今自力で立てない理由が分かった気がする。

裸になった私は、体を洗うためのタオルを持って(籠の中に用意されていた)、同じく裸の影月をまた負ぶさって風呂場に入った。

中は私たちの世界のお風呂と変わらず、前回一度体験したはずだが再度安心感が出てくる。

少し違うところと言えば、温泉施設などであるようなものよりは小規模だがそれでも複数人が同時に入れるような浴場となっていた。



「さて、まずは体を洗わないとね。フーは私が洗うね。ちょっと力入れるけど大丈夫?」


「・・・飛鳥に背中を流してもらうことが嬉しいから痛みなんて平気。」



そう言われて私は影月の体を洗ってあげる。

もちろん極力痛くないように優しく洗う。

だが、影月はさっき言ったことに反して時々痛そうにしていた。



「ザバーン」



影月に付いていた泡を流す。



「さ、今度は頭を洗うからね。目を閉じて。」


「・・・頭は自分で洗う。全部飛鳥にやってもらってはいけない。」



そう言って、影月は自分で頭を洗い始めた。

全身が痛みで動かせないわけではなく、手くらいなら動かせれるようだ。

私も自分の体を洗おうかなとした時、風呂場の扉が開いた。



「ちゃんと温まってる?・・って、まだ体洗ってる途中か。」



そう言って飛鳥が入ってきた。



「符養さん、私が頭洗ってもいい?・・・え?何この痣・・・?」



飛鳥が影月の痣を見て驚く。

そういえば飛鳥は影月の怪我のこと知らないんだった。

私は飛鳥を私の隣で体を洗わせ、私も体を洗いながら私たちがこの世界に来た理由を話した。





「なるほど、だから飛鳥たちはこっちに来たんだね。」


「うん。もしかすると骸亞がまた来たときもまだフーは完治していないかもしれない。その時は面倒を見てもらっていい?」



私は影月を浴槽に入れながら答えた。

だが本人は私がこの世界に置いていくかもしれないということが気になるみたいで、



「・・私は飛鳥達と一緒に戻る。完治していなくても馬車の中にいればいいだけ。」


「フー、そうしたいのはわかるけど、私はフーがあのときみたいな危ない目にあってほしくないの。怪我をしてない時は私はフーに守られてばかりだから、怪我をしているときくらい守らせて。安全な場所でゆっくり療養して。お願い。」


「・・・でも・・・。」


「・・・怪我したままだと、私を守れないよ?」


「・・・・・・わかった。」



ようやく納得してくれたみたいだ。

私は影月の頭を撫でて一緒に浴槽に浸かった。

湯は私には適温であり、とても心地いい。



「ふわぁ~」



思わずそんな声が漏れてしまう。

その声を飛鳥に聞こえたようで、身体を洗いながら話しかけてきた。



「あ、飛鳥もやっぱりそれくらいの温度がいいんだ。それくらいが一番温かいって感じするよね。」


「うん。温かい~。」


「・・・私はもう少し熱いほうが良い。」



影月はいつもお風呂の温度は熱めにする。

前に彼女が入った後に入ったら熱くてびっくりしたくらいだ。

彼女曰く「少し肌が熱いと感じるくらいがいい」とのことだ。



「符養さん、鈴お姉ちゃんや椿ちゃんも熱いお風呂が好きだけど、あれってあんまりよくないんだよ?肌が乾燥しやすくなるし、あんまりリラックス効果が得られないみたいだよ。」


「・・・若いから大丈夫。」


「そういう問題?」


「ダメだよ。女の子なんだからちゃんとそういうことに気をつけないと。」



影月は少し不服そうにしていた。

やはりそれでも熱いお湯に入りたいんだろう。

その時、飛鳥が微笑した。



「ふふっ、なんだか椿ちゃんが妹になったみたい。私、普段はこんなこと椿ちゃんに言えないから。」



飛鳥が浴槽へ入ってくる。



「・・・妹・・・。」


「そうそう。普段は私が逆にこういうこと言われているほうだからなんか新鮮。」


「・・・私が、飛鳥の妹・・。」


「そうだ。ねえフー、一回でいいから『お姉ちゃん』って呼んでよ。」


「・・・やだ。」



そう言って影月はそっぽを向いた。

恥ずかしいから嫌がったのかそれとも単純に嫌だったからか・・・。

多分だけど、影月は私を守る「姉」のような存在でいたいから守られる「妹」のような存在に扱われるのが嫌だったのだろう。

だが私は諦めないよ。



「え~、一回だけでいいからさ。お願い。」


「・・・飛鳥は一度だけと言って、言ったら言ったで何度も同じお願いをしてくることがある。これはそのパターン。」


「なら私もフーのお願い聞くから。本当に一回だけ!」


「・・・しつこい。」



影月を不機嫌にさせてしまったようだ。

私はその一言で諦め、おとなしく引き下がった。

後で鈴に頼んで説得に協力してもらおうかな・・・。



「なんだかそっちの世界でも姉妹みたいなんだね。」



影月にフラれて浴槽内で拗ねていると、飛鳥が私だけに聞こえるくらいの声で話しかけてきた。



「こっちの世界みたいに本当の姉妹じゃないけどね。」


「私も二人と本当の姉妹じゃないよ。けど、私は二人と本当の姉妹以上に姉妹だと思ってる。飛鳥も符養さん・・・符養ちゃんのことをそう思えることない?」


「うん、あの子と一緒に暮らしていると本当に姉妹ができたみたいな感覚になることがあるよ。」


「うんうん。それだけでも十分姉妹みたいって言えるよ。もういっそのことそっちでも姉妹になっちゃえばいいんじゃない?」


「それ鈴にも言われたよ。私は大歓迎なんだけど、フーがどう思っているかわからなくって・・・。」



その時、影月が振り向いて私と飛鳥は内緒話をやめてお互い離れた。



「・・・飛鳥、そろそろ上がりたい。」



一人で立ち上がることもできない彼女はそう言って私を呼んだ。

私も温まってきたからそろそろ出ようかな。



「わかった。飛鳥、先に出るね。」


「はーい。着替えは籠の中に入れておいたから。出てすぐ手前が飛鳥ので、奥が符養ちゃんのだからね。あと、元の服は洗濯するために洗濯機に入れたからね。」


「わかった。さあフー、つかまって。」



影月につかまってもらい、彼女をおんぶして浴室を出た。

浴室を出て、よく体を拭いて影月に服を着せようとしていた時、



「・・・飛鳥、」


「ん?どうしたの?」


「・・・『お姉ちゃん』って呼ぶ件、あの時言わないでほしい。」


「え?」



聞き間違いかと思って思わず聞き返してしまった。

だが影月は私が聞き返したことに気付いていないみたいで顔を発火しそうなほど真っ赤にしてそのまま続けた。



「・・・だから、他の人がいる前で言わせようとするのはやめてほしい。」


「えーっと、フーは私を『お姉ちゃん』って呼んでもいいってこと?」



影月は無言で頷く。

だが無表情ではなく、恥ずかしいのか顔を真っ赤にしている。



「じゃあさ、今ここに他の人がいないから、一度言ってもらっていい?」


「・・・・・・お、お姉ちゃん・・・。」



影月が言ったと同時に浴室への扉が開いて、飛鳥が入ってきた。

私と影月は二人でビクッと体を震わせた。



「あれ?飛鳥まだ着替えてなかったの?」



飛鳥は影月を見て納得する。



「ああ、着替えさせてたのね。・・・けど、それでも遅くない?」


「ちょ、ちょっと話してたの。」


「その格好で?そんなんじゃ風邪をひいちゃうよ。話の続きは着替えた後でしてね。」


「はーい。」



私は飛鳥とほぼ同ペースで着替えを済ませ、影月を背負って三人で脱衣所を後にした。

その間、これといった会話はなく、静かに時が流れていた。

だが私はその間、さっき飛鳥が言っていたことを思い出していた。

「いっそのことそっちでも姉妹になっちゃえばいいんじゃない?」

・・・さっきの影月からして、多分可能性はあるかな。

ぶっちゃけて言いますと、今回で次回の分も一緒に書くつもりだったのに・・・

書いていると段々と話が長くなっていく・・・

どうしてこうなった


まあ、それはさておきキャラ紹介です

今回は前回登場時から色々変わったための説明みたいなものですが


音鴨おとがも 飛鳥あすか 14歳 中学三年生


ウラル世界の飛鳥

元孤児

異世界へ飛ばされた事件後、居候させてもらっていた鈴の提案で彼女の家に養子として引き取ってもらい鈴の妹となる

その後はクロスの飛鳥と出会ったことで自分も変わろうと努力をし、明るい性格となり口調も今までの敬語から変えた

だがまだ初対面の相手にはうまく話すことができない人見知り(内弁慶?)な性格となっている

素直でいい子なのだが引き取られた先の家では大人からは家では忌み嫌われている鈴が拾ってきた子ということであまり良い目では見られていない

しかし、鈴や椿が必死に掛け合って少しずつ改善されてきている

少しずつ改善されているが、骸亞との因縁のためか竜と神を敵視している

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