盗賊~戦闘~
襲われた際の作戦は以下の通りだ。
とりあえず、前衛メンバー4人は全員来た敵を返り討ちにして、後衛の鈴、琴葉、鳴は前衛のサポート(召喚士の琴葉と鳴は召喚で増援できるため、できるだけ馬車のそばで護衛を兼ねてもらう)。
そして私と竜は必要に応じて私は近接戦闘用の武器を使い、竜は骸亞や爪等に変身したりして前衛と後衛を切り替える。
そして、あまり大勢は倒さずに必要最低限倒して突き進んでいくことにする。
そのため、馬は全速力で盗賊の間を駆け抜けてもらうことにする。
かなりゴリ押しな戦い方になるとは思うけど双方の被害を抑えるためにはこれが最善だと考えた(多分、向こうはそんなこと考えてないけど・・・)。
「こんな感じでいいかな?」
「うん。私達の目的は殲滅じゃなくて戦闘の回避だからね。これでいいと思う。」
鈴がOKを出してくれて、他の皆も頷いてくれた。
ただ一人を除いて・・・
「なんだよ、本格的に戦えねえのかよ~。」
そう、この戦闘バカである。
爪は私たちがしようとしていることを理解していないのか、真っ向からどちらのアジトを潰すということしか考えられないみたいだ。
「戦闘を最低限に」と聞いた途端、一気にそれまでのテンションが消え去り、文句をグチグチ言うようになった。
私はそれをあまり気にせずに話を進め、鈴は爪が文句を言うたびに無言でお腹にパンチを入れていた。
だが、しびれを切らしたのか
「ああもう!あんたはフォーメーション無視して思う存分戦っていいから。いい加減黙りなさい!」
「・・・いいのか?」
「グチグチ言われるよりはましよ。その代わり、怪我しても知らないからね。」
鈴はまるで想定通りだというような口ぶりだった。
よく見ると竜もこうなることがわかっていた・・・というより始めから爪をそうさせる気だったみたいな顔をしている。
やっぱりそういうところは幼馴染ということなのかな?
「・・・爪はどうしてあんなに喜んでいるの?」
爪が狂喜乱舞しているところに符養が帰ってきた。
「おかえり、フー。爪はちょっと特殊な人だから、ね。」
「ああ・・・。」
符養も大体察しはついたようで、半ば呆れていた。
実は私も符養もこの数日に何度か爪の練習相手をしており、彼の実力を把握しており私は大剣や双剣の指導を受けたりもした。
戦闘に関しては申し分ない実力で私もその実力は評価できる。
・・・けど問題なのはその戦闘に対する異常なまでの執着心だ。
ことあるごとに戦おうぜと誘ってきたり、魔物との戦闘でも戦うことしか頭にないのか素通りできそうな位置にいる魔物にも戦いを仕掛けに行って私達を巻き込む。
。
特に後者は本人以外の全員が頭を痛めている。
「まあ、とにかく爪は自由に暴れるっていうことだけを言っておこうかな。」
「・・・わかった。」
「それで、この先については何か分かったことある?」
「・・・回避できない。」
「・・・そっか。やっぱり戦わなくちゃいけないかもしれないんだ・・・。」
私はため息をつき、申し訳なさそうに全員を見た。
皆は覚悟はできてるという返事を無言で返してくれた。
「よし、皆行こうか。」
この時全員の歩調が強くなった気がした。
「そろそろ鉢合わせてもおかしくない場所に来たはずだけど・・・。」
しかし、全くと言っていいほど人の気配がない。
「本当にこの辺りにアジトがあったの?」
符養は自信なさげに、しかしはっきりと頷く。
私は符養を信じて襲撃に身構える。
しばらく歩くと、その時はやってきた。
「おいガキども、金目の物置いてけや。」
突如草むらから現れ、私達は囲まれた。
そして、盗賊の一人がお決まりの台詞を言ったのだ。
チラッと例のバカを見ると、満面の狂気的な笑みで今にも襲い掛かろうというところを全力で幼なじみ二人に抑えられていた。
爪と二人の行動に不審に思った盗賊の気を逸らすために私は言った。
「すみません。私達見てわかるように学生でして、高価なものなんて持っていないんです。持っている武器も安物ばかりでして。」
「ならその馬車の中は何があるんだ?」
一瞬どきりとしたが、それを悟られないようすぐに言い返した。
「そ、その中はみんなの生活用品が入っているんです。なにしろ長旅なもので。」
「ほう。なら確認のために見せてもらおうか。」
再びどきり。
盗賊が「そういや馬や馬車本体も高く売れるよな」言いながら馬車の中身を確認しに馬車へ近づいていく。
私はもう隠せない、不意打ちはあんまり好きじゃないけど仕方ないと思って
「爪!」
と、爪の名前を呼んだ。
直後、爪をつかんでいた二人の腕が離れて狂犬のように中身を確認しに行った盗賊に襲い掛かる。
「なんだこいつ!う、うわああああ!」
一瞬のうちに爪の斧によってやられてしまった。
だが、その行動を見た他の盗賊が一気に私達へ攻撃を仕掛ける。
私達も応戦し、爪は言わずもがな敵の一隊へ突撃、骸亞も竜の支援を受けながら攻撃を仕掛け流流と符養は二人一組で攻撃を開始した。
私や鈴はまだ味方が本格的に交戦していないこの隙に見方から離れた敵に広範囲に
「「『大いなる雷よ、天よりの怒りをもって我れらが大地を焦土と化したまえ!」さらに範囲拡大。 「サンダーボルト』」」
大きな雷が二つ、盗賊の頭上から降ってくる。
避けようにも範囲が広く――もっとも、鈴のはそれに加えて更に広くなっているが――、術の外側付近にいた者達しか避けることができなかった。
数人に避けられたが、盗賊全体の約半数を倒すことに成功した。
しかし、他の敵は味方の近くにいてさっきみたいな大きな魔術は味方も巻き込んでしまう可能性もあるし、何よりさっきので私と鈴は警戒されてしまって長い詠唱の魔術は撃ちにくくなった。
私は魔術を撃ってすぐに銃を両手に呼び出す。
鈴は盗賊が自分に攻撃しようとしているのを全く気にせず、次の魔術の詠唱に入る。
「『火球よ、我が敵に降り注げ。さらに硬化。 メテオスウォーム(小)!』」
小さな火の球が敵に降り注ぐ。
私も鈴の攻撃に追い討ちをかけるように拡散魔力弾を撃って怯ませ、その隙に鈴は詠唱を始める。
そして私は
「『グラビティ!』」
詠唱破棄で重力魔術を銃に込めて、拡散弾として発射する。
弾は盗賊に当たり、当たった盗賊は地面に押しつけられる。
拡散弾なのですぐに効果が切れてしまうが、立ち上がったあとには
「『プレス!』」
鈴の発動した魔術で大きな岩が盗賊たちを押し潰した。
「いやぁ~、広範囲魔術で一気に蹴散らすとスカッとするねぇ。」
「私は波状攻撃がちょっと楽しかったかな。」
「おお、なかなかのS発言。」
結構善戦することができている気がする。
他の皆も苦戦することなく、どんどん倒していく。
意外にも盗賊は弱く感じた。
そして、今私達を囲む盗賊の壁が薄くなってきた。
これなら馬で無理に行けるかもしれないな。
「鳴、琴葉、いける?」
「いつでも大丈夫よ。」
鳴も小さく頷く。
「よし、じゃあ強行突破お願い。」
琴葉は馬車を走らせた。
そのまま盗賊たちに突っ込み、数人を轢いたがなんとか抜けることができた。
それを見て、他の戦闘中メンバーも馬車の後を追って盗賊たちから抜けることができた。
よし、それじゃあ私も・・・と思った瞬間
「!?」
突如体に縄のようなものが巻かれ、身動きが取れなくなりそのまま地面に倒れてしまった。
魔術か何かだと思ったが、しっかり感触がありそれが物理的なものとわかる。
「な、何が起きたの?」
急に起こったことで混乱しており、言うまで気が付かなかったが言い終わる頃には何が起こったのか、自分がどうなっているのかを理解できた。
最初のアジトのほうから盗賊の援軍が来て、私はその盗賊たちに捕まったんだ。
だが、この縄が物理的なものなら魔術で何とかできるだろうと思って私は魔術を使おうとするだが・・・
「『火炎の塔、燃え上がり周囲を焼き尽くせ フレアタワー』」
・・・何も起こらない。
「あれっ?」
(魔術が発動しない・・・?)
そう思っていると、グイと縄を引っ張られ起こされる。
そして、その引っ張った盗賊が言った。
「ザンネンだったな。その縄は特殊な縄で、縛られた者の魔力を吸い取るんだよ。だからお前は今何も出来ねえぜ。」
「・・・くっ」
楽に戦えていたから油断しすぎた・・・。
精霊を召喚しようと思ったが結局あれも魔力がいることを思い出して諦める。
皆はというとすでに包囲網を突破しており、私が捕まったのを見て助けに戻ろうとしていた。
それに対し私は叫んだ。
「みんな、先に行って!」
さっきのは不意打ちが成功したから優勢に立つことができたと思うけど、敵の態勢が整っている今は最悪全滅の可能性もあり得る。
だから私は自分を犠牲にすることを選んだ。
「私の事はいい。私は大丈夫だから、皆は先に行って。」
・・・とは言っても、そんなことを聞き入れてくれるような人たちじゃないことはわかっている。
実際、鈴と符養が
「竜、骸亞、皆を連れて先に行って。飛鳥を助けてすぐに追いつく。」
「・・・私も助ける。」
と言ってこちらに突撃してきた。
先に行けと言われた他の皆は女性陣(・・・と爪)が加勢したそうにしているのを骸亞と竜が抑えて連れて行った。
そして・・・
符養と鈴までもが捕まってしまった。
二人ともそれなりに優勢に戦うことができていたのだが、私を人質にされてなすすべがなくなり、そのまま私を縛っている縄と同じもので鈴は縛られてしまった。
符養は戦闘から見て魔力を使わなさそうだということで、普通の縄で縛られた。
「・・・先に行ってって言ったのに。どうして聞いてくれないかな。」
「・・・私が飛鳥を置いていくことなんてできるわけがない。」
「同じく。」
「・・・ばか。」
勝ち目がないことなんてわかってたのに・・・。
自分たちまで犠牲になること無いのに。
でも・・・
「わざと捕まったのなら何か方法があるんだよね?」
「・・・なんだろう?」
鈴が私から目をそらし、そんなことを言った。
「・・・へ?」
「いや、飛鳥っちを助けるってことしか頭になくて、まさか魔力を吸い取る縄だなんて知らなかったから。」
そうか、さっき盗賊が言っていたことは鈴達には聞こえてなかったのか。
でもこれで絶体絶命、万事休すかと思ったら符養が
「・・・けどまだ方法はある。」
と言った。
私は一瞬、符養が自身の縄を魔術で破壊して私や鈴を助けるのかと思ったんだけど、武器は盗賊にとられてしまったし、魔術は私達を縛ってる縄には魔力を吸い取られて使っても効果がない。
「どんな方法なの?」
「・・・今は言えない。」
言えない・・・?
こんな時なのに言えないってどういうことだろう?
別に今は周りに盗賊がいないから言っても聞かれないし、隠せる自信はあるんだけど。
まあ、符養がそう言ってるんだし信じて聞かないことにしようかな。
「・・・ごめんなさい。」
その事実を教えることができないのが申し訳なかったのか符養はそんなことを言った。
「ううん、別にいいよ。けど、確実な方法なんだよね?」
符養は少し自信なさそうに頷く。
「なら大丈夫。私や鈴はそれだけで十分だよ。」
「・・・飛鳥、鈴、ありがとう。」
「お礼なんていいよ。それより、いつ脱出するの?私は今すぐにでも抜け出したいんだけど。」
「・・・準備に時間がかかる。少し待って。」
「わかった。」
符養は目を閉じ、眠ったかのように静かになった。
だが、本当に眠った訳じゃなくてその証拠に小さくブツブツ何か呟いていた。
その間に盗賊が来た。
「なんだあ?もう諦めて念仏唱え始めたやつがいるのかぁ?」
ケタケタと汚い笑い声をあげる。
私と鈴は符養が何をしているのかは知らないが、彼女のしていることを悟られないように誤魔化そうとした。
「この子は臆病ですから。でも私たちは決して屈しませんよ。」
「そんな状態でよく言えるぜ。」
と、盗賊が鈴の胸を揉んだ。
「きゃっ」
「ひゃははははは」
笑いながら去っていく。
鈴は少し俯いてから顔をあげて少し涙目ながらも、とてつもない殺意を身に纏って
「殺す!絶対あいつ殺す!」




