表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロスワールド  作者: 氷冷 飛鳥
第五章 地
40/64

盗賊~発見~

「飛鳥、起きろ。」


「ん・・・」



骸亜に起こされ、体を起こす。

出発してから5日が経った。

道中何も起こらずずっと歩き続けるだけだった。

だけどやっともうすぐ地精霊の加護領域を抜け、水精霊の加護領域に入る。

精霊の加護領域とは、精霊の力が及ぶ領域のことでその領域内だとその精霊に対応した属性の魔力が比較的多く、発動時に威力が増したり、精霊が強化される等の恩恵を得られる。

しかし、その領域は二つの属性が重なっている場所が無いし、精霊を召喚して領域を重ねるということもできない。

精霊の加護領域とは言っているが、実際には土地の性質のようなものなので精霊がその力を持っているわけではない。

・・・とまあとにかく、私達はグランズがある地の領域を抜けて水精霊アクアの領域に入ろうとしているのだ。

そしてそうなりかけている日の朝、私は骸亜に次の見張りのために起こされたというわけだ。



「あ、骸亜おはよう・・・。」



寝ぼけて二度寝しようとしたところを骸亜に手刀で止められる。



「あだっ」


「寝るな。さっさと他のやつら起こして見張りに行け。」


「・・・は~い。」



手刀によって完全に目を覚ました私は骸亜の言う通りに他の二人を起こしに行く。

っと、その前に・・・



「骸亜、おやすみ。」


「・・・ああ。」



一言言っただけで骸亜は横になった。

さて、私も二人を起こしにいかないと。



「フー、起きて。私達の時間だよ。」


「・・・ん~。」



馬車内のベッドで寝ている符養は私の呼びかけに対して起きようとはしなかった。

元々朝起きるのが得意じゃない符養はいつもより早い時間に起きることになるこの旅ではより一層起きようとしなくなった。

起きればしっかりと働いてくれるのだが、それまでが大変すぎる。

そんなんでいいのか、元殺し屋。



「ほら、ちゃんと起きて。」


「んう~・・・。」



・・・駄目だ、全く起きようとしない。

外は暗いしまだ寝ていたい気持ちはわかるけど、それは問屋が卸さない。

こうなったら最終手段を使おう。

私は符養の耳元に近づき囁いた。



「起きないとフーはもうベッド使って寝るの禁止にするよ?」


「ガバッ」



・・・この手に限る。

体を起こした符養はこっちにゆっくりと顔を向けて



「・・・飛鳥、おはよう。」



こうなればもうこっちのものだ。

私は鞄から彼女の着替えを取り出して渡し



「着替えたら鳴を起こしてきて。私は着替えたら先に出てるから。」


「・・・わかった。」



符養からの返事を聞くと、私はすぐに着替えて見張りについた。

外ではすでに自分たちの時間を終えた竜と爪が眠っていた。

ただ、たき火だけが元気に燃えていた。

私はとりあえず火のそばに行って暖をとる。



「・・・今日は何しようかな~。」



夜に襲ってくる魔物対策のための見張りだったけど、そう頻繁に来るものでもないのでぶっちゃけ暇なのだ。

なので警戒は怠らないようにしながら何か暇をつぶせることをしないといけないのである。

昨日までは鳴のことをよく知らなかったので色々な話をして私や符養のことも知ってもらい、仲良くなることができたのだが、さすがにもう話のネタがなくなってきたので新しい暇つぶし方法を見つけないといけないのである。



「・・・飛鳥、連れてきたよ。」


「おはよう、飛鳥さん。」


「おはよう、鳴。それと同い年なんだからさん付けはやめてって言ってるじゃない。」


「あ、ごめんなさい飛鳥。」



前は自分も似たような状態だったのに、いざ自分がさん付けで呼ばれるのはこそばゆい。

まあ自分でも鈴や琴葉みたいにさん付けされるような人間じゃないからかもしれないけど・・・。

・・・鈴が聞いたらからかってくるんだろうな。



「・・・飛鳥、今日は何する?」


「私もそれを考えたんだけどいい案が思い付かなくて・・・。とりあえずたきぎでも集めにいってくる。二人はここで見張ってて。」



ふたりとも頷き、私は近くの森の中に入っていく。



(けどほんとに何をしようか?)



手っ取り早いのが模擬戦なんだけど、森があるせいで魔術をバンバン撃てないからあんまり意味なんだよね。

もし火や雷属性の魔術で火事なんてことになったら笑えないし・・・。

やりたいのは山々なんだけどね。

そう考えていると、奥の方で光るものが見えた。



「? 何だろう?」



少し身構え、こっそりと光の正体を確認する。

ちょっと近づくと何やら音も聞こえてきた。

これは・・・笑い声?



「それで最後のあいつ『助けてくれ~。金なら払うからびえええええん』って言って小便垂らしながら泣き出しやがった。誰もてめえなんか助けるやつなんていないのにな。」


「なんだよそれ。俺も見たかったぜ。」



耳をすませると、そんな会話が聞こえてきた。

だけどうまく見えなかったのでもう少し近づいてみる。

しかし、私は声の主の正体がわかるとすぐに気づかれないように逃げ出した。



(早くみんなに知らせないと・・・!)



盗賊だ。

見た目からして旅人という服装ではなかったことで、私はそれを確信した。

音を立てずこっそり符養たちのもとへ戻りながら空を見上げる。

空は少しだけど明るくなってきている。これなら出発しても大丈夫だろう。

とりあえず怖かった。旅をするなら必ず一回は遭遇するとは思っていたけど、実際に見ると戦おうというより恐怖心が強い。

鈴や骸亞なら違うのかもしれないけど、私は真っ向から向かっていく勇気はない。

そろそろ盗賊たちに気付かれないだろうという位置にきた私はそこから全速力で走った。



そして一分とかからず野営地に戻ることができたのである。



「・・・飛鳥、そんなに慌ててどうしたの?」


「ハア・・・、ハア・・、話は後。出発の準備をして。私はみんなを起こしてくるから。」



事情はよく呑み込めていなかったが、とりあえず危ないことだと分かった符養たちは何も言わずに頷き、馬に馬車をひかせる準備を始めた。

私はその間にこの状況下で一番頼れそうな鈴と骸亞を起こしに行った。



「鈴、骸亞起きて。緊急事態。」


「ん~?あ、飛鳥っちおはよう~。」


「・・・、なんだ?魔物か・・・?」



二人は返事をし、体を起こした。

起こすつもりはなかったが近くにいた琴葉と流流も返事はしなかったがもそもそと動いた。



「ううん、魔物じゃない。近くに盗賊・・・しかも結構な数がいたの。」



それを聞くと二人はハッと目を見開き、ガバッと立ち上がる。

琴葉も飛び起き、私に詳細を聞いてきた。



「どういうことなの飛鳥っち!?」


「え、えと、私が薪集めに行ったら偶然見つけちゃって・・・」


「相手には見つからなかったのか?」


「う、うん。できるだけこっそり動いていたから多分見つかってないよ。」



二人があまりにも切迫した感じで私に詰め寄ってきたので私は気圧されてしまった。

琴葉も二人のようまでとは言わないが、あまり余裕がなさそうな雰囲気に見える。



「とりあえず気づかれないように、尚且つ速やかに盗賊から離れるようにしよ。私たちはまだ未熟だし、今は荷物を護衛しているんだから万が一戦闘なんてことは起こらないほうがいいんだから。」


「わかったよ。今フー達が出発準備をしているはずだからそれが終わり次第、出発しよう。」



私達はすぐに(琴葉は流流を起こして事情を説明して)符養達の手伝いに向かった。

なる 召喚科 四年


琴葉の幼なじみにして親友。

恥ずかしがり屋で内気な性格の為、友達を作ることを苦手としているが、飛鳥たちとは(似た者同士だからか?)すんなり仲良くなった。

隠された力?が秘められている。

ちなみに鈴に昔の飛鳥と似ていると言われているが、断じてそんなことはない



爪 戦士科 四年


バカ。

戦闘バカ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ