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クロスワールド  作者: 氷冷 飛鳥
第五章 地
39/64

飛鳥隊

「あ~、一段落着いたからかさっきまで忘れてた眠気が襲ってきた~。」



出発して数百メートルのところ、ちょうど町の門を通って外に出たくらいの時に睡魔が襲ってきたのだ。



「・・・飛鳥、大丈夫?」


「私のせいだからこんなこと言える立場じゃないかもしれないけど、飛鳥っち、あんまり無理はしないでよ?今からでも飛鳥っちだけでも寝たほうがいいんじゃない?」


「それはみんなに悪いよ。リーダーなのにいきなり私だけ休むって・・・。」


「そんなことないよ。それにそのまま起きてフラフラされている方がみんなに迷惑かかると思うな~。」


「う゛・・・」



全く言い返せない。

だからというわけではないが、私はお言葉に甘えて中で休ませてもらうことにした。ー

私が寝るために馬車内に行こうとすると、符養がついてきた。



「フー、どうしたの?」


「・・・飛鳥が心配。」


「だからついてきてくれるの?」



頷いた。

私は無言で了承して、馬車のなかに入る。

そしてすぐにベッドの上に乗った。



「やっぱり結構固いな。・・・って、フーはいつまで私についてるつもりなの?」


「・・・飛鳥が寝るまで。」



どうやら符養が監視しないと無理して起きていようとすると思われているみたいだ。



「はあ・・・、わかったからフーも私が寝たらすぐに馬車の護衛に戻ってね。」


「・・・(コクッ)」



符養がうなずいたのを確認すると、私はすぐに布団の中に潜り込んだ。

ベッドで横になるとさっきまで残っていた僅かな気力までもなくなり、すぐに眠りに落ちていった・・・。






仮眠程度のつもりがぐっすり眠ってしまった・・・。

内容は覚えていないけど何か変な夢を見た気がする・・・。

夢の内容を思い出そうとしていると馬車の外が目に入り、その光景が夕日で真っ赤に染まっていることに気付く。



「嘘!?私夕方まで寝てたの?」



私は慌てて外に出る。



「お、飛鳥起きたのね。」



外に出るとすぐに琴葉が出迎えてくれた。



「あ、琴葉。私どのくらい寝てたの?」


「ざっと、9時間くらいかな?馬車に揺られながらもぐっすり寝ていたなんてそんあに疲れていたんだね。」


「私もそんなに寝るつもりじゃなかったのに・・・。ってそうだ、今どのあたりを歩いてる?」


「やっと鉱山を通り過ぎたところだよ。ほら、私たちが初めて会ったときに一緒に行ったところ。」



私はう「うん、わかってるよ。」と言った。

やっぱり結構な時間歩いてもそこまで長い距離にならないないのか。道は長いな~。

と、琴葉と言葉を交わしていると、鈴が駆け寄ってきた。



「おお、眠り姫のお目覚めだねぇ。」


「おはよう・・・でいいのかな?あと眠り姫って何?」


「百年間眠り続けた少女の物語で・・・」


「それは知ってる。なんで私がそれなのかって話。」


「だって、大きく揺れてたり私たちがイタズラしてもまったく動じずに眠っていたからね。」


「私そんなになってもどうして気付かなかったん・・・ちょっと待って、イタズラって言った?」


「あ、そうだ。飛鳥っちが寝てる間にちょっと決めたことがあるから教えておくね。」



私に目を合わせずに話を逸らした。

琴葉は苦笑いを浮かべ、私は呆れながら何かされていないか琴葉にも手伝ってもらって確認しながら話を聞いた。

ちなみにイタズラには琴葉も参加したようだ。



「飛鳥っちが休憩したときに爪が疑問に思ったらしいんだけど、休憩をみんなで一気にとると馬車を護衛する人がいなくなるし、誰がベッドで寝るかで喧嘩になるかもしれないじゃない?だから3班に分けて交代で休憩をとれるようにしようってことにしたんだよ。」


「3班?誰がどの班なの?」


「飛鳥っちはフーと鳴が一緒だよ。私は琴葉とルルーと一緒。あと一つは男子陣ね。」


「3班に別れて一班が休憩、他の班の一人が馬に乗って、他は馬車の護衛。夜は危ないから動かさないっていうことになったわ。」



確かに夜は暗いため危険すぎる。それに下手に動くと魔物に狙われやすくなる。

けど、その事より鈴が私と同じ班じゃないということに驚いた。

いつもなら少しゴネてでも同じ班になろうとするのに・・・。

それに流流が符養と一緒じゃないというのにも驚いた。

もしかして女子陣でくじ引きして決めたのかな?



「この編成ってどう決めたの?」


「男子はちょうど3人だったからそのまま組ませて、馬を扱える琴葉と鳴は別じゃないといけないから離して、あとの4人でくじ引きをしたよ。」



やっぱりくじ引きだったんだ・・・。

けどやるなら男子陣も入れてやってほしかったな・・・。

別に骸亜と同じ班になりたかったという訳じゃないけど、女尊男卑みたいだから私はあんまり好きな分け方じゃないな。

しかし私は空気が悪くなりそうであまり言う気になれずに別の話題に話を逸らした。



「もう町からは遠いし魔物とかは出てこなかった?」


「出てきたよ~。損害もなく楽チンに倒せたけど。」


「出てきたの!?なら私も起こしてよ。みんなが戦ってるのにおちおち寝ていられないよ。」


「別に大した敵じゃなかったんだから構わないよ。それに私は飛鳥っちに元気になってもらいたかったし。」


「ああ・・・うん、ありがとうね。」



鈴のちょっとばつの悪そうな顔を見てそういえば鈴が私の安眠を妨害したから私がさっきまで寝ることになったんだった。

そう思うと鈴も私のことを心配してやってくれたことなんだなと思って、鈴の顔を立てておこうかなと思った。



「おい鈴、暗くなる前に夜営の準備をした方がいいんじゃねえか?・・・って飛鳥お前起きてたのか。」



鈴に馬を止める提案をしに竜が来た。

そういえばここで話してるだけで他の人に起きたこと教えてなかったな。

・・・ていうかもう陽が山に隠れてる。そろそろ野営の準備しないと暗くなっちゃう。



「竜、おはよう。ごめん、鈴たちと雑談しててこんな時間だとは思ってなかった。私たちでたきぎを集めてくるから竜は馬車を適当なところに止めて残った人たちで色々ほかの準備も始めて。」



挨拶してすぐに指示を出されて竜は少し怯んだ。



「お、おう、わかった。けど、別行動をとって『森の中』に入って大丈夫か?」


「平気だよ。魔物ならどうにかなるよ。」


「いや、そういう意味じゃ・・・まあいいか。鈴もいることだしな。」



竜は一体何を言いたかったんだろう?

この辺りに強い魔物でもいるのかな?

とりあえず竜が言ったことは覚えておくことにして、私は鈴と琴葉と一緒に薪を取りにいくことにした。



「飛鳥っち、あんまり森の奥に入らないようにね。」


「鈴も魔物を気にしてるの?そんなにここの魔物って強いの?」


「いやいや、そうじゃなくてここが森ということ、私たちが森に関しての知識がほとんどない素人だっていうことを忘れてない?」


「あ・・・ 。」


「・・・飛鳥っち、遠足じゃないんだよ?一大事になるかもしれない可能性がいつも以上に高いんだから。最悪、命の危険になるかもしれないんだよ?」


「・・・ごめんなさい。」



浮れていたのは本当だ。

だからまだ街の周辺域を歩いている感覚で森で別行動をとって迷ってはぐれるかもしれないということを完全に失念していた。

ちゃんと私が反省している様子を見た鈴は



「別に私は失望したとか思ってないけど他の皆の前では絶対言わないでね。初対面同然で飛鳥っちをどういう人か知らない人もいるんだから。初日からこんなだと飛鳥っちにリーダーを任せられないよ。」


「・・・うん、気を付ける。」


「まあ、飛鳥は魔物と戦ってないからまだ実感がないっていうのも仕方ないけどね。」


「そうだね。あれだけ苦戦したから気が引き締まっちゃっただけかもしれないけどね。・・・・っ!?」


「? 苦戦?どういうこと?余裕で倒せたんじゃなかったの?」


「あ・・・いや、その・・・。」



必死で隠そうとするが動揺が隠し切れない鈴と琴葉。

多分さっきは私に無理をさせたくなかったからと、そう言うと私が本気で怒ってくると思ったからだろう。



「・・・はあ。お互い様ってわけね。」



私も安易な行動をした責任があって怒る権利がないわけだし、今更言ってもしょうがないという思いからため息が出た。

二人は私が怒ってくると思っていたのか意外な行動に驚いていた。



「まあ、今度は苦戦するくらいなら私も呼んでね。みんなが大変な目にあっているのに私だけ寝ていられないから。・・・私達、仲間なんだから。」



鈴と琴葉はしばらく固まったままだった。

「うん」の一言あるのかと少し待ってみてもあまり変化せず呆れてしまい、私だけ先に薪集めを始めることにした。

そして、二人が再起動したのは私が薪集めを始めて数分後くらいだった・・・。






「よし、これくらいあればしばらくは大丈夫かな。」



作業開始から三十分~一時間くらい経過し、あたりはすっかり暗くなった頃に十分な量の枝などを集め終わった。



「じゃあ、とりあえず竜達と別れたところまで戻ろうか。」


「うん。」



私たちは鈴の忠告通りに本隊と別れたところの周辺で集めていたので、元の場所に戻るにはそんなに時間はかからずに迷わず着くことができた。



「さて、暗くなってきてるし早く合流しないとね~。」


「でもさ、皆どれくらい先に行ったかわからなくない?」


「・・・飛鳥、自分で提案しておいてそれは流石に怒るわよ?」


「冗談、冗談だって。こんな時のためにとっておきがあるんだから。」


「とっておき?」


「うん。『契約者マスター飛鳥が命ずる。現れよ、符養!』」



召喚魔術で符養を召喚する。

符養は急に別の場所へ飛ばされて何が起こったのかしばらく理解できずに混乱していた。

しかし、私たちの顔を見ると私が召喚したと理解し、安心した顔を見せた。



「・・・飛鳥、おはよう。」


「ん?フー寝てたの?」



首を振る。



「・・・飛鳥が起きてから話してなかったから。」


「ああ、ごめんね。ちょっと起きてからの状況整理でいっぱいで話す時間がなかったの。」


「・・・飛鳥が元気になって何より。それで、どうして呼び出したの?」


「竜達と別れた後、ここらへんで薪を拾っていたから皆がどこに行ったのかわからなくて・・・。フー、案内してくれる?」


「・・・わかった。」



符養が歩き出し、私たちはそれについていく。

歩き始めたところで鈴が符養に聞いた。



「他の皆がいるところって、どのくらい離れた場所なの?」


「・・・割と近い。飛鳥達と別れてから十分くらいで馬車を止めた。この森を抜けた先の川あたり。」





符養の言ったとおり、十分そこらで皆と合流した。

そこには木の実などを集めてきた鳴と流流、川で魚を釣っている男性陣がいた。

私は竜に報告する。



「ただいま。たきぎ見つけてきたよ。」


「お、ご苦労さん。こっちも結構な量の魚が獲れたぜ。」



見るとそこには釣られた大量の魚がいた。

私たちで食べきれるのかなぁ・・・。

と、その時私のお腹が鳴った。

・・・ああ、そういえばずっと寝てたから私お昼を食べていないんだった。

今食べたいけどすぐにごはんになると思うからそれまで我慢しなきゃ。



「野営の準備は済ませてあるから、そろそろこの魚を焼き始めていてくれないか?」


「うん、わかった。」



竜に言われた通り集めた枝と木の葉を置いた。

そこに火の魔術を使って点火させようと思うんだけど、そういったことをしたことがないからもし火力の調整を間違ったらと思うと少し怖い。

鈴や符養に頼もうかを思ったけど、二人とも別の作業をしているようだった。



「うーん、失敗してもまだ予備はあるんだし大丈夫かな。『フレア』!」



詠唱破棄し、できるだけ魔力を抑えてみる。

すると、木の葉に火が点き、枝にも燃え広がった。



「やった、成功した。」



私は枝をべて、棒に魚を刺して火に近づけて焼く。

それをとりあえず人数分・・・にしたかったけど、お腹が空いていたから私だけ一本多くさせてもらった。




そして食後は班で交代しながら警戒体制を整えておくことにした。

こうして、1日目が終了した。

しかし、まだ1日。

これから3ヶ月という長い旅の始まりに過ぎず、私達はまだこの道中に起こる様々な出来事をまだ知らない。

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