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クロスワールド  作者: 氷冷 飛鳥
第五章 地
38/64

出発

出発前日


「飛鳥っちまたね~!」



鈴が元気よく手を振ってサヨナラの合図をする。

私もそれに返し、私達はそれぞれの家へと向かった。

今日は符養は帰ってこない。

今日は流流の家に泊まり、明日の朝彼女と一緒に来る予定のようだ。

集合場所を決めた時の符養と流流の会話は流流が私の家の場所を知らないということだったため、符養に一緒に行ってくれないかとお願いしたものだったらしい。



「久しぶりの独りか・・・。」



寂しい訳ではないけど、そうつぶやいてみる。

明日から3ヶ月はずっと一緒に行動するし、彼女と知り合ってから毎日同じ屋根の下で寝ていたからたった1日彼女がいないだけ、と思えば符養が心配ではあったけど1人が嫌だとはならない。

私はそれを自分に再度言い聞かせてトボトボ歩いていた歩調をいつものペースに上げた。






私が家に帰って30分位時間が過ぎたとき、家の戸を叩く音が聞こえた。



「はーい」



帰ってきたばかりで自分の部屋で休憩していた私は急いで階段を降りて玄関の戸を開けた。



「やっほー。」



そこにいたのはつい1時間前に自らの家に向かった私の友人だった。

そしてその友人は手に何か大きな荷物を持っていた。



「鈴どうしたの?それにその荷物・・・」


「泊まりにきちゃった。」



と、まるで愛人みたいな言い方をした。

まあ鈴は愛人ではないのだけど、私は彼女が泊まりに来た理由を何となく理解していた。



「はぁ・・・お節介焼き。」



どうせ私が今日符養が帰らないことを話したのを聞いて寂しがっていると思ったのだろう。

私は別に寂しくないのに。



「でもまあ、心配してくれてありがとね。」


「お?珍しい飛鳥っちが見れるとは、来たかいがあったかな。」



・・・お礼を言って損した気分になった。

この人、真面目なところでも茶化してくることがあるからそこをなおしてくれれば完璧なんだけどなあ。



「飛鳥っち、そんな顔をしないでよ。」


「どの口が言うのよ・・・。まあいいや、いつものことだし。いいよ入って。」



何かを言いたげににしながらも「お邪魔しまーす」と言って中に入ってきた。



「そうだ、泊めさせてもらうんだし私がご飯作るよ。」


「別にいいよ。私の家にある料理道具の場所わからないでしょ?私がやるから鈴はいつもの部屋に荷物を置いてくたら?」



鈴はそれを了承して階段を上がって行った。

いつもの部屋というのは客室のことで、鈴が来たときはいつもそこに泊まってもらっている。

私は玄関の戸を閉じて早速台所へ向かった。

えっと、今日の献立は・・・





「荷物置いてきたよ~。何か手伝うことない?」



荷物を置いた鈴がすぐに戻ってきた。

私がやるって言ってるのに話を聞かないんだから・・・。



「いいの?私やるよ?」


「私だってただ泊めてもらうっていうのが嫌なの。毎回言ってるのに飛鳥っちは聞かずに休んでてって言うんだもん。」


「なら食材を切ってもらおうかな。私はもう切ったやつを調理してるから。」


「わかった。」





役割分担をしていつもより早く料理が出来上がった。

それらをテーブルに並べていたとき



「そういえばいつも飛鳥っちが料理する姿を見るけどフーは料理しないの?」


「うーん・・・、私の手伝いはしてるけど一人で料理させたことはないからなぁ。多分簡単なものならレシピなしで作れるレベルじゃないかな?」


「おお、その時は私も立ち会いたいな~。」



私も符養の料理スキルをみてみたいから今回の旅で一度一人で作らせてみようかな。

そんなことを話していると、もう食べれる状態が出来ていた。

私と鈴は一緒に座り、手をあわせて一緒に言った。



「いただきます。」






次の日、昨日の疲れが取れない状態で朝を迎えた私はその顔を符養達に見せる事となった。

みんな心配してくれたが特に符養が心配してくれていた。



「・・・飛鳥大丈夫?」



「自分がいなかったから私が心配して眠れなかった」みたいな顔をしている。



「うん、大丈夫だよ。フーが悪い事じゃないからそんな顔をしないで。」


「・・・ならどうして?」


「昨日鈴がうちに泊まったんだけど、その時の鈴が凄い面倒くさくて・・・。でも、鈴は私が寂しがっていると思ってやってくれたことだから怒らないであげてね。」



符養が鈴の方を向いたのですぐにフォローを入れた。

それをわかってくれたみたいで



「・・・わかった。でも、無理はしないでね。」


「うん。わかってる。今日は休憩を多めにもらうから。」



私はみんなにも「大丈夫だよ」と言って出発してもらった。

正直なところ、すごい眠い。気を抜いたらそのまま意識が飛んでいきそうだ。

何があったか簡単に話すと、鈴が一緒に寝ると言い出し私を抱き枕のようにして寝たのである。

私は鈴が抱きついてきているのが気になって眠れず、今に至るという訳である。



「一先ず、私のことは置いておくとしてみんな揃ったよね?」



私は全員がいることを確認する。



「じゃあ行こうか。」



私はおじさんの店に歩き始めた。




家から歩いて15分程度でおじさんの店に着いた。

店の前には馬車があり、そこの荷台におじさんが武器を積めていた。



「よお、嬢ちゃん達。今ちょうど積み終わったぜ。」


「おはようございます、おじさん。運搬にはこの馬車を使うんですね?」



正直、自分たちで運ぶのだと思っていたのは内緒だ。



「ああ。それで誰か馬に乗れるやつはいないか?」


「私と鳴が乗れますよ。」



琴葉が勢いよく手を挙げた。

おじさんが2人をじっくりと見つめた。

別にいやらしい目で見ているわけではなくて、装備を見て職業を確認しているのだろう。



「召喚士か。なら生き物の扱いには慣れているだろうな。世話、頼めるか?」



琴葉と鳴は「もちろんです」と頷いてた。

だがおじさんは2人だけでは足りないと思ったらしく



「おい、竜。お前も乗れたよな?」


「ああ。昔は爺さんあんたの手伝いで乗せられていたからな。」


「なら大丈夫だな。」



面倒くさそうにしている竜をよそにおじさんは馬の背中を撫でながら私に



「こいつらはウィンに着いたら荷物と一緒に向こうに置いてきてくれ。」


「どうしてですか?」


「こいつらは元々向こうが今回のために送ってきたものだ。借りたものを返すのは普通だろ?」



なるほど、そういうことか。

納得した私は鈴と一緒に馬車の中を見に行く。



「お~、中は結構広いね。」


「うん。入ってる武器もすごい数だね。・・・あれなんだろう?ベッド?」


「ああ、忘れてた。それは仮眠用だ。長旅になるからな、交代交代で効率的に移動した方がいいと思ってな。因みに、普通に寝る用もあるからな。」



おじさんが取り出したのは普通の布団だった。

見るからに仮眠用よりも睡眠環境が悪そうだった。

普通、逆じゃないかな?


「けどすごい数の武器ですね。質も良さそうなものばかりですし、私も一つ欲しくなりますね。」


「文無しが何言っとる・・・。因みに、それらは全部一つ一つがお前さんが今回買った武器の値段の合計よりも高価なものだからな。紛失したり、緊急時以外に使ったらちゃんと請求させてもらうからな。」



絶対に死守しようと心から誓った。

けどそれよりも、私の武器の値段より高いのか。なんだか粗悪品をもらった気分になる。

いや、実際にはオーダーメイドで精霊石付きだから実際の価値は相当あって、おじさんが言っているのはサービスで安くしてくれた買値のことなんだろうけど・・・。というかそうであってほしい。



「寝相悪かったら武器を傷付けそうだね~。」


「うん。高価なものって考えるとちょっと怖いね。」


「あの辺りにスペース空いてるから後で場所変えておくよ。」




私は鈴に任せたと言って、そろそろ出発しようと準備を始める。

そして、それぞれ馬を触ったり、しゃべっている人たちに向かって言った。



「さて、いつまでもここで無駄話していても仕方ないから出発の準備をしよ。」



各々から「・・・わかった。」や「オッケー」という声が聞こえてきてみんな準備を始める。

馬車の中に荷物を入れたり、武器の点検・確認をして着々と準備を進める。



「最初はだれが馬を操る?」



と、琴葉と鳴、竜の三人で話し合っていた。

公平にじゃんけんで決めるのかなと思っていたら



「俺がやるよ。俺が一番こういうのに慣れていると思うからさ。」



と、竜が率先して立候補していた。

一番面倒くさがりそうな人物だったので意外だった。

だがそう驚いてもいられないから注意してほしいことを伝えることにする。



「三人とも、ちょっといい?」


「? 何?」


「荷物で馬車がいっぱいで数人くらいしか中に乗れなくて、基本的に休憩する人以外は歩くことにするからそれにあったスピードで馬を歩かせてくれない?」


「ああ、わかった。けど歩く方もできるだけ早く歩いてくれよ。」


「うん。わかってる。」



と、私が了解すると竜が早速馬車の前に乗って、手綱を握った。

私が確認すると、他の人たちも出発の準備ができていたみたいなので言った。



「よし、じゃあ安全に、誰も怪我をしないようにしよう。出発!」


長編第一弾の第一話という感じです。

この更新速度で長編とか終わるのがいつになることやら・・・

長い目で見てくれるとうれしいです。

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