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クロスワールド  作者: 氷冷 飛鳥
第五章 序
34/64

今日の自分は今日の敵

今回、キャラの視点変更があります。ご了承ください

「・・・どういうこと?」


「見たままだよ。私はあなた自身。違うところといったら私は竜さんの記憶と経験持っているってこと。」



うまくわからない。

私は鈴の方向を向いた。

鈴は私が顔を向けたことに気づき、



「竜は相手をコピーする能力を持ってるの。技だけじゃなくて今のように相手の姿形、性格、癖、記憶、経験、その他色々コピーするんだよ。つまり本人そのものになるってこと。だからこっちの飛鳥っち・・・竜の言っていることは間違ってないんだよ。」


「「なるほど。」」



納得した私の声が私の声と被った。

一瞬自分の声が二重に聞こえたことに混乱したがすぐにもう1人の「私」も言ったことに気付く。

・・・って



「何で竜さんも一緒に納得しちゃってるんですか?」


「い、いや、知識はあるんだけど私もちゃんと納得できてなくて、今ので大体納得できたというか・・・。」



この時私は確かに私っぽいと思った。

だが私っぽいと思っただけであり、私自身とはまだ思えてはいない、というか認めたくない。

中身は男である竜さんだから。



「とにかく、今は戦いの最中ですので続きを始めますよ。」



私は早速手に持っていた双剣を双銃に替え、魔力弾を撃つ。

竜さんは弓を持っている。

今から打ち消すのは時間がかかるし、そもそも竜さんは相手が攻撃してくる場合、一度技をちゃんと最後まで見てからコピーして反撃してくるのでこの隙に追撃すればよい。



「追撃すればコピーする暇がないからそのまま封殺できる・・・そう考えているよね?」



私と同じ声が私の考えていることを発した。

だけど私は口にしていない。

私と同じ姿をしている竜さんが言ったのだ。

竜さんは弓と矢を地面に置き、私と同じ方法で剣を出現させる。

そしてその剣で魔力弾を打ち落とした。



「竜さんのままだったらそれでいいかもしれないけど今の私には意味ないよ。」


「・・・。」



私は何も言えなかった。

自分の考えていることを読まれていたからというわけではない。

竜さんが私の剣を召喚していたからだ。



「・・・どうして私の剣を持っているの?」


「言わなくても分かってるでしょ?さっきも言ったとおり、私はあなた自身なの。試しにサンやルナを喚びだしてみたほうがいい?」


「ううん、別にいいよ。その言葉で信じたよ。」



正直、自分の物を例え自分自身だろうと私以外の人に勝手に使われるのはあまり気分が良いことではない。

私は銃を構えて私自身への対策を考える。



「しかしまあ、目の前に私がいると昔の私と対峙させられてるように思うよ。」



私のつぶやきにもう1人の私と鈴が反応する。



「それは私も思うよ。・・・って言っても私自身だしね。」


「昔の飛鳥っち・・・。ほう・・・。」



武器を構え合いながら盛り上がる自分同士をよそに鈴は何かを思いついているみたいだった。

そして、



「よし飛鳥っち、過去との決別だ。竜を倒してウジウジしてた自分とおさらばだよ!」


「・・・・・・?」



いきなり言ってくるし、何を言っているのかわけがわからなかった。



「竜、魔術科に来る前の飛鳥っちになってよ。」


「・・・えっと、鈴?竜さんとして長年付き合ってきたけどさっぱり意味がわからないよ?」


「良い機会じゃないかってことだよ。飛鳥っちが昔の飛鳥っちを倒して昔の自分にけりをつけるの。」


「ちょっと待ってよ。私は鈴に性格をなおすように言われて変えたのに、今になって戻せなんておかしくない?」



鈴の要求に私が反論し、もう1人の私が同意見のようで頷いていた。



「そんなに怒らないでよ飛鳥っち。別に飛鳥っちがやることじゃないでしょ?」


「私自身じゃなくたって私に言ってるようなものでしょ。・・・そりゃあ中身は竜さんだけど、でも今は私と・・・」


「もう、わかったわよ。」



もう一人の私があきらめたように言った。

その時私は驚いてもう一人の私のほうを向いた。



「鈴は竜さん・・・私が鈴に変身すると毎回同じようなこと言うんだから・・・。」


「そりゃ、竜が私の姿をしているなんて嫌だもん。それに、いくら私に似せようとしても竜は竜なんだから。私や飛鳥っち扱いはできないよ。」



確かにと思ったが、今私の全てをコピーしているもう1人の私は親友に自分を否定されて辛いだろう。

私ならそうなる。



「だってさ、私はまだあの事を許してないからね?」


「・・・うん、わかってる。」



ん?竜さん、前に何か鈴を怒らせるようなことをしたのかな?

鈴に言われたもう一人の私はすごい気まずそうにしているが、どことなく顔を赤めているように見えた。

訓練所での竜さんと鈴のような二人だけの秘密を知って気まずいのかな?

それにしても、こんなにも私に威圧的な鈴を見るのは初めてだ。

しかも第三者視点。

いつもの鈴は私に怒ってもそこまで威圧的じゃない(それでも私はその鈴が怖かった)ことを思うと本当に鈴はあの私を「飛鳥」とは認識していないんだ。



「それでよろしい。」



鈴の目がいじめっ子の目になってきている。

しかし、もう一人の私・・・いや、あれは竜さんだな、・・・竜さんはその鈴に怯えず、むしろその鈴にときめいているように見える。

この竜さんの反応を見てると鈴と竜さんが訓練所で話していた内容がわかってきたかもしれない。

だっていくら親しい仲だからって私はあんなふうに鈴に恋する目はしないはずだ。



「それで鈴・・さん。」



もう一人の私が一気に鈴に他人行儀になった。



「私・・・ぼくは今からどう戦えばいいんですか?この時だと剣と下級魔術くらいしか使えませんでしたよ?」


「あ~、そうだね。竜は片手剣と魔術のみ。飛鳥っちは片手剣以外の武器と魔術ってのはどう?」



自分のメイン武器を奪われて不利になっていることを鈴に言おうかと思ったけど止めた。

なんか自分を有利にしているように思われたくない。



「わかった。私の剣での癖を客観的に見れる良い機会だし、他の武器の試運転できるからね。悪い条件じゃないよ。」


「おー、やる気満々だね。」


「こんなチャンス滅多にないからね。」



私が銃を構えると同時にもう一人の私も剣を構えた。



「よろしくお願いね、過去の私。」


「過去・・ね。ぼくにとっては今もあんまり変わってないと思えるよ?」


「じゃあ、成長途中ということにしといてよ。」



まあ私も人には魔術科に入ってからもあんまり根本的なところは変わっていないと思っていたからね。

だけどあの私は少なくとも今ここにいる私とは違う、ゆえに過去の私扱いをした。



「・・りゅ~。」



鈴が竜さんを呼んだ。

彼女は恐る恐る鈴の方を向いた。

だけど私が先にフォローを入れる。



「鈴、『昔の飛鳥は敬語で話す』って言いたいんでしょ?それは大きな誤解なの。」



鈴が首を傾げ、「何言ってるの?」と顔で言っていた。



「鈴は知らないかもしれないけど、私独りでいるときとか家族と話すときは普通に喋ってたの。だからこれで問題ないんだよ。」


「・・・ごめん、飛鳥っち。」



ちょっと今日の鈴は暴走しすぎかなと思いつつもう一人の私に向かって銃を構えた。




――符養side――


「では小娘、儂も帰らせてもらうぞ?」



飛鳥の家の私の部屋。

グランと私の話が終わり、グランが帰るところだった。


「・・・帰るのは好きにしていいけど、私のことは名前で呼んで。今の私達は対等な関係。」

「お前、意外にそういうことにこだわるんじゃな。・・・まあよい。符養、儂はこれで。」



そう言っていなくなった。



「・・・クソジジイ。」



思わず口に出てしまった。

いけない、こんなの飛鳥に聞かれたら怒られる上に嫌われる。

それだけは絶対に嫌だ・・・飛鳥は・・・。



「・・・・・・。」



私はうつむいたまま何も言わなかった。

しかし、そこに沈黙はなかった。

外では一度は止んだ飛鳥が竜と戦う音が聞こえる。



「・・・飛鳥と0?」



一度止んだということは決着がついたって事?

それに今聞こえるのはさっきまで聞こえた魔術と銃の音だけではなく、剣が当たる音が聞こえる。

竜は弓使いと聞いたし、鈴はほとんど魔術以外を使わない。

なら剣を使う人間で心当たりがあるのは・・・。

とにかく外に出てみよう。




急いで外に飛び出た私は有り得ない光景を目にした。

なんと飛鳥同士で戦っていたのだ。



「・・・どういうこと?」



わけがわからなかった。

片方の飛鳥はいつも使っている剣を使っていて、もう一方はそれ以外の今日お店で買った武器を使っている。

私は今その2人を見ている鈴を見つけ、そこへ向かった。



「・・・鈴、これはいったいどういうこと?」


「お、フーおかえりー。用事は終わったの?」


「・・・終わった。あと先に質問したのはこっち。」



この人はよく話を自分のペースに持って行こうとする・・・。

きづいたときには鈴のワンマントークになっていることもある。



「やー、ごめんごめん。この状況のことだよね?あのいつもの剣を持ってる飛鳥っち、あれ竜が変身してるんだよ。あ、竜は他人の・・・」


「・・・理解した。」


「うおう!理解早っ。」


「・・・変身する能力を持った人は裁きを下す者にいた時に何人か見た。」



けど少し妙だ。

普通ならあんなに仕草や動きがまんま本人のものになるということは相当難しいはず。

そもそもバレているなら戦闘能力ならともかくそれ以外を似せる必要はないはず。

本人自体になる・・・・・・まさか、あの・・・!?

・・・いや、まさかね・・。

でもそうなら幼なじみの鈴も・・・?



「へえ~、竜みたいな人達もいるんだ。・・・ん?どしたの?」


「・・・なんでもない。」



こんなだし、そんなわけないか。

気持ちを切り替えて私は飛鳥の闘いを見始めた。



「・・・それにしても、・・・互角。」


「まあ、飛鳥っち同士だしね。」



本物の飛鳥が銃を撃ち、それを偽物の飛鳥が軽く避けて間合いを詰めて切りかかる。

だが本物の飛鳥も銃の片方を戻し、右手に双剣の片方を逆手で出現させて剣を受ける。

そしてすぐに顔に目掛けて魔力弾を撃った。

偽物の飛鳥も読んでいたとは思うけど流石に避けられず、命中。

けど再装填の時間が短かったため充分魔力を溜めれなかったのか威力が低く、怯ませることしかできなかった。



「『原素・地水火風、始まりの4原素よ、創造されしその力、交わりて我が弾丸となれ エレメントフォー』」



本物の飛鳥が偽物から離れながら魔術を銃に装填した。

一方、偽物の飛鳥は



「『閃波十文迅』」



交差した大きな斬撃を飛ばす。

飛鳥はそれを避けることも右手に持っていた剣で防御しても意味ないと判断したのか左手の銃を戻し、盾を出現させる。

そしてそれを使って斬撃から防御した。



「・・・装備の交換が早い。」


「だね~。飛鳥っちは天才だよ。」


「・・・飛鳥は努力家。最近夜にこっそり練習してた。物を召喚するという発想とそれができるようになる才能は確かに天才。羨ましい。けどそこに至るまでの努力はすごい。」


「お?フーが嫉妬するなんて珍しいね。」


「・・・・・・」



別に私が嫉妬したっていいじゃん。

私は鈴を無視して飛鳥をみた。

飛鳥は盾の陰に隠れながら偽物の飛鳥に近づき、右手の剣で斬ろうとした。



「あれっ?」



だけど、使っている剣が双剣の一振りなので長さが足らず、空振ってしまう。

仕方なく一歩前に入り、シールドバッシュをしようとするが、



「『アクアキャノン』」



偽飛鳥の魔術の発動に気づき、すぐさま防御の体制になる。

普通じゃあんな反応速度はできない。

やっぱり相手が自分自身だからできたのかな?



「ほ~、まるで未来予知みたいだな~。」



・・・鈴はわかっていないようだった。



「・・・あれは相手が自分自身だからできたこと。自分の行動を読んで攻撃を中断した。」


「なるほど。流石は自分同士といったところだね。」



鈴と話しながら飛鳥の方を見る。

また偽飛鳥と飛鳥の距離が広がっており、飛鳥は銃に切り替えてなにやらグリップのところを見ていた。



「・・・飛鳥、何してるの?」


「多分さっきの魔術を装填した銃がどっちかわからないから埋め込まれた精霊石を見て判断してるんじゃないかな?あれ、魔力に反応して光るから。」



飛鳥が左手の銃を偽飛鳥に向けた、どうやらわかったみたい。

と思ったけど右手の銃も向けた。

そして、



「『二つが混ざりし時、それは混沌が訪れん。混沌が訪れし時、破滅が起こらん。破滅が起こりし時、消滅せん。消滅せし時、全てが無に帰す 混沌カオス』」



右手の銃に詠唱した魔術を装填した。

だが、偽飛鳥も黙って見ていたわけじゃなく、



「『混沌カオス』」



同じ魔術を発動していた。

高威力の魔術を発動された飛鳥は魔術を使おうと口を開きかけたが、すぐにやめて構えた銃を少し内側に向けて引き金を引いた。






――飛鳥side――


光と闇が交わり混沌とした魔術の塊が私に襲いかかってきた。

私は防御するための魔術を詠唱しようとするが、時間が足りないと判断してやめる。

仕方ないけどこれをぶっつけ本番でやるしかないか。

私は銃の向きを少し内側に向けて引き金を引いた。



「『エンシェントエレメンツ』」



太古の自然の原素、地・水・火・風・光・闇の混ざった魔術の弾を撃つ。

弾は大きく六色の色鮮やかな弾になっているのだが、上級魔術を組み合わせた弾なので威力はとても高いはずだ。

弾が、もう一人の私が出した魔術に当たり、その魔術を煙をかき消すかのようにいとも容易く消滅させた。

そして威力が全く衰えることもなく、もう一人の私に飛んでいく。

もう一人の私はとっさに回避行動に移るが、間に合わない。

弾は彼女に直撃し、土煙が舞った。

・・・・・・。

私は闘いを終わらせてもらうために鈴の方に顔を向けた。

と、そこに



「あれ、フー!?いつからそこにいたの?グランとの話は?」


「・・・終わった。まだ飛鳥たちが闘っているみたいだから見にきた。」



符養が気づいて貰えていなかったことを不満そうにしながら言った。



「フー、ごめんね。」


「・・・構わない。それより追撃はしなくていいの?」


「ああ、それは大丈夫だよ。もう終わった。」


「お?飛鳥っち、上手く当てた手応え感じたの?」



鈴が嬉しそうにしている。

そんなにあの変身嫌いなのかな?

だけど私は首を縦には振らなかった。



「ううん、外した。」



「えっ?」と鈴と符養の口から漏れる。



「防御魔術や回避行動ができないから下級の空間魔術を使ってよけたみたい。あと何か勘違いしてるみたいだから言うけど、私が勝ったって宣言したい訳じゃないよ。」



魔術が当たった場所の土煙の側からもう一人の私の姿が出てきた。

そのもう一人の私も私と同じ表情をしていた。

私はもう一人の私が私と同じ意見なのを確認すると言った。



「どっちも降参。決着つかないよ。」


「・・・ど、どういうこと?飛鳥が優勢だったようにみえた。」


「そうでもないよ。始まってから最後までずっとどっちも相手の数手先は読んでいたの。イレギュラーがほとんどなかったからずっとわかった展開を進めていたの。」


「何か対策はしなかったの?」


「しても知られるので意味がないと思ったんです。」



私が答える前にもう一人の私に言われた。



「・・・なら何のために闘ってたの?」


「私の新しい武器の試運転ですよ、フーちゃん。まあ結局、ナイフが使えなかったんですけどね。」



「フーちゃん」と言われて符養は困惑した顔を浮かべた。

無理もないかな、私と同じ顔した人に同じ声で敬語、そして馴れない呼ばれ方をされればそうなるかな。



「じゃあ竜、そろそろ戻ってもいいんじゃない?」


「・・・そうですね。ぼく自身が死ぬみたいで怖いですけど、これ以上はいる意味はないですからね。」



私があっちの立場なら、ああいうふうに割り切れるのかな?

私を一瞥した後、もう一人の私は鈴の方に向いて言った。



「では鈴、あとの面倒は任せますね。」


「はいはい。まったく、なんで竜を連れていかなきゃいけないのよ。普通逆でしょ。」


「ごめんなさい。」


「飛鳥っちの姿の竜が謝ることはないよ。竜自身に後で直接怒るから。」



ニコッと笑う鈴に対して、もう一人の私は青ざめて小さく「ヒッ」と言っていた。



「ま、まだ戻らなくていいですか?」


「うーん。飛鳥っちの姿はかわいいんだけどね~。竜にも色々言いたいからダメ、かな。」



もう一人の私の顔がみるみる青ざめていった。

あの二人を見ていると1ヶ月前の私を見ている気分になる。

だからどうしたということになるが、私にはあの状態の鈴は怖くて止められない。



「・・・飛鳥、なんで飛鳥まで青くなってるの?」


「ちょ、ちょっと・・前のことを思い出してたの。」



符養が首を傾げるが、知らない方がいい。

多分知ると鈴とまともに接することができなくなる。



「・・・わかりました。」



小さな声で諦めたように言った。

そしてすぐにもう一人の私が光に包まれ、また眩しさが私や鈴達の視界を奪った。

うっすらと見える女性の人影が入れ替わるように別人の形の影に変化した。

そこからしばらくして光が消え、光っていた中心から竜さんが現れた。

竜さんはゆっくり、地面に倒れて眠ろうとしているかのようにうつ伏せに倒れる。



「よっと。」



その竜さんを鈴が駆け寄り受け止めた。

竜さんは気絶しており、全ての体重を鈴に預けていた。


「まったく・・、人に迷惑がかかるってことわからないかな~?あ~、ごめん飛鳥っち、この馬鹿家に送るから今日は帰るね。」


「え・・?私の家で寝かせるよ?」



私がこういうと、鈴は何かを言い掛けたが、



「・・・・・・飛鳥、察してあげて。」



符養が先に私に嘆息を交えながらそう言った。



「あ、うん・・?わかった。」



私はそれでもどういうことか理解できなかったが、とりあえず引き止めないほうが良いということはわかったのでそのまま鈴達を見送ることにした。



「もうフー、そんなんじゃないよ。ただこいつへのお仕置きを飛鳥っち達に見せたくないだけだよ。」



「ふふふ」と珍しく符養が笑っていたが、何で笑っているかわからない私はそのまま鈴を見送った。

鈴は頬を膨らませていた。




「・・・飛鳥、このあとどうする?」


「まずお昼食べてそのあとにまた武器を使いこなす練習をしようかなって思ってるんだけど、それでいい?」


「・・・構わない。私もそれに付き合う。」



「じゃあまずはご飯を食べよっか」と私が符養に言って家の中に入る。

そして、昼食時になぜかいきなり符養から恋愛について話題を振られたのはまた別の話である。






「あ~重い。自分で歩けこのバカ竜。」



飛鳥の家からの帰り道、鈴は眠っている竜を運んでいるところだった。



「・・・ほんとはもう起きているんでしょ?」


「・・・・・・ああ。」



竜が返事したや否や、鈴はきれいな一本背負いで竜を投げた。

竜は仰向けに倒れて、痛みが収まってから鈴が言った。



「ちょっと変だとは思ったんだよね。あんたの体が一瞬ピクって動いたからまさかとは思ったんだけど、そのまさかだったとはねぇ・・・。」


「ちょっと待てって。俺だって動ければ動いてたよ。けどまだだるかったからしばらくそのままでいたかったんだよ。」


「それなら起きた時にすぐ言いなさいよ。・・ったく、なんで私はこいつなんかに・・・。」


「何か言ったか?」


「別に。そういえばあいつは元気なの?」



鈴があからさまに話題を変えたがっていたことに気づいた竜はそれに従ってあげることにした。



そうのことか?あいつ、お前に会いたがっていたぜ。お前、新学期になってからずっと飛鳥に執心だからな。また3人・・・いや、飛鳥やあのフーって子も一緒になって集まろうぜ。」



また3人で、か・・・。

鈴は昔のことを想起した。

だがふとその時、とあることを思い出した。



「ねえ竜、うってつけのイベントがあるんだけど。」


「ん?何だ?」


「飛鳥がさ、おじさんの店のバイトでウィンまで行くって言っているんだけど、ついて行かない?私としては竜がいるのはもちろん、男手がほしいっていうのもあるし。」


「おお、そりゃ面白そうだな。多分爪も喜んで参加すると思うぜ。」


「じゃあ決まりだね。・・・それで話は変わるけどさ、」


「今度は何だよ。」



いつもの鈴からは想像できないくらい頬を赤らめ、もじもじしていた。

鈴は口を開けて話そうとするが、すぐにやめ、また話そうとするがやめるということを繰り返す。



「何だよ、早く言えよ。気になるだろ。」


「・・・そ、その、また甘えてもいいかな・・・って・・。」


「なんだ、そんなことか。別にいいぞ。いつものことじゃねえか。」


「そっか、なら・・・りゅーぅ!ふふふ、だーいすき。」



今までのイメージとはかけ離れた鈴の姿がここにあった。

鈴は竜に抱きついた。



「竜、おんぶして。」


「おい、ここでかよ。」


「いいじゃん。お~ん~ぶ~。」


「はいはい。まったく、これがさっきまで凛としていた奴かよ。」



完全に子供だなと竜は思う。

仕方なく竜は鈴を背負ってあげることにした。



「竜の背中あったか~い。」


「おい、あんまり抱き付くなよ。恥ずかしいだろうが。」


「だって私、竜が好きなんだも~ん。」


「だったらなんでさっきは恥ずかしがってたんだよ・・・。」



やれやれ・・・、そう思いながらも悪い気はしない竜であった。

そして二人はすっかり立場が逆転し、竜が鈴を送っていくということになっていた。










「あれ?そういえば作者のあとがきは?」


「ん?なんのこと?」


「・・・いや、いい。」

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