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クロスワールド  作者: 氷冷 飛鳥
第五章 序
32/64

魔銃

すごい期間空けてしまった・・・

テスト後の最初の休日、変な夢を見た。

私を待つ少女、だけど私はもうこの世にはいなくて、彼女は一人ぼっち。

だけど私のために憎むべき敵と戦っている。


「けどその名前を呟いていたけど誰の名前だっけ?」


しばらく思い出そうとしたが思い出せなかったため、私は諦めて机に向かって引き出しから白紙の紙を取り出して今日の夢を書けるだけメモした。

不思議な夢だったから何かあると思って書いたけど、書き終わってからいらないかなとも思えてきた。

まあせっかく書いたのだから残しておこうと引き出しにしまう。


「さて、符養を起こしに行こうかな。」

私の家に来た当初は符養は私と一緒に寝ていたのだが、ある日突然別の部屋で寝ると言い出したのだ。

私が迷惑しているのか聞いたけど違うと言っただけで理由は言わなかった。


「フー、朝だよ。」


きちんとノックしてから入った。

符養は私に気づかずにスヤスヤベッドで寝ている。


「…元とはいえ暗殺者なんだからこうも簡単に人の侵入を許すのって大丈夫なのかな?」


心配と安堵の感情を持ちなから私は符養を起こそうとする。


「………で。」

「?」


それが符養の寝言だと理解するのに少し時間がかかった。


「かげ…を……おいてかな……………?」


寝言の途中で起きてしまった。

彼女は寝ぼけ眼で私を見る。


「おはよう。」

「……あすか?……おはよ…う…?」


符養は今私が符養の部屋にいること、さっきの寝言で自分が何を言ったのか理解したようだった。


「…………!」

「……フー?」


符養は顔を真っ赤にさせ、涙目…いや、もう涙が目から零れていた。

私は符養が暴れないうちに部屋を逃げるように出た。

だが私にはどうして符養があんな反応をしたのかわからない。



私が朝食の用意をしていたら符養が台所に来た。


「フー、改めておはよう。」

「……おはよう、飛鳥。」


雰囲気がいつもよりよそよそしかった。


「どうしたの?さっき私何かされたくないことやっちゃった?」

「……飛鳥、私の寝言聞いたの?」


符養が不安げな目で見てくる。


「う、うん。聞いたよ。それであの『かげ』って呼んでた子って誰なの?フーがあんな反応をするっていうことは夢の世界の物語の登場人物じゃないんでしょ?」


符養が小さく頷く。

そして符養は俯いたまま言った。


「……妹。影月かげつっていうの。私が小さい時に私達は両親に捨てられた。」


それで寝言で「置いていかないで」と言ったのかと納得する。


「へえ、フーがお姉さんか。意外だね。」

「………どういう意味?」

「だってフーって普段は私に甘えてばかりじゃん。」


符養は図星だったのかピクッと動く。

私はそういった反応をする符養をニヤニヤしながらみていた。


「そ……それは…私がまだ小さい時に捨てられたから……。」

「まだ甘えたい年頃だったのにってところね。まあそれより、その妹さんは今どうしてるの?」


符養がさらに俯いた。

マズい、これ地雷だったかな?


「………」

「あ、言いたくなかったら言わなくて良いからね?」


だが符養は首を横に振った。


「……影月とは…裁きを下す者ジャッジメントに拾われてから離れ離れになった。今どこで何をしているかわからない。」

「なら探さなきゃね。そして妹さんともここで一緒に住もう。」

「……うん。」


符養は頷いた……が、あまり嬉しそうではなかった。

私はこれ以上詮索するべきじゃないと思って何も言わなかった。


「さてフー、気分を変えて武器屋行こ。ちょっと戦闘スタイルを変えるかもしれないから新しい武器を見に行きたいの。」

「……戦い方変えるの?」

「うん。やっぱり普通の近接戦闘じゃ当たり前だけどフーや骸亜に負けるからね。」

「……魔術主体から近接主体に変えるの?」

「そういうわけじゃないんだけど…。」


符養の頭の上に?が浮かび上がりはじめていた。

私はテーブル上の符養の席の前に朝食を置いて話を続けた。


「トリッキーな近接戦闘のスタイルになるって言えばいいのかな?相手の戦い方によって自分も戦い方を変えるの。」

「……??」


どうやら混乱してきたみたいだ。

私は口で説明しても余計に混乱させるだけなので符養に早く朝食を済ませるように促した。




「……武器屋に注文したって、いつしたの?」

「一昨日|(テスト終了翌日)だよ。あの日はフーが流流と帰っちゃったから一緒に行けなかったの。」

「……けど『今月お金ない』って言ってなかった?」


そんな会話をしてすぐに武器屋に着いた。


「おじさんいますか?」


私が店に入ると中で剣を鍛えていた男性が振り向いた。


「嬢ちゃんか。注文した物ならそこにあるぜ。」


おじさんが指を指したその先には大きな盾、二丁の銃、二対の剣、短剣、大剣が置いてあった。


「本当にこんなにいいんですか?」

「あの依頼をちゃんとこなしてくれたらな。あと言っておくが大剣は接近戦特化用に作ったから精霊石は入ってないからな。」


大剣には私の久しぶりの近接戦闘用だから烈鉄のおじさんが気合いを込めたのかゴツいデザインとなっており、双剣は普通の剣より刀身が若干短かった。

私はまず大剣を手に取ってみる。


「もちろん依頼はこなしますよ。……っと、意外に重いな。」

「……飛鳥」

「ん?何?」


私は剣の性能をチェックしながら返事をした。


「……飛鳥達の会話がいまいち理解できない。」


武器に目が眩んで符養に事情を話すのを完全に忘れていた。


「あ!フー、ごめん話すの忘れてた。あのね…」

「それは私が話す。」


店の入り口から声がしたので向くと鈴がいた。

鈴は私を睨むように一瞥し、符養に近づいた。

そして私に顔を向けずに言う。


「飛鳥、フーをあなたの思い通りにはさせない。フーまで犠牲にさせるわけにはいかないよ。」

「フーならわかってくれるよ。私は信じてるから。」


フンと鼻をならして符養の前に立つ。

符養は私と鈴の間に不穏な空気が漂っていることに戸惑っている。

たがこれは鈴がふざけているだけで私はこれに付き合っているというだけなのである。


「……な、何があったの?」

「話すよ符養。あれは一昨日、HR直後のこと……



『鈴、帰り武器屋に寄っていい?新しい武器を買いたいの。』

『いいよ。ってか飛鳥っち、武器変えるの?飛鳥っちの剣って上質な物のように見えるけど。』


飛鳥は『とんでもない』と言って顔と手を左右に交互に振った。


『武器は新しく買うけど別に変える気はないよ。使う武器を増やすだけ。』


それって『〜するだけ』って言えるほど簡単な事?と私は思ったが彼女なりに考えがあるのだろう。


『そういえばどんなの買うの?』

『大剣と盾と短刀かな。剣二個あるから双剣はいらないし・・・。いや、やっぱりいるかな?』

『うん!?飛鳥っち、口に一つで右手に剣三つ、左手に盾と剣二つの面白戦闘スタイルでいくのかい?』

『何その戦いにくそうな剣の持ち方。というより持てないでしょ片手に3本とか。』

『ウラルから流れてきた本の登場人物が左に3本、右に3本の計6本で戦うっていうのがあったよ?』」


「どうでもいい話はしなくていい。」


私が話が逸れる前に注意する。


「必要なことだけ喋ればいいでしょ。続き、私が話してもいい?」


鈴はすねたが、私はそれを無視して続きを話しだす。


「それから色々関係ない話に入って


『別に全部の武器を一度に使う訳じゃないからね?私は場合によって使い分けようかなって思っただけだよ。』

『そういえば飛鳥っち、片手剣以外の武器も使えたの?』」


私はフフンと鼻を鳴らす。


「『【剣士科の異能者】の蔑称を舐めないでよ。』」

「蔑称を自慢してどうするよ…。」


私はまたスルーした。


「『私去年までは盾と剣で戦ってたんだよ。一昨年は大剣で三年前は双剣使ってたの。……まあその時に使ってた武器は売っちゃったんだけどね。』

『あれ?一昨年って私と初めて会った時だよね?その時って片手剣オンリーじゃなかった?それに前に双剣は訓練してないって言ってたよね?』

『ああ、あの時はまだその年に使う武器を決めている途中だったから。毎年自分が一番使いにくいと思える剣の戦い方を選んで使ってたの。今年が片手剣だけなのは魔術科に入るためにから一番使い慣れたものを使おうって思ったのもあるけど単に今年使う武器として残ってたの。双剣は前使っていたけど最近使ってないからなれてないっていう意味で言ったの。』


まあそこからは大して重要じゃないから省くけど、要は剣なら大抵の種類の武器が使えるってこと。」


符養がポカーンとし始めていたので話をまとめたが、最初からまとめれば良かったと後悔している。


「で、ここからが本題。

私達はその後、ここに来て武器の注文をしたの。


『嬢ちゃん、またオーダーメイドか。まあうちの武器は純近接戦闘用ばかりだからな。で?何を作りたいんだ?』

『盾と大剣、短剣それと双剣をお願いできますか?』


その時おじさんは私の注文の多さに驚いて呆れたの。

で、溜め息をついて


『嬢ちゃん、俺はその依頼受けてもいいが、金はあるのか?前に武器作った時に金が無いって嘆いていたじゃねえか。』


その時に私は今うちにお金があまりないことを思い出して注文を取り消そうとしたときにおじさんが言った。


『仕方ねえな。俺と嬢ちゃんの仲だ、今回は無料タダで作ってやるよ。』

『え……でも…。』

『ああ、その代わりにある依頼を受けてもらうぜ。』

『依頼ですか?』

『そうだ。』


依頼の内容は簡単に説明すると風の町ウィンへの武器の輸送、そしてその帰りの道中に資源調達をしてほしいということなの。」


ウィンとは風精霊ウィルの加護がある町で、グランズから最も遠い町である。


「で、その依頼が今回フー達に頼みたいことなんだけど……。」

「私は反対だよ。ウィンが遠いっていうのもあるけど、そもそもこれは飛鳥っちがお金がないことがいけないんだよ。行くんなら飛鳥っちだけでいいじゃん。」

「……私は行く。」


符養が鈴の言葉を若干喰い気味に言った。

私はちょっと誇らしげに


「ほら鈴、私の言った通りだったじゃん。フーは手伝ってくれるって。」


そう言うと、「う…」と言って鈴はたじろいだ。

だが鈴も負けじと反論する。


「けど、ウィンなんて行くだけでも1ヶ月半はかかるじゃん。その間学校はどうするのさ?」

「それは大丈夫。先生に特別課外授業の申請をするつもり。成績優秀者なら1ヶ月は貰えるはずだし、その間に長期休暇に入るはずだからそれで時間の問題は大丈夫だと思うよ。」


特別課外授業は生徒が用事で遠くの町に行く際に申請するもので、申請すればその決められた期間は欠席扱いにはならない。

しかし授業の単位は最低限(落第しない程度)しか取れないのだが、休んでいる間に、勉強や訓練した証拠を先生に提示することで単位数を稼ぐことができる。


「それに…」


私は続ける。


「ちゃんとお礼はするよ。……そうだなあ…、ウィンで有名なケーキ屋のケーキおごるよ。」

「Yes, my master!」

「…飛鳥の命、私が守る。」


2人が私に服従のポーズをした。

ああ……、1人のはずが2人釣れてしまった。

まあ符養は元から了承していたから鈴が断っても奢るつもりだったんだけどね。


「嬢ちゃん、そろそろこっちの話に入っていいか?」


私達の話が一区切りついたところでおじさんが話に入ってきた。


「あ、大丈夫ですよ。」


私は再び武器を見る。

そしてその中の一つを取り、それに関して気になることをおじさんに聞いた。


「おじさん、私銃は頼んでないですよね?」

「ああ、それは俺からのサービスだ。知り合いから貰ったんだが俺や俺の店じゃ使い道無くてな、代わりに貰ってくれねえか?」

「在庫処分みたいですね……。ですけど私も銃は使ったことないですよ?それに剣と勝手が違うんじゃないですか?」


私は銃を一つ手に取って構えてみる。

その時にふとあることに気づく。


(撃鉄が無い?)


よく見るとシリンダーもない、というより弾をこめれそうな部分がどこにもなかった。


「おじさん、これ……」

「ん?嬢ちゃんはこの銃知らねえのか?」


コクンと頷く。


「これは術士用の銃で実弾は使えねえ、魔力を弾にするんだ。嬢ちゃん、説明は面倒だ。故に実践あるのみだ。」


おじさんは店の奥の方を指差した。

そこにあったのは案山子のようなものだった。


「あれに撃てばいいんですか?」

「ああ。だが少し待ってくれ。…おいそこの娘。」


おじさんは鈴を呼んだ。


「呼ぶならちゃんと名前で呼んでください。私には鈴という名前があるんですから。」

「おう、すまねえな。鈴、下級でいいからこの空間全体に壁を作ってくれねえか?他の商品に傷がつくとたまったもんじゃないからな。」

「へーい。『壁よ、覆い守れ。さらに硬化 ストーンフィルム』」


鈴は通常の術式に術式を加える「詠唱付加」をした。

術式付加は鈴が独自に編み出し、私にも詳しいことはわからないけど、組み合わせが自由自在らしく(鈴レベルの魔術師には)実用的なレベルのものらしい。


「ほら飛鳥っち、撃ってみなよ。」


私は言われるままに銃を構える。

だが、私の構えを見ておじさんが


「おいおい、なんだその構えは。へっぴり腰じゃねえか。」

「だ…だって銃ですよ?怖いじゃないですか。」

「だからこれは術師用の銃だって言ってるだろ。……というより剣も似たようなもんじゃねえか。」

「け、剣は大丈夫な措置がとられているのを子供の頃から知っていたからですよ。…けど銃は近くで誰も使っていないし犯罪で使われているイメージしか無くて…。」


剣の大丈夫な措置というのは町全体に保護魔術をかけて剣や魔術などによる殺傷を無くすことである。


「イメージしかねえのは分かった。けどよお、銃を両手で一つ持たなくていいんだぞ?」

「え?銃って撃った反動が強いからブレないように両手で構えるのが素人向きなんじゃ…」

「……まあ俺が説明不足だったのは悪かったと思うが、いい加減察しろよ嬢ちゃん。」


そこで私は理解した。


「まったく、臆病でどこか抜けてる感じの娘が今年度入ってからしっかり堂々とした娘に変わったと思ってたが、結局根本的な所は隠れただけで変わってねえのかよ。」


珍しくおじさんがイライラしている。

私はビクビクして何も言えなかった。

その時、


「はいはい、説教するならあとで飛鳥っちを引き渡すから今は武器の性能確認を優先しよしよ。」


と鈴がおじさんをなだめた。

おじさんも了承し、私に銃を投げつける。

「それも持ってそこの案山子に向かって撃ってみろ。あんまり銃を撃つということを考えるな。魔術を撃つ感覚で撃て。」


私は案山子に狙いを定める。


「言い忘れてたが、銃に魔力を込めてから撃つんだ。だが今は込めるのは下級魔術を撃つ位の量にしてくれよ。」


言われたとおりにし、魔力を込めて双銃の引き金を引く。


『ドォン!』


大きな音と共に光弾が案山子にぶつかりに行った。

距離が近いので、光弾はすぐにぶつかったが、案山子は少し揺れただけで傷一つ付いていなかった。


「おお、一回で二つの弾を案山子に当てやがった。お前本当に初心者かよ。」

「……しょぼい。」

「飛鳥っち~、もっと威力あげて撃てないの~?」


おじさんが2人の頭を叩く。


「勘弁してくれ。万が一嬢ちゃんが威力上げた弾を外して商品に当たったらこっちが困るんだよ。」

「……へ~い。」


鈴達を尻目に私は何度か試し撃ちを繰り返していた。

その際にこっそり程々の所まで段々と威力をあげていたのは内緒だ。

さらに、撃つ直前に銃に魔力を注げば威力が上がることに気づく。


(これ単純な魔力の塊を放つから威力だけなら同量の魔力使う魔術より強いかも)


試しに普通に魔術を当ててみる。

やはり威力は銃で撃ったときの方が高い。

だが攻撃範囲や他の性能を踏まえて総合的にみればどっこいどっこいだ。

次に魔術を銃にためて撃つ。

剣でできたのなら銃でもできるだろうという安直な考えだったがいともたやすくできてしまった。

それに威力、攻撃範囲、弾速etc.…どれをみても両方の良い点を合わせた結果となった。

デメリットを挙げるとしたら再装填に時間がかかることだ。

魔術の詠唱をして魔術を銃にためるという一連の作業は、下級魔術の時さえ中級魔術の詠唱くらい時間がかかるし、そこから狙いを定めて撃つまでとなったら上級魔術の詠唱並みの時間がいる。

面白い武器だけどこれなら普通に魔術を使ってもあまり変わらない気がしてきた。


「おお、もうそこまで見つけたか。」

「……流石飛鳥。」

「いいなー。いいなー。」


みんなが褒めてくれる。

けど私は現段階での銃の性能に納得できなくて素直に喜べなかった。


「よし、じゃあ次の機能について説明するか。」


訂正、やっぱりこの武器面白そう。

私がおじさんの言葉に目を輝かせていたら鈴も目を輝かせていた。


「銃の側面につまみがあるだろ?それを時計回りに一つ回せ。」


言われた通りまずは銃の側面を見る。

そこには「溜め」、「拡散」、「連射」、「放出」と書かれており、現在「溜め」に矢印が向いていた。

それを切り替え、隣の「拡散」に合わせる。


「それを案山子に向けて撃ってみろ。使う魔力量は嬢ちゃんがさっき使ったくらいで頼む。」


また言われた通りにさっき魔術を撃ったくらいの魔力量で銃の引き金を引く。


「バシュッ」


無数の弾が前方の広範囲に渡って拡散する。

しかし肝心の威力が下級魔術レベルの魔力だと目も当てられない程だった。

できて精々怯ませるくらいだろう。


「この機能の攻撃範囲と威力は反比例している。片方が良いともう片方が悪くなる。多分一番使いにくい機能だ。」

「範囲を調整できるんですか?」

「まあ相当経験を積まなきゃいけねえけどな。」


銃自身に付いているわけじゃないのか。

まあ何でもかんでも銃に頼ってはいけないってことなんだと思うけど。

私はまた何度か試し撃ちをしたが、攻撃範囲の調整の仕方が全くと言っていいほど掴めず、後も控えていたので早急に諦めた。


「もういいのか?だったら次の説明いくぞ?」

「お願いします……。」


私は「連射」に切り替える。

そしてまたまた同じように撃つ。


「ダダダダダダ」


引き金を引いている間弾が無数に飛ぶ。

一発一発の威力は拡散弾と同じ位だったが、中級魔術位の魔力量で弾の一つ一つが下級魔術レベルの威力を持っていた。

私はその弾に属性を付加させてそれぞれの弾に違う属性をつけること等をしてさらに色々確認をした。


「よし、次いくか。」


私はおじさんの指示の前に機能を切り替えて銃を構える。

しかし


「おいおい、こんなところで撃ったら商品に傷が付いちまうだろ。こっち来い、移動するぞ。」


おじさんの声に合わせて引き金を引……きかけた。

おおう……若干作業と化していたからあまり意識してなかった。


「……飛鳥、何してるの?早く行こ。」


多分符養達からは私がしばらく停止していたように見えたのだろう。


「ごめん、すぐ行くよ。」


慌ててついていく。

だが追いかけた先で私だけでなく鈴も符養も「呆然」以外の言葉で表現できない状態になった。


「今日だけ特別だぞ?他のところにも頼み込んで今回の為だけに貸切にしてもらったんだからな。」


なぜなら私たちの目の前にはつい先日出入り禁止になった練習場の入り口があるのだから。

そしておじさんはその先へ進んでしまっていた。


「おじさん、」


私たちは鉄のおじさんを追いかける。


「いいんですか?私たちが入っても。」

「今日だけ特別って言っただろ?結構苦労したんだぜ?ただ貸し切るならともかく出禁の奴らにだ。普通こんなことはねえが俺の顔に免じて許してくれたんだ。俺にも、他の奴らにも感謝しろよ?」


おじさんに言われたとおり感謝している。

している……が、私は疑問に思っていたことがあった。


「してますよ。……でも、これのたった一つの機能を説明するためだけにこんな広いところを貸し切ったんですか?」

「………」


おじさんが動揺したのを見たことなかったが、珍しくおじさんが動揺していると認識する事ができた。

鈴達もイメージからだろうがそういった行動をしなさそうな人がしていたため少し驚いていた。

そしてしばらくの沈黙の後、おじさんは口を開いた。


「悪い、忘れてた。」


……大体予想はしていた通りの回答だった。

それにこの人、早速他の店の人達の親切を無駄にしてたよ。

だけど説明を受けた後にここで練習すれば無駄になった分を取り戻せるよね?

それが許可されればの話だけど……。


「とにかく始めるぞ。」


私はさっきと同じように銃を構える。

だがその前に


「壁に向かって撃てばいいんですか?」

「ん?どうせ壊れるこたぁねえからいいと思ったんだが誰か相手になった方がいいか?」

「あ、なら私がそれやりたい。」


率先して手をあげたのは鈴だった。


「正直見てるだけでちょっと退屈していた所だったんだよ。フーもそう思うでしょ?」

「……うん。」


それならと思い、私は銃を鈴に向ける。

鈴は一気に魔法陣を3つ展開させて詠唱を始めた。


「『盾よ、硬化し我を守れ。我に仇なす常世とこよ全ての物から我を守らん。万物の力を祓いし神より与えられし力、我が盾となり数多の邪悪から我らを救いたまえ。』いくよー、『魔術三重奏マジック・ザ・トリオ』」


3つの盾が一列に並んで出現した。

術の同時詠唱……、普通なら2つ同時に詠唱できるようになるだけでも20年以上はかかるって言われてるのに……。

(術3つの同時詠唱、それにさり気なくそこに詠唱付加もしてるなんて……。この人、詠唱付加の開発だけじゃなくて同時詠唱も出きるなんて……何者なの?)


だけど今はそんなことを考えてる時じゃない。

私が引き金を引こうとしたとき、おじさんが


「言い忘れてたが『放出』だけにはでかい反動がある。ちゃんと構えて撃てよ。」

「え?」


言うのが少し遅かった。

私は引き金を既に両手共に引いており、銃口から魔力が放出されてしまった。


「うおおおおおあああ!」


突然私を襲った反動で体のバランスを崩して出したこともない声を出して後ろに吹っ飛ばされる。

倒れ始めた瞬間に両手に持っていた銃の引き金から指を離すが、そんなことをしても遅かった。

背中から倒れ、そのまま二、三度後ろ向きに転がって仰向けになった。


「いつつ…。おじさん、いうならもっと早くに言ってくださいよ。というか、そんな重要なことを忘れないでください。外なら私重傷になっていたかもしれないんですよ?」

「ああ、すまんすまん。…まあいいじゃねえか、ここでは怪我しねえんだからよ。そのためにもここに来たんだからな。」


この親父ひと完全に他人事だと思ってる。

銃を向けようとしたが、相手が鈴じゃあるまいしそこまでする必要ないと思って銃をおろした。

その時のおじさんの顔がものすごい怖かったことは言うまでもない。





「で、飛鳥っち、続けるの?」


転がった際にどこか怪我してないか鈴に診てもらいながら質問された。


「そうだな~。もう大体の性能はわかったしもういいかな。また転ぶの嫌だし。」


そう言って私は立ち上がる。


「そういえば鈴、私転んじゃったけどあの時盾何枚壊せてた?」

「ああ、それね……」

「おお、いたいた。爺さん、俺の弓直った?」


と、鈴の言葉はおじさんの店から下りてきた聞き覚えのある声によって消された。


「げ、竜!」


鈴がすごい嫌そうな顔をした。

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