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クロスワールド  作者: 氷冷 飛鳥
第四章
29/64

テスト~当日3

先生が術の詠唱を始める。

私はその隙を狙って剣で攻撃しにいこうとしたとき、ウィルとアクリに行く手をはばまれた。


「サン、ルナ!」


サンとルナがすぐに駆けつける。

チラッと後ろを見るとグランは詠唱をしており、符養は私についてきていた。

アクリとウィルをサンとルナに任せて私は敵精霊の間を抜けて先生のもとに行く。

しかし私が剣を振り下ろそうとしたとき


「エターナルフローズン」


間に合わない。




と思ったのだが、氷魔術を至近距離でくらう直前で後ろから符養が私を引っ張って後ろに放る。

そのおかげで私は攻撃を回避できたが、符養が氷の中に捕らわれてしまった。

先生…アイシスはすぐにまた術の詠唱に入る。


「ロックフォール」


その時グランの魔術で部屋中上から岩が降り注いだ。

相手側は全員回避行動、防御に徹する。


「バリアー」


サンが凍った符養を含めて全員に防御魔術をかけて当たってもダメージがないようにした。

私は、相手の誰も術の詠唱をしていないことを確認して術を詠唱する。


「『我を苦しめしもの、我に仇なしもの、我と敵対せしもの、神々の怒りの焔によって全てを灼熱の地獄へと変えよ プロミネンス』


符養の氷を燃やして溶かす。

氷が水になり、それが炎を消してゆく。

しかしそれでも炎は符養を氷から解放させた。


「ストームサージ」


部屋を水が覆う。

息ができない。


(エアーボンベ)


サンが全員を水中で呼吸できるようにした。


(トルネード)


ウィルがこの状況で竜巻を発生させて渦を作る。

私は符養を見るが、アイシス先生の氷はまだ半分以上彼女を凍らせている。

彼女は今氷から抜けようともがいていた。


召喚解除サモンアウト


私が召喚した精霊と符養を元の場所に返した。

そして私は魔術の詠唱をする。


(「地を溜まりし稲妻、いまそれを解放せん ストロークサンダー」)


稲妻が水全体へ走っていく。

海水であって良かった、水なら電気がとおらなかっただろう。

相手の3人は自分達の策で足を掬われた。

水中なのでもちろん私にも電撃が襲う。

しかし、グルグル回されたせいで気持ち悪くなってきた。

気がつくと、水の量が減ってきて床に足がついた。

さらに水がひいていき、顔が水の上にでるくらいになった。


「『契約者マスター飛鳥が命ずる。再度召喚に応じよ』」


召喚解除サモンアウトさせていた4人を再度召喚する。



「……飛鳥、私達を戻したあと何があったの?」

「雷魔術を使ったの。……あ、ダメだ。やっぱり気持ち悪い…。」

「飛鳥ちゃん、大丈夫ですか?キュア」


気持ち悪さが無くなっていき、さらに雷魔術を使った時のダメージも回復する。

しかし休んでいる暇は無い。

先生とウィルが詠唱を始め、アクリが近接戦闘に入る。


「スペルジャマー」


ルナが相手2人の詠唱を止める。

2人とも大きい魔術を使う気でいたらしく、短い詠唱で済むルナの魔術で簡単に妨害できた。

そしてルナと符養はアクリの足止めに行き、私とグランは後衛2人を狙いに行く。


「『契約者マスター飛鳥が命じる。グラン、我に力を貸し我の秘められし力を引き出せ』」


グランを私に憑依させる。

サンとルナの2人も憑依させれれば強いのだが、2対3と不利になるし、そもそも精霊は対になる属性の精霊同士をセットでなければ複数憑依させれない、つまりグランとサンとルナを同時に憑依させたいならば、地の属性と対の属性の精霊…風の精霊ウィルを加えて憑依させなければならない。


「プレス」


先生とウィルの頭上に巨大な岩が落ちる。

2人はそれぞれ別の方向に避ける。


「サン、今だ!」

「ホーリーリング」


光の輪がウィルを捕まえる。


「グレイヴ」


捕まえられて床に倒れたウィルの下から穴が開き、ウィルを飲み込んで再び閉じ墓を作りあげた。


「『母なる地よ、汝が生み出し愛しきものをその手で抱きしめよ グラビティ』」


私がウィルを捕らえた隙に先生が魔術を使い、私や符養達を地面に伏させる。


「まさか精霊を憑依させれるとは思いませんでした。なら私も精霊と融合してもいいですよね?」

「……なに?」


先生は詠唱を始めた。


「『我精霊に協力を願う者アイシス。願わくば我にさらなる力を貸したまえん』」


私はグラビティから抜け出し、先生の詠唱を止めようとしたのだが、時すでに遅し。

先生のすぐそばにアクリと先程生き埋めにしたはずのウィルが現れ、アイシス先生と融合する。

私の精霊憑依とは違う、融合しているとしか言い表せれない。

私はグランの憑依を解除する。

先生の融合は時間がかかるようだったのですぐに私は別の精霊2人を自らに憑依させる。


「『契約者マスター飛鳥が命じる。サン、ルナ、我に力を貸し我の秘められし力を引き出せ』」


2人が私に憑依する。

そして憑依が完了した直後に先生の融合が完了し、同時に私は剣を構えて走っていく。


「連振牙滅斬」


私は剣での連撃をうった。

……はずだったのだが


「アイストルネード」


氷の竜巻が私を巻き込む。

私は吹き飛ばされ、符養たちの元までノーバウンドで飛ぶ。

符養が私をキャッチし、グランがそれを補助する。


「符養、グラン、ありがとう。」

「契約者を守ることは当然だ。しばし作戦会議をするぞ。」

「ツンデレかよ。」


グランがルナ……が憑依している私を殴る。

痛い。

私は何も言ってないのになんで殴られるの?

グランは何も言わなかった。


「グラン」


多分聞いても無駄だと思ったので別の質問をする。


「作戦会議を提案するってことは何か策でもあるの?」

「策といえる程ではない。ただ試してみたいことがあってな。」

「どんなこと?」


グランはチラッと符養を見た。


「その娘に憑依できんかということだ。」


……先生を倒すという名目がなければ通報されるレベルだ。

グランの言葉に他意が無いことを信じよう。


「じいさんは貧乳派か……」


ルナがさらっと変なことを呟く。

頼むからそういうことは私の口を使って言わないで。

声も私の声でしゃべるし。

そしてその不安が的中し符養とグランに殴られる。

2人に殴られ二倍痛い。


「フー、グランが言ったことだけどいい?」

「……飛鳥のためなら構わない。」


今日帰ったら夕食は符養の好きなものにしようかな。

私は詠唱をはじめる。


「『契約者マスター飛鳥が命じる。グラン、我が従者符養に憑依し能力を引き出せ。』」


グランが符養に憑依する。

符養の髪などが茶色になっていく。

私が憑依されるとこうなるのか。

そして憑依が完了し開口一番が


「ふむ、やはり人間に精霊を御することはできぬのか。」


どうやら精神を支配しているのはグランのようだ。


「今フーの体をグランが操っている状態になっているの?」

「ああ。そういうことになるな。」

「ちょっと言いにくいんだけどさ、戦うならフーに精神譲ってあげてほしいんだけど?」

「……なるほど。了解した。しかしいつでも儂が動ける状態にしておいてくれ。万が一の時だ。」


私は頷いた。


「『マスター飛鳥の名の下に命ず。グラン、その体符養に委ねよ。』」


符養の意識が一度消える。

そしてすぐに符養自身の精神が目覚めた。


「フー?」

「…成功したの?」


なんか違和感を覚えた。

雰囲気は完全に彼女のものなのだが、グランが憑依している影響なのか符養の感情がいつもより出てきているようだった。


「うん。だけどグランの精神だけが出てきちゃうからマスター権でフーの精神を表に出したの。」

「……?」


よくわかっていなかったみたいだ。


「とにかく、成功して今フーはグランの能力が使えるようになってるの。あと、魔術は地属性の魔術しか使えなくなるからね。」

「飛鳥は他の属性の魔術使ってなかった?」

「使えないっていうのはおかしかったかな。正確にはどうしても術に地属性が付くの。2体精霊憑依させていたらどちらか一方の属性だけだけど。」


理由は自身が持つ魔術属性を精霊が自分の属性に染めるからだが、そういう細かいところは話さなくてもいいだろう。


「わかった。それと飛鳥」

「何?」

「あの人を倒すための策を思いついたんだけど。」


思いついたと言っているが多分グランの策だろう。


「アイシス…さんは精霊と融合して水と風の魔術を詠唱無しで使えるようになっているんだよね?」

「精霊を憑依させた時と同じならそうなるね。」

「だから水と風の魔術を中心に攻撃してくると思う。」

「私もそう予想してるけどそれが策って言うなら……」

「まだ続くよ、飛鳥。水や風は大抵広い範囲を攻撃するものが多いの。」


それは魔術科に属している私には既知の事柄だ。

多分符養が次に言うことはこうだろう。


「けど攻撃範囲は広くても壁を壊す破壊力は無い。」


思った通りだった。

しかし、


「だからって相手も馬鹿じゃない。地の魔術で壁で防御しながら攻めてもその対策をうたれれば厳しい。」


私の考えを上回ったことを言った。


「なら他の方法はあるの?」

「私が地属性の特性を生かして地中から奇襲する。」


まさかの言葉に二度驚かされる。

いつもは私を守ることを最優先していた符養が私を囮に使うなんて思わなかった。

これもグランが憑依した影響からなのだろうか?


「作戦会議は終わったのですか?」


先生が私を吹き飛ばしたところから一歩も動かずに私達に聞いてくる。


「終わりました。」

「戦闘中に相手に気をつけずに作戦会議をなんて……あなたは戦い方が違うので何ともいえませんが、後方から指示を出し司令塔の役割を担うのも魔術師の仕事です。今回味方は全員召喚獣なのですから契約者と召喚獣との念話を使用してもよかったのではないですか?」

「はい……。」


返す言葉が見つからなかった。


「これにより5点減点です。」


これで鈴との点数対決は負け確定かな…。


「では、再開しましょうか。」


先生の周りに風が渦巻く。

と同時に室内の床が凍る。

氷の魔術を使えるということは精霊との融合で属性を塗りつぶされることはないと思われる。

しかし無詠唱でこれほどまでの威力…先生も精霊石を持っているのだろうか?


「フー!」


符養は地中に沈んでいった。

私は剣を握り、先生に突撃する。

しかし、床が滑って全速力でむかえない。


「イービルライト」


悪の光を室内に展開する。

先生は攻撃だと思ったのか防御姿勢をとっていた。


「ホーリーダーク」


さらに私は聖なる闇を展開する。

先生はしばらく防御体制を崩さなかった。

私はその隙に


「グラビティ」


先生を重量で押しつぶし、動きを止める。


(フー、先生の周りちょっと危ないから気をつけてね。)

(わかった。)

「ヘルボルケーノ」


地獄のマグマを先生の足下から噴火させる。

先生はそれをまともに食らったと思った。

しかし


「アクアキャノン」


勢いよく噴射された水が私にぶつかり、私は氷に叩きつけられた。


「なんでそこにいるんですか?」


先生は私の真後ろに立っていた。

先生は余裕の表情で腕を組んでいる。


「あれは私が魔術で作った偽物です。なるほど、あなたでも見破れない出来ですか。」


グラビティが当たっていたときは確かに起き上がろうと動いていた。

それがヘルボルケーノが当たる直前まで動いていたのを私は確認している。


「いつ偽物と入れ替わったのですか?」

「さあ?そういうことを分析するのも魔術師の仕事です。」


私は先生に切りかかる。


「ウォータークッション」


水のクッションによって攻撃を吸収される。


「アクアキャノン」


さらに攻撃を吸収させた水を砲弾として発射する。

それにより私の剣がはじかれ、手から離れる。


「ネガティブボルト」


雷が先生におちる。

しかしというかやはりというか先生はそれをいともたやすく避ける。

だが私もただ闇属性の雷を落としたわけではない。

雷が落ちたところに黒い穴ができる。

慢心していたのかギリギリ

で雷をかわしていた先生はその黒い穴によって穴に引っ張られる。

私はこの隙を突いて、先生……おそらく私の背後にいるであろう先生に目の前にいる身代わりに撃ったかのようにして攻撃する。

エレメントエイトに匹敵するであろう奥の手で


「『二つが混ざりし時、それは混沌が訪れん。混沌が訪れし時、破滅が起こらん。破滅が起こりし時、消滅せん。消滅せし時、全てが無に帰す 混沌カオス』」


展開させていた二つの魔術が混ざり合い、文字通り混沌となっていた。

光と闇の混合魔術であるはずなのに混沌の渦から炎や雷が零れる。

私は後ろを振り向き、予想通りそこにいた人物に下級魔術を絶え間なく発射する。

天井に展開された魔術にはすでに魔力供給を終えており、あとは自動で動いてくれる。

しばらくするとそこから零れる物の量が多くなる。

そしていきなり滝のように吐き出され、それが全て私の正面にいる融合者にぶつかる。


「マジックコールド」


……ぶつかりそうになった時、急に混沌の魔術の動きが止まる。


「ダークワールド」


私は驚いたが、そこで止まると危ないと判断しすぐに攻撃を再開する。

部屋全体を何も見えない真っ暗闇にする。

私はルナを憑依させているので、暗闇でも平気で見ることができる。

そして、現在地中に隠れている彼女は


(フー、いける?)

(うん。)

(周りを暗くして見えないけど大丈夫?)

(大丈夫。私元々殺し屋だから暗闇は慣れてる。)


床の下から符養が現れる。

しかし先生は音もなく現れた符養に全く気づいていない。

符養は自分の短刀で一閃。

しかし、それは偽物だった。


「あの魔術はなんですか?」


私は声を張り上げる。

符養は気配で先生を探している。


「魔術の名の通りです。魔術を凍らせてその魔術の存在自体を封印するものです。」

存在自体ということは、他にその術の使い手がいたらその人も使えなくなるのだろうか?


「カットカッター」


どこからともなく風で研ぎ澄まされた氷の刃が飛んでくる。


「フー、左に壁を作って。」

「グランドウォール」


符養が作り出した壁により氷の刃が壁に当たる。

……自分の使った術が裏目に出るなんて。

(飛鳥)


突然ルナが話しかけてくる。


(何?)

(少しの間俺に任せてくれないか?)

(何かあるの?)

(ちょっとな。)


私は黒に体を預ける。


「『契約者マスターが命じる。白、我から離れ共に戦え』」

(ちょっとルナ!?)

(あいつを一緒にしておくと戦えないからな。)


私は納得いかなかったが、これ以上策無しで戦っても魔力の無駄遣いだと思ったので渋々認める。

サンはなぜ出されたのかよくわかっていないようだった。


「飛鳥ちゃん……?」

「すまねえ白、ちょっとやりたいことがあってさ。」


サンは今私の体をルナが動かしていることを理解したようで「どうぞ」と手ぶりするだけだった。

ルナはサンにドヤ顔する。

するとサンが……なぜか符養も下級魔術を撃ってきた。

だから私ごとルナを殴らないで。

頼めばルナを外に出すからそこで殴って。


「『我、精霊ルナ。」


ルナが殴られたことなど気にしないで詠唱を始める。


「我が力を与えし者よ。我が宮殿へと導け。』」


周りの風景が変わる。

ルナは全員を空間魔術で「宮殿」と呼ばれるところへ飛ばした。

どうでもいいけどさっきのでルナのも含めて私の魔力が殆どなくなったんだけど……。


(サンキューな)

(ルナ、ここどこなの?)

(ここは精霊ルナ専用の空間みたいなところだ。)

(つまり家?)

(まあそんなところだ。もっとも、空間魔術が使えないと帰ってこれないから俺単体じゃ帰れないんだけどな。)

(けどなんでここに移動したの?)


入るために精霊が使えない空間魔術を使用しなければならないということは何か特別なことがあるのだろう。

ルナは私を先生の方へ向けさせる。


(見てみろ。)


そこには立っているがフラフラな先生や符養、倒れたまま動かないサンがいた。


(どうなってるの?)

(ここは空気中に闇属性の魔力しかない。だから闇属性以外の属性しかないこいつらには闇属性の魔力は毒でしかない。普段は無属性の魔力が多いから吸収しても薄めて無害にできるからな。比較的闇属性の性質が強いお前でもここじゃ普通に動けるだけで戦闘なんか無理だからな。)

(ならフーと先生はフラフラ立っているのに白は死んだように倒れて動かないの?)

(あいつは光属性だ。闇属性に弱いからああなっちまうんだよ。死んでねえから安心しろ。)


私はサンの元に行く。


「サン、大丈夫か?」


ルナが憑依している影響でルナの喋り方が出てくる。


「……あす…飛鳥……ちゃん?」


私は無言で頷いた。

サンは起き上がろうとするが、体に力が入らないようだった。


「無理すんな。そのままでいいから。」

「…ごめ…んなさい。」

(サン達が動けるようになる方法は無いの?)

(無いな。奴らに闇属性の魔力が流れない限り動けない。)

(なら……)

(闇属性を加えるように契約者マスター権限を使うのもやめておけ。こいつらは属性を司る精霊だ。お前専用の使い魔じゃない。もし闇属性を加えて何かあったら世界が崩壊するかもしれないんだぞ?)

(……)

(精霊だけじゃねえ。符養はどうなる?あいつは人間だが元々闇属性を持っていないはずだ。こいつも無理に闇を加えられると性格が今までと変わるかもしれないんだぞ。)

(……ならどうすればいいの?)

(決まってる)


ルナは私の目線をサンから先生に向けさせた。

符養と同様、先生は相変わらずフラフラしている。


(あいつを倒すことだ。)

(でも、戦えない状態の人に攻撃するなんて……)

(……わかった。ここであいつが降参すればいいが、そうじゃなければ倒せ。)


私は先生に近寄る。


「先生。」

「……まさかここに連れてくるとは意外でした。」

「降参してくれ。私は戦えない奴を相手に魔術を使いたくねえ。」

「なめられた…ものですね。精霊2人と融合している私がこの空間によって弱体化すると思っていますか?」

「精霊は人間より魔力に敏感だ。お前だって知ってるだろ。」


ルナが喋る。

私はルナの好きなようにさせてあげようかなと思って、しばし黙ることにした。


「お前は昔からそうだ。負けず嫌いで勝たないと納得できねえ。」

「今回は勝ち負けなんてありません。さっきのはどうせ倒されるなら持てる全力で戦って倒された方が彼女も私もすっきりした気分になれると思ったからです。」

「今のお前の全力なんてたかが知れてる。戦っても飛鳥に気を使わせるだけだ。」


ルナは魔術で先生を地面に這わせる。


「お前が全力を出せばこんなもの楽だろ?やってみろよ。」

(ちょっとやりすぎじゃない?)

(少し黙ってろ。これは俺とこいつの問題だ。)


ルナが珍しく本気だ。

ルナはいっそう強く先生を魔術で押し付ける。


「……くっ」


先生が魔術に抗って起き上がる。

ルナは「おお」と歓声をあげたが、やっぱり負けず嫌いかとも思っていた。


(ルナ、感情的になりすぎ。私とルナの感情がリンクしかかってる。)

(……ああ。)


ルナは気持ちを落ち着かせるために息を大きく吸って吐いた。


(やりすぎるなら私が無理やり押し込めるからね?)

(わかったわかった。ありがとうな。)


私がため息をつき、ルナは臨戦態勢を整えた。


「なるほど、そのしぶとさは一周して尊敬してやるよ。」

「……今回のあなたの行為、姫はどう思っていらっしゃるのでしょうかね?」

「姫は関係ないだろ!それに、っ……姫だってわかってくれるだろ。」

(ねえルナ、姫って?)

(今度話してやる。今はこいつに集中させてくれ。)


先生は微笑みながら


「どうでしょうね。今も姫はあなたに怒りながらこの戦いを見守っているんじゃないですか?」

「そんなんだったらここに出てきて俺を止めるだろうよ。」


先生とルナは笑いあう。

そんなに可笑しいことがあっただろうか?


「で、先生よぉ、策は見つかったのか?」

「ええ。私に闇属性の性質が無いのなら、手に入れればいいのですよ。」


ルナから笑みが消える。


「やめとけ。お前だってそんなことしたら死ぬかもしれないってことぐらいわかって…」


その瞬間私は先生に向かって全速力でぶつかりに行く。

先生は今いる空間のせいで回避することができない。

私は先生に手のひらをかざして魔術を放つ。


「ネガティブキャノン」


負の塊を撃つ。

さらにもう一度、もう一度、もう一度…


(おい飛鳥、いきなりどうしたんだ。感情リンクがまずいって自分で言っておきながら……)

(うるさい。黙ってて。)


私は先生の腹に一発入れる。


「先生、ふざけないでください!いくら負けず嫌いでもたかが生徒のテストで自分を犠牲にするようなことをしないでください!」


先生は驚いた表情でなにか呟いたが、私にはよく聞こえなかった。

私の感情が高ぶっているせいか私の口調が通常に戻っていた。


「ですが……やるからには全力を…」


私はもう一度魔術を撃つ。


「全力出しても自分が犠牲になったら意味ないって言っているんです!ルナが挑発してきたということもあるかもしれませんが先生が子供のルナに大人な対応をすれば……。」


その時脳裏にある光景が浮かんだ。

私の記憶ではなく、ルナの記憶みたいだ。

そこまでリンクしていたなんて……。


(やっと治まったか。)

(……黒には言われたくない。)

(その呼び方やめろって言ってるだろ。)


私は先生を見る。

先生は沈静化した私を見て安心したのか気絶していた。


(結局ここじゃまともに動けねえんだよ。ここじゃなかったら飛鳥の術を何回撃たれようが平気だっただろうな。)

(怪我はしないようにしてたから弱くて当たり前だよ。ここじゃないならもっと威力上げてたよ。)

(お人好しのお前のことだ、どうだかな。)

(? 何か言った?)

(言ってねえよ。)


視界に倒れたサンが入る。


「あ、符養とサン!」


思わず口に出る。


(忘れてたのかよ。)

(まだ魔力残ってるよね?)

(当然だ。それ以前にここじゃお前の魔力は底なしだ。)


私は全員を一カ所に集める。


「『我精霊を従えし者。精霊よ、我が導きせし場から元の場へ連れたまえ。』」


周りの風景が変わり、元々いた場所へ着く。

と同時にルナが私から離れる。

そして、さっきまで苦しがっていたサンや符養が立ち上がる。


「すごい空気がおいしく感じられる。」

「そうですね。あそこは闇の魔力のせいで空気がよどんでましたから。」

「おい、それはお前らが闇属性を持ってないからだろ。俺や飛鳥は気持ちいいくらい空気がおいしく感じられたんだぜ?な、飛鳥。」

「うん。体が軽くなったみたいだった。」

「ほらみろ。」


サンと符養が信じられないという顔をしている。

だってその時私闇属性一色だったし…。


「そういえばおじいさまが出てきませんね。」

「フー、憑依解除しないの?」

「やり方がわからないの。」


……あー。

私は仕方なく召還獣に命令する体制になる。


「『精霊グラン、符養から離れよ。』」


グランが符養から離れる。

さっきまで感情を表に出していた符養の顔が無表情になる、ここだけは惜しいな~。


「やっと離れられたわい。」

「……もう精霊を憑依させたくない。」

「グラン、やっと出られたってどういうこと?」

「どうやら儂は娘に憑依したわけではなく娘と融合していたようでな。どう出ればよいのかわからなかったのだ。」


融合ということは意識を共有していたということ…


「フー、大丈夫だった?」

「……感情を出してた。」

「それは良いことだと思うよ?フーは感情を表に出すことが苦手なだけなんだから。」

「……恥ずかしい。」


照れる符養。

この調子じゃ符養が感情を表現させることは一年先か何年先か…。


「おい、立てよ。」


ルナが先生を起こす。

見ると、いつの間にかアクリとウィルがいなくなっていた。


「ルナ、休ませてあげて。」

「そのつもりだ。」


と言って、ルナは先生と共に消えた。


「アイシスなら大丈夫です。ルナはアイシスを回復させに行ったのだと思います。」

「回復?」

「ええ。アイシスは氷の属性が強いですからブラズムへ行って氷の魔力で回復を促進させているのかと。そして回復後はルナの説教ですかね。」

「説教って…。私がルナにしたいくらいだよ。」

「ふふ、それはまた今度私達全員でやりましょう。私も言いたいことありますし。では私はここで。」


サンが消える。

元の場所へ戻ったのだろう。


「飛鳥、アイシスが指示したとはいえ、やはりお前はまだ精霊に頼りすぎだ。今回もルナがあそこへ飛ばなければ勝てたかわからぬのだからな。」

「わかってる。」

「今も訓練は続けてるのか?」

「うん。ようやくサンに攻撃が利くようになってきたよ。」

「そうか。なら儂も今度相手してやろう。儂にはこの土地の加護があるからサンやルナと同じように思われては困るぞ。」

「お願いね。」


私はグランに微笑む

グランもニヤッとして、消えた。


「フーもこのまま戻る?」

「……飛鳥と一緒に行く。鈴や流流の試験も気になるし。」

「じゃあ、行こっか。」


私と符養は廊下への戸を開け、外へ出て行った。

このまま鈴のところへ戻る。

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