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クロスワールド  作者: 氷冷 飛鳥
第三章
21/64

またウラルへ

自分の世界に帰ってこれた。

それを理解するのに数秒かかった。


「飛鳥っち。大丈夫?」

「……」


何回鈴が呼びかけてくれているだろう。

私はずっとぼ〜っとしていて鈴が何を言っているのかわからなかった。


「飛鳥っち!」

「っ!……鈴?」

「ぼ〜っとしていたけど大丈夫?」

「う、うん。」


鈴以外に周りに符養と0がいた。

自分の今の状態を確認してみると、………今の自分の服はウラルのものだった。


「……この服…。」

「一応お前は今ウラルの飛鳥だ。2人を入れ替えさせようとしたら体までついてきてしまったんだ……。」

「え、どういうこと?」


0は口をおさえたが、鈴が私の手をつかみ、私を起こしながら


「0ね、空間魔術が使えるの。」


空間魔術……「指定した場所に移動する」というようなある地点Aから地点Bに瞬間移動するような魔術である。

しかし、この魔術は数百年前に滅びたはずだ。

鈴はそんなこと気にせずに続ける。


「すごいよね、こんな魔術使えるなら、魔術科に来ればいいのにね。」

「残念だが、俺は少ししか空間魔術を使えない。さらに言うと俺の魔力の量はお前ら魔術科の生徒の平均的な魔力量にどうあがいても届かん。俺の魔力はさっきの魔術でほとんど空だ。」


………こんな状況で思うのもなんだけど、初めて0に勝った気になれた。

起こされた私はすぐ符養に抱きつかれる。

それに少しムッとした鈴も私に抱きつき(さらにいろいろなところをベタベタと触ってきたり、頬を擦り付けてくる)、話を続ける。


「あとね〜、0の本名が分かったんだよ〜。ウリャリュのあしゅかっちが教えてくれたんだ〜。えっと……『ガイア』って言うらしいんだけど、飛鳥っち二号に書いてもらった字がウラルの言葉だからわからないの〜。ほら。」


頬を擦り付けてくる鈴に字を見せてもらうと「骸亜」と書いてあった。

それを見て私はもう「飛鳥っち二号」にツッコむことを完全に忘れた。


「それって……。」

「……はぁ……………。」


0がものすごい大きなため息をつく。


「飛鳥……、もしかしてウラルでの俺の事件を聞いたのか?」

「え……あ……、……うん。ウラルの鈴から聞いた。」

「ちっ……まあ、こうなることなんて予想してなかったしな……。」


0は呆れていた。

自分も少し意味がわからない。

えっと、0と骸亜は同一人物、それに加えて0はウラルの人、だけどそれだと骸亜はウラルの私より年上だったはず……、けどそれは年齢を偽ればどうにか……。(自分なりに苦しい言い訳だなぁ)

よって骸亜=0は成り立つ。


「飛鳥……どういうこと?」


私に抱きついている符養が抱きついたまま聞いてくる。


「あ……………は、話すからまずは私に体を擦り付けてくるヤツをどけてくれない?」

「……わかった。」


符養は鈴を私から引っ剥がし、それに怒った鈴は符養とじゃれあいという名の戦闘を始める。


「2人とも、家が散らかるから外でやって。」


2人は素直に外に出る。


「で、ぜろ。……ううん、骸亜。どうしてあなたはここにいるの?」

「……お前は向こうの飛鳥と違って俺にタメ口とはな。」

「だって、私とウラルの私は別人だから。」


0が苦笑する。

外で2人が暴れる音が聞こえる。

他は何も聞こえない。


「違う世界の自分自身なのに別人発言とはな。」

「だって彼女も自分の意思で動いてる。私が動かしているわけじゃないし、まずそれ以前に私は彼女に会ったことすらない。……それより話をそらさないで!なんであなたはこっちにいるの?」

「……それはもう少し後に話す。ちょうど邪魔な2人が消えたから行くぞ。」


0は私の手を握り、呪文を唱えようとする。


「ちょっと待って、どこに行くの!?それより魔力は?」

「うるさいやつだな……。こういうところはあっちと変わらねえな。」


0が何かつぶやいたが、聞こえない。


「魔力はさっきマナカプセルをのんで回復させた。帰りはお前が空間魔術を使え。」

「え!?私空間魔術使えない!」


0は無視して呪文を唱える。


「『我の残した大切なもの、そのため我戻る。パラレルジャンプ!』」


少し下手な詠唱により、また私がクロスに帰ってくるまでの空を飛ぶ感覚におそわれた。

空を飛ぶより、宙に浮いているのに何かに押しつけられている……そう、急加速したときのようなそんな感覚…、と思っていたら、堅い地面の上に立っていた。


「ここって……。」

「ああ、ウラルだ。」


しかも鈴の家の前だった。


「……あれ?鈴の家を知ってるの?」

「ああ。クロスの飛鳥をまたこっちに持ってこないといけなかったからウラルの飛鳥から住所を聞いておいた。住所さえわかれば座標指定はできるからな。」

「それより、何で私がまたこっちに来なくちゃ……」

「今の自分の体は元々誰のだ?」

「あ……」


そういえばウラルの私のだった。

0は私の返事を聞かず、呼び鈴を押した。

……しばらくして鈴が飛び出してきた。


「骸亜!それに飛鳥。なんでここに!?」


出てくるなり、大声で叫んでいた。

私はふざけてこっちの私をイメージだけでだが真似をしてみた。


「あ、あの、骸亜さんがクロスにいて……。私嬉しかった。けど骸亜さんがまた私をここに預けるって言っ、たッ!!」


0が私にデコピンしてきた。


「何いきなり変なことしてるんだ。もしかしてこっちの飛鳥の真似か?……全く似てないぞ。」

「そうよ飛鳥。こっちの飛鳥なら自分のことを『私』なんて言わないって言ったはずよ。」


痛恨のミスだった。

やっぱりアドリブ……即席でやったのが間違いだったな……。


「で、骸亜、なんであなたここに!?死んだんじゃなかったの?ていうか……少し背縮んだ?」

「…………」


0は黙っていた、どうしたんだろう。


「理由はあとから話す。とりあえずまずは2人の飛鳥の体を元に戻さないといけないから竜を呼んでくれ。」

「……わかったわ。」


鈴は0がここにいること以外でも驚いているようだ。

私は夜の空を見上げて呟いた。


「やっぱりウラルの空もクロスと変わらないな……。」

「おい飛鳥。ここに突っ立っていても通行人に怪しまれる(特に俺が)。中に入るぞ。」


と、私も0について鈴の家に入った。

ここを離れて1時間程しか経っていないはずなのにとても懐かしく思えた。


「骸亜さん!」


私達が鈴に連れられ、リビングに入った時に私が0を呼んだ。

……いや違う。

私が呼んだのではない、『私』が呼んだんだ。


「ぼく、また会えて嬉しいです。」

「……まだ1時間くらいしか経ってないだろ。」

「でも、また長い間会えなくなるって思っていたんです。」


そこにウラルの私がいた。

声も姿も、鏡を見ていると思えるくらい一緒だった。


「0、やっぱりその人がウラルの私?」

「そうだ。こいつがウラルの飛鳥、氷冷飛鳥だ。」


『私』が頭を下げる。


「あ、私はクロスのあなたです。」


私も自己紹介をして頭を下げる。


「よ……よろしく……です。」


見た感じ、やはり昔の私を見ているようだった。

飛鳥はどうしたことか0に寄っていき、0にしがみついた。

私が0に涙目でくっついてるようで恥ずかしい……。

それを察したか0は私を鼻で笑った。

……体が元に戻ったら私の最強の魔術で葬ってあげよ…。


「竜に連絡つけてきたわよ。」


先ほどまで竜さんに連絡をしていた鈴が部屋に入ってきた。


「ああ、助かる。」

「神は?あいつも呼んだ方がいい?」

「それはいい。あいつとは一応まだ喧嘩中だからな。」

「けど神に対して怒っているようには見えないけど?」

「ふっ……、あいつも来ると思うぜ?」


私たちは竜さんが来るまで待つことにした。


「あ……あの、ぼく……」


声がすると思って振り向いたら『私』がいた。


「は、はい。なんですか……?」

「わ……わた……」

「綿?」

「…………綿って、ふわふわして気持ちいいですよね!」

「……はい?」


『私』は顔を真っ赤にさせて部屋を飛び出ていった。

0も鈴も唖然としていた。


「あの子……、フワフワしたものが好きなの?」

「いや、普通くらいだったと思うが……。」


と、白けた空気にチャイムが鳴った。


「あ、竜が来たのね。」


鈴が玄関まで迎えに行った。

私と0は取り残された。


「………」

「………」


お互い沈黙が続いた。


「ねえ、ぜろ。」

「……なんだ?」

「行きの時言ったと思うけど私、空間魔術使えない。」

「帰りに教える。」


私は少し0に腹が立った。

この人はさっきも後にと言ってその場で教えてくれなかった。


「そういえばなんで同じ体のようなものなのに私とウラルの私の体を戻そうとするの?」

「今のお前はウラルの人間のようなもんだ。ウラルの人間は魔力を持たない。だから今お前は魔術を使えない。魔術が使いたくないなら話は別だがな。」

「ならなんでその話を今話すの!?行く前に話して私が了承してから行くとか考えないの?」

「お前なら頷くだろ。飛鳥と長年一緒にいたんだ。」


私はそれで今まで溜まったいた怒りが爆発した。


「だから私はこっちの私と違うって言ったでしょ!」

「……うるさいやつだ。違う世界の同じ人間なんだ。考えは似たようなものだろ。」

「……お前、こっちの私にも同じこと思ってるの?」

「フッ……思っているわけないだろ。お前以外に思えるやつなんていない。」


こいつに対してものすごく怒っているが、今の私の体じゃ返り討ちになってしまう。

私は今の自分の無力さに涙が出てくる。


「どうした?魔術は使えず剣もない、頼りの精霊……今は式神だな。まあそいつらは俺に攻撃してこないように飛鳥が言いつけてある。そんな状態のお前が俺にどう攻撃する?俺は剣はないが武術がある。同じ丸腰でも体得しているものでこうも差が出るんだな。」

「……それでも私はお前に一発入れることくらいはできる。」

「ならこいよ。」


私が一歩踏み出した瞬間


「やめてください。」


「飛鳥」が0の前に立っていた。


「骸亜さんにはぼくが攻撃させません。どうしても闘いたいなら、ぼくを倒してからにしてください。」


「飛鳥」は闘う気だった。

0をかばう「私」を見た時、私は自分の体が「飛鳥」の体だと改めて気づく。

もしこのまま私が0に返り討ちになって怪我したら、その後痛みを背負うのは「飛鳥」なんだ。


「なんか飛鳥すごい叫んでたみたいだけどどうしたの?」


そこに鈴が竜さんと神を連れて入ってきた。

竜さんと神はそこに0……骸亜がいるのを見て驚いていた。


「何でもない。こいつが体が元に戻る嬉しさのあまり発狂していただけだ。」

「そうなんだ……。」


鈴が引いた目で私を見てくる。


「鈴、誤解なの!0が勝手についた嘘なの。」


……と言いたかったが、話がややこしくなるためこのままにした。


「……飛鳥。」


0が呼ぶ。

私はこいつにどう一発入れようか考えながら0に近づく。

0は私の頭に手をのせ、


「さっきは言い過ぎた。確かにお前の言うとおり、同じヤツらでも考えは違うかもな。……俺みたいに。」

「う……うん?」


最後に0が言った言葉が聞こえなかったが、私の中の0に対する怒りは治まっていた。


「おい、骸亜。」


神が0のところに来ていた。


「お前死んだんじゃなかったのか?どうしてそっちの飛鳥と同じ世界の人間ってことになってる。」


骸亜に質問する神の顔は、昼間見たふざけている人物と別人に見えた。


「……まあ全員揃ったから言ってもいいか。」


みんなが0に注目し、0が話し出す。


「俺の本名は『骸亜』だ。だが、ウラルの氷冷骸亜でもある。そして俺の生まれはクロスであり、ウラルでもある。」


みんなの頭に「?」が浮かんでいた。


今回で異世界編終わらせるつもりでしたのに、グダグダと続いて終われませんでした……。


最後、ギャグみたくなりましたが、ギャグではありません。

ちゃんと0も自分も真剣です。


次回いよいよクライマックス!

みなさん、ハンカチの用意は……いらないかな?



水星 たいが 雷牙らいが

中学三年生


竜の妹と弟で雷牙の方が兄。

2人共ウラルの飛鳥と親友である。

よく竜にいたずらをする。

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