新たな始まり
「うう…緊張するよぉ。」
ぼくは魔術科四年の教室の前に立っていた。
自己紹介しておきますとぼくの名前は飛鳥といい、一人称は「ぼく」ですが、ちゃんとした女の子です。
ぼくはグランズ冒険者学校の剣士科から魔術科に転籍し、今日が魔術科の生徒としてはじめての登校となります。
「え~、では入ってきて下さい。」
その言葉でぼくは扉を開ける。
そこに広がる光景は…
「みんながぼくを見ている…。」
みんながこちらを見て、恥ずかしかった。
そんな中から
「やっほ~、飛鳥っち~!」
という声が聞こえてきたので辺りを見回すと、案の定そこにいてくれた。
「鈴さん!」
セミロングの茶色の髪の毛、すれ違えば誰もが振り返りそうなきれいな顔。
間違いない、ぼくが二年の時の野外実習で一緒の班になった鈴さんだった。
誤解しないと思うが一応言っておく、鈴さんはぼくと同じ年である。
ただ、その実習の時ぼくに足を引っ張ってしまったにもかかわらずそれを何度もフォローしてくれたことで尊敬の意味を込めてさん付けで呼んでいる。
しかしその前からも「鈴さん」と呼んでいたのだが……。
「剣士科はどうしたの?」
「あ、剣士科をやめてこちらに来たんです。」
「ふーん、どうして?」
「剣士科はあまりぼくには向いていなかったみたいですから…。」
「それで楽そうな魔術科に?」
「ち、違います!魔術科の担任の先生に言われたんです。『魔力が高いから』と。」
「へえ、あの人が…。まあここで出会ったのも何かの縁だ。よろしく、飛鳥っち。」
「はい、よろしくお願いします!」
「そういえば……」
「飛鳥さん。」
鈴さんが話を進めようとすると、先生が制止してきた。
「まだ自己紹介をしてないですよね?」
……すっかり忘れてました。
何かいい職業があったら、提案しても結構です。
登場人物紹介は次回します。