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クロスワールド  作者: 氷冷 飛鳥
第二章
16/64

戦いの末に

「『冷気よ、敵を凍てつかせ! アイス!』」


氷の呪文でグランを凍てつかせようとしたが、前と同じで魔術を素手で受け止める。

やはり最上級の魔術を魔法に変換したものでなければいけないのだろうか。

…やってみるしかない。


「『浄化された汚れなき冷気よ、敵を凍てつかせ、天へ召せよ! ライトロードフリーズ!』」


術はグランに命中し、グランが凍りついていく。


「くっ…。おのれ!」

「飛鳥、今のうちに俺とも融合しておけ。そっちのほうが勝率が上がる。」


グランが動けないうちにルナが私に話しかけてくる。


「飛鳥ちゃん、私もずっと思っていました。グランおじいさまが今動けないからお願い。」


サンも私の口を使って話しかけてきた。

私もうすうすそう思っていたが、ルナを私に憑依させる暇がなかった。


「わかりました。グランさんが動き出す前にはじめましょう。……『契約者マスター飛鳥が命じます。ルナ、我に力を貸して我に秘められた能力を引き出してください。』」


ルナを憑依させる。

これで数的には精霊二人分の力を得ている。

そのためグランを倒すことができるはずだ。

もし一人一人がグランと同じくらいの力があればだが。


「……」


グランはルナが憑依しているときに完全に凍ってしまった。


「チャンスと思っていいの?」

「…多分な。」


私は魔法を剣にこめる。


「『クロスリング』」


剣の刃の周りに黒と白のリングが出現する。

さらにどの技で攻撃すれば確実に倒せるか考えていたときにふと思った。




これ、もしかすると氷ごとグランも砕けるんじゃない?




…そんなはずはないだろう。

精霊は死なない………………………………………多分。


「おい、早くしたほうがいいぞ。」


ルナが声をかけてくる。


「う、うん。早くしないとね。」

「…もしかして飛鳥ちゃん、切ると氷ごとグランおじいさまも砕けると思っているのですか?」

「………。」


正答すぎて言葉もでない。


「あ、正解だったの…。」

「大丈夫だ飛鳥、今グランのじいさんは今氷の中に閉じ込められて身動きが取れないだけだ。つまり氷を斬れば氷が割れて動けるようになるが、動けないから急所を突いてじいさんを倒してやろうということだ。…ってわかったか?」


実際のところ先ほど私が岩の中に閉じ込められていたようなことを思えばいいのだろうか?

とにかく私はグランに打ち込む技を考えていた。

…これはどうだろうか?


「『閃滅闇光円斬せんめつあんこうえんざん!』」


最大の威力を出すことができる私の一番の得意技。

その技をグランに浴びせる。

クロスリングの効果もあり、グランにはけっこう大きなダメージを与えることができるだろう。


氷が壊れてグランの体が空気に触れた。

動けるようになるくらいになったくらいでグランの体が倒れた。


そのまま倒れた状態で動かない。

融合を解除して倒れている二人を近くへと運ぶ。


「まさかあのじいさんを倒しちまったか。」

「けどそれまで普通に行動していたグランがなんで凍らされただけで負けるんだろう?」

「それはですね飛鳥ちゃん。」


黒との会話にサンが割り込んできた。


「グランおじいさまは精霊最年長、ご老人ですから。飛鳥ちゃん、ご老人に寒さは死に直結する危険なことなのですよ。」

やっぱり精霊も死ぬのか…。

しかし、琴葉もグランもこの状況だと契約するという約束が果たせない。

「『傷ついた体を癒せ キュア!!』」


回復魔術を三人にかける。

しかし下級の回復魔術なのでだれもすぐに目を覚まさない。




しばらく待っていると、符養が目を覚ました。


「……あれ?…飛鳥、グランは?」

「倒したよ。サンとルナと一緒に。」


そう言って符養の後ろを指さす。

符養はその方向を向き、倒れているグランを見て驚いた。


「…飛鳥、本当にすごい。」

「倒したって言っても私だけの力じゃないし、偶然弱点をつけただけだし…。」

「ああ、弱点をつけなかったら飛鳥は負けていた。」

「でも必要なのは過程ではなく結果です。『もし』というのはないんですよ。」


サンがフォローしてくれた。


「あれ?グランは?」


琴葉が目を覚ました。

琴葉は自分の後ろにいるグランを探していて、サンとルナを見つけると


「あれ!?なんでここに精霊サンと精霊ルナがいるの?ここグランの洞窟じゃ…」

「正真正銘グランの洞窟だ。俺らは飛鳥に喚ばれてここに来ただけだ。」


琴葉の顔をグランに向けながらルナが答えた。

琴葉は混乱してしまい、今ならどんな子供じみた嘘でも疑いなく信じてしまいそうな状態だった。


「………って飛鳥、あなたルナとサンを召喚することができたの!?」


ようやく気づいたようだった。


「何で早く言ってくれないのよぉ!」

「だ…だって話したらややこしくなりそうだし…。できれば気づかれずに終わらせれたらな、と考えていたくらいで。」

「すごいことなんだよ!精霊と契約できる人なんてごく稀にしかないんだから。その中でもルナとサンは契約できた人が一人もいないと言われるほどなんだから。」


サンとルナってそんなにすごい精霊だったのか…。

自分のことに関してはあまり話してくれなかったし、私も知りたいとは思っていなかったから少し驚きだった。


「精霊サン、精霊ルナ!私と契約を…」

「こ〜と〜は〜さ〜ん?」

「は…はい。」

「ルナとサンとは契約させないよ?もし無理にするなら私が許さないから。」

「もちろんです…。」


琴葉がおとなしくなったのを待っていたかのようにグランが起き上がった。

そしてなぜか私を孫を見るように見てきた。


「………」

「ぐ…グラン、約束です。私があなたを倒したので琴葉さんと契約してください。」

「いいだろう。しかし儂は儂を倒したものとしか契約はしない。…契約者マスターがしろと言わない限りはな。」


つまり、私と契約しないと琴葉とは契約しないということなのだろうか?

しかし、私も契約すれば戦闘時にグランの力を使用することができるようになる。


「わかりました。では契約しましょう。」


私はグランに手のひらを向ける。


「『精霊グラン、汝を契約者マスター飛鳥契約せよ。』」

「承知した。」


グランが手のひらを合わせる。

すると、周りに魔法陣ができて、すぐ消えた。


「これで契約は完了した。」

「では、これからよろしくね。」

「……」


目をそらし、黙ってしまった。


「じゃ…じゃあ次は琴葉さんとの契約ね。」

「いいだろう。」



琴葉も私と同じようにグランとの契約を始める。

そして同じように契約が終了した。


「これでお主との約束は完了したな。」

「ええ、よろしく。」

「グラン、ありがとうね。あなた私達のことあまり好んでいないように見えていたから。」

「貴様等は今でも儂の中では招かれざる客だ。」

グランが「もう帰れ」という素振りをしたので帰ることにする。

しかし、ルナとサンを元の場所に移そうとしたときに


「すまん、グランの爺さんに話があるからまだ帰すのは待ってくれ。」

「では飛鳥ちゃん、私達は先に行きましょう。」

「サンは?」

「私はルナが帰れる状態なのを飛鳥ちゃんに伝える役目ですから。」




飛鳥達が帰っていった後で、ルナとグランが話をしていた。


「どうだった?」

「ああ、貴様等の力を借りなければ儂に勝てないとはな。」

「なら伝えておくよ。けど爺さん、そんなこと言ったらあいつに嫌われるぞ?」

「別によい。姫のためだ。」


姫…その言葉は聞かせてはいけない。

その存在は精霊だけの秘密だから。




「飛鳥ちゃん、ルナから伝言です。」


グランの洞窟の出口付近でルナがグランとの会話を終えたようだった。


「なんて?」

「グランお爺さまが『精霊の力を借りなければ勝てないとはな』と言っていたようですよ。」


その内容を聞いて、私は最近の戦闘を思い返す。

確かに最近の私はルナやサンの力を借りていた。


「だからまずは私やルナに一人で勝てるくらいに強くなってほしいらしいです。」


サンが続けた。


「ですから…帰ってすぐに私と戦いましょう。」

「…本当?」

「そうですね…今回は符養さんの修行も兼ねて二対一で戦いましょうか。」

「…飛鳥、頑張ろ。」


符養もやる気だった。

だが、サン相手に二対一ででも勝てる気がしない。


「…『ルナ、サン、元の場所に戻れ!』」

「あっ、ちょ…。」


サンとルナを強制帰還させる。

二人とも「いいのかな?」というような顔をした。



だが、家に帰った時にサンが笑顔で家の前に立っていた。

そして修行後に符養とも一対一の修行をしておけと笑顔で命令された。


どうせ明日にはブツブツ文句を言う人ができるはずだ。

あの人は鎮めるのが難しそうだな…。








今回でグラン編終了です


今回は飛鳥の精霊憑依モードを説明します


憑依モード


飛鳥が精霊の力を自身が使用できるようにした状態。

この状態の時、憑依させた精霊によって性格が変わる。

しかし、精霊を複数憑依させた時組み合わせによっては通常の性格になるときもある。

例をあげると、今回のようにサンとルナという対になる属性の精霊を憑依させたときになる。

ちなみに符養戦での複数憑依での飛鳥は怒りモードが発動していたため例外。

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