そして次の日・・・
次の日、ぼくはいつも通り学校へ向かった。
昨日のことは学校の他の人物には話されていないようで、知っているのは先生と鈴さん、ゼロ、ツヴァイだけである。
学校についたぼくはこのあいだまでの方向とは別の方向の教室に向かった。
そこには、
「あ、おっはよう~!飛鳥っち~。」
教室の扉を開くと鈴さん獲物を捕捉した魔物のようにぼくに向かってきて抱き付いた。
「お…おはようございます。鈴さん。」
「……む?」
鈴さんがぼくから手を放す。
「飛鳥っち、前に戻ってる。」
鈴さんに言われた通り、ぼくの口調は前のように戻っていた。
昨日、家に帰ってから知らないうちに鈴さんを呼び捨てにし、普通に接していたことに気付いたぼくは恥ずかしくて家中をのたうち回っていた。
今のぼくは昨日の反動みたいなものである。
「折角昨日飛鳥っちが私に普通に接してきてくれるようになったなって喜んだのにこれじゃあ逆戻りだよ。」
「…すみません。」
鈴さんがため息をつく。
「いい?飛鳥っち、私とあなたは友達。そんな他人行儀なしゃべり方はしてほしくないの。もっと本音で語り合おうよ。」
「……はい。」
再びため息をつく。
「それだよそれ。少しづつでいいから変えていこよ。言われたらちゃんと意識しなきゃ。」
「…う……うん…。」
恥ずかしがりながら返答するとまた鈴さんが抱き付いてきた。
「ああもう、飛鳥っちは可愛いなあ!」
「ちょ、ちょっとり…鈴、やめてく…やめてよ。」
「そう、その調子だよ、飛鳥っち。」
こうして、私は鈴によって変わっていくこととなったのだった。
同日夜、某所
ここはある場所の小さな部屋である。
そこに少女が一人座っている。
年齢は飛鳥達と同じ位である。
少女は誰かを待っているようだ。
するとどこからか声が聞こえてきた。
「私はあの判決には納得しない。貴様はどう思う?」
「……私はただ依頼された人間を殺すだけ。誰がどうなろうと構わない。」
声の主はニヤリと笑い、続けた。
「貴様も『裁きを下す者』の人間だろ?同じ『裁きを下す者』しかもトップを殺したというケースがあったようだな。」
「……殺す『相手』が誰だろうと関係ない。どんな強者でも私はどんな手を使ってでも殺す。」
「頼もしい。今回の『標的』は三名。飛鳥、鈴、0というヤツらだ。」
そう言うと少女の前に三人の絵が現れる。
「……この間の裁判で無罪になった人達。」
「そうだ。ヤツらを始末しろ。今回の任務はそれだ。」
少女は何も言わなかった。
迷っていたのかもしれない。
しかし誰にもそんなことはわからない。
わかるのは彼女だけである。
「…了解した。」
「健闘を祈るぞ、符養。」
声が聞こえなくなる。
符養と呼ばれた少女はまだ三人の絵を眺めていた。
小さな部屋にただ一人符養は立っていた。
健闘を祈る…か。
「……私はなぜ人を殺さなければいけないの?」
符養は今心の内に押さえていた不安をつぶやいた。
「私は…あのときからどうしてこうなってしまったの?」
最後に符養はそうつぶやき、そして部屋から消えた。
今回で第一部は終了です。
しかし話はまだまだ序章ですかね?
自分も投稿を怠らないように頑張ります!
今回は「裁きを下す者」について説明しておきます
裁きを下す者
政府に仕えて町の悪を取り締まる機関。
主に警察のような仕事や裁判をする。
しかし符養のように上から暗殺を依頼される者も存在する。