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キュベルス~人類滅亡とたたかう者たちの笑うしかないデス・ループ~  作者: 泊波佳壱


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第5話  ~世界線を把握せよ~

2116年 秋  マシンルーム



※※※ 作者・注 ※※※

 ここから先は、タイムマシンや世界線といった考え方を語り合っている描写が続きます。

「そういうごちゃごちゃした話はパスで」と言う方は、この第5話を飛ばして、次の第6話に進んで頂いても、一応、意味が通じるようにしております。

 もう少しお付き合いいただいて、面倒になってきたら「第5話の残りはパス」というパターンもおすすめです。

※※※ 作者・注  おわり ※※※


 しげ爺が、いつもの口調で言う、


「タイムマシーンについて、理解してもらわなきゃならんポイントが幾つかある」


「では、私が説明しましょう」と廣庭博士が話し始める。




「と、説明すると言い切った直後ですが、その前に、先ほど滝君が言ってくれた、パラドクスの例を知っているだけ上げてみてくれますか?」


「そ、そうですね、例えば自分が過去の自分や自分の親や先祖などを殺してしまえば、自分自身が消えてなくなるという、離れた時間や世界に影響を与える話しとか」


「それはよく、親殺しのパラドクスとかいわれるな」と、しげ爺。


「いなくなる自分が、なぜ親を殺せるのか? ストーリーによっては、自分の直系を殺そうとすると、見えざる神の力で、それは阻止される。なんてのもありましたねぇ」と廣庭博士。


 実はSFオタクを自認してきた自分としては本物のタイムマシンを目の前に、その生みの親の博士とこういう会話ができているなんて、そんなこの瞬間が有難すぎて、いや実は理解の度合いがどうなのか恥ずかしくは有りながらも、とにかくここは、急ぎ真実を知りたい衝動が勝っていると正当化してしまおう、ついつい熱くなりながら次を話し始める。


「タイムマシンで移動した先で、過去や未来の自分に遭遇すると、物質・反物質の対消滅みたいに両方いなくなってしまうとか、話しによってはこの世界自体がブラックホールに飲まれるとか、新たなビッグバンのような事になるとか、とにかく大異変で世界が終わってしまうなんてのも有りますね」


 しげ爺が、なぜか満足げに頷いている。


 すぐさま、廣庭博士が答えてくれる。


「『時の流れの排除則』なんて言っている表現もありましたね。

 私もタイムマシンを作り始めた最初の頃は、謎が多くわからない中で研究をはじめましたからね、いろいろ調べる中で、そういうものもたくさん読んだり調べたりしたものです。

 この『排除則』が有れば、先ほどの親殺しのパラドクスが回避できるだろうと、きっと誰かが考えたんですね。別の「時」に移動するだけでも膨大なエネルギーなのに、それ以上の「力」を生み出し得るとか、さすがに無理があるんです。

 それに、親でなくても友達や近所の人とかに影響を与えただけでも、まわりまわって自分が死んじゃうかもしれない。そう考えれば、それらすべてを『排除則』が対象にすることになり、それは結局、時間旅行自体を拒否する力になる。

 だから『排除即』自体が実はタイムトラベルを否定しちゃってるんです。

 あ、「過去の自分の両親が結婚しないと、今ここにいる自分が消えてしまうとか、写真の自分の腕が消え始めている」と言うのは、(あ、この写真とかのパーツをタイムマーカーなんて呼ぶ人もいますね)、ドラマとしてはとってもスタイリッシュで大好きですが、私がもしそういうマシンを作るとしたら銀河一つ丸々燃やし尽くすほどのエネルギーが必要な計算になっちゃいました。だから、ここにあるこれは、そういうものではないです」


「なるほど、そこまでは安心というか納得できます。では、このタイムマシンでは?」


 さあ、いよいよ本質が知れる、前のめりに質問したのだが、ある意味で大きく予想外の言葉が返ってきた。


「滝君、ほんまに君は賢いお人ですねぇ。

 私はタイムマシンを作りました、これで人類を救おうとしてます。

 心のうちでは「これ以外の方式のタイムマシンなんて有り得ない」と本気で思ってます、思ってますが、それでもそこんとこはおさめて「私のこのマシンの場合の性質はこうなんです」と、私なりにつつましく申し上げているんですけどね、議会の連中ときたら、理解されはらしませんのや。

 今の君の質問してくれたその形こそが、もっとも心地よいです、ほんまにありがとう」


なんだか、お礼まで言われてしまった。


「そんな、恐縮です。正直言うと、今マジで目の前に居られる神様から、いろいろ教えてもらってる気分です。なるべく正確な理解をしたいので、続きをお願いします」


 俺がそう言い終えるタイミングで、管理卓の方でガタンと何かの音がした。が、廣庭博士はそれに気づかなかった体で口を開いた。


「では、話しを先に進めましょ。

 多次元宇宙とかパラレルワールドといった考え方が、素粒子論などではずっと以前から盛んですよね、私たちがいま生きて暮らしているこの世界、宇宙全体と言うか、そういうその一つの世界が、実際には同時に並行していくつも(理論的には無限に)存在していて、たいていは鏡のように同じだが、とくに同じでなくても何ら問題が無い。と、そう考えているんです。 この概念が……」


 とそこで博士は一呼吸開けてこちらをじっと見てくれたので、


「『世界線』ですね!」と答える。


「そう、そのとおり。タイムマシンでどこにジャンプするのだとしても、複数ある世界線のうちのたった一つに影響を与えられるだけなんです」


 広庭博士の話しは、いよいよ核心に入ってきた。




「タイムマシンにおいて

 (少なくとも私が生み出した、現実に今此処に有るタイムマシンにおいて)

1.「世界線」を正しく理解すれば、パラドックスや問題になる矛盾は無い。

これについて、実例で話しができますか?」


「はい、やってみます。

 世界線Aの太郎が、未来でも過去でもジャンプするときは、実際には世界線Bという異なる世界線にジャンプするので、Bには、Aの太郎とBの太郎が同時に存在することになり、同じときAではもともとAにいた太郎はBに出かけて行って留守になっている。

 よく似ているがA,Bそれぞれの世界線の別人の太郎なので、二人の間でどんな事件が起こっても、何の矛盾も生じない」


「そう、そのとおりです

 では、次

2.ジャンプ元とジャンプ先で、通信や映像の共有が可能。

  (関係者は二つの世界線の詳細情報を持つこととなる。)」


「すごい」


「そうなんですーっ

 では、次

3.ジャンプ先から戻る時、2の機能により迷子にならず安全・確実に帰還できる。」


 俺は話しを遮らないように、大きくうなづいて先を促した。


「4.新しいジャンプは、未来や過去どの時にも、また地球上のどの場所にも行けます。

  私はこれをオープンジャンプ(フリージャンプ)と名付けました。

 この時、

  A.標準時間軸から、ジャンプにより新たな世界線が枝分かれ派生する。

  B.無限にある世界線の中の一つが偶然に選び取られる。

 さて、実際にはこれはどちらだったと思います?」


「いや、俺、私には、それがどちらか分かりません。」


「実際にこのマシンを稼働してわかったのは、A,Bの2通りの仮説が持たれた中で、実証からAではなくBと判明したんです。

 それはつまり、普通の人間は一本の世界線を出ることができないけれど、世界線はいつも無数に存在して、それぞれに無数の同様な人がいる、というだけの事なんですねぇ」


「なるほど、それはイメージできます」


「はい、それでは

5.既知の世界線への、未来や過去のどの時点にも、どの場所にも行ける。

  私はこれをクローズドジャンプ(ターゲットジャンプ)と名付けました。」


「ふと今考えたんですが……」


「いいですよ、言ってみてください」


「ジャンプした元の時間と場所に戻るのは、元の世界線を指定してのクローズドジャンプですね」


「そう、そのとおりです。戻りは絶えずクローズド、でないとよく似た自分がいる別の世界線に行ってしまい、自分の留守にした元の場所に二度とたどり着くことはできない、時の迷子ってやつですなぁ」


「戻る時は、きっとジャンプ直後とか、ちょっと後とかを指定して戻すんですよね?」


「そう思いはるよね。そこがね、今のところは違うんです。

 このマシンではジャンプのために大量の電気エネルギーを使いますのんで、現時点ではこちらから送り出して、こちらから引き戻す仕組みにしてあるんです。

 チャージの関係で、14日に一度しか、これが利用できません」


「それはつまり、どこにどう干渉してもいいけれど、我々の時間的な制限は、変わらず存在してるってことですね。」


「なるほど、それ、理解できました。ここではいったんその事は置いて、もしも自走式のマシンが作れたとしたら、飛ぼうと思えばどこにでも? じゃないな、いつにでも、戻せるんですよね?」


「そう、なりますなぁ」


「もしも、元居た世界線の過去に戻ってきたら、同じ世界線の同じ人が重複して存在する、それってパラドックスになりませんか?」


「そこまで考えが回っているとは、滝はん、流石ですねぇ。

 答えは、世界線というものの本質ともいえるので、本当に良い質問です。

 世界線ってやつは、一つ一つの事象が起こるたびに、その瞬間瞬間分岐して複数の世界線に分かれているようなんです。無限×無限に絶えず増え続けているような、ただ幸い誰かが観測しなければ問題にされないというだけで。

 話しを進めますね、実は今観測している世界線の過去と言う場合、その場合の過去は次の2通りで異なる意味を持ちます。


A.こちらが最初に飛び込んだ後、今観測している時間よりは前に二人目が飛び込む場合

 この場合は、観測を開始してから新たに飛び込むまでの事象は確定していて、そこから先の多分岐する中の一つの世界線を作っていくことになります。


B.こちらが最初に飛び込むよりも前の時間に、他の人が飛び込む場合

 この場合は、観測開始前の無数にある世界線しか不明なので、最初の一人がジャンプした世界線を選び出すことができません。


 つまり観測開始以前は掴んでいないってことですわ。

 これを私は、未来は不確実だといったニュアンスの「決定論の破れ」が、タイムマシンで世界線を捕まえても起こることから、「決定論のメタ破れ」と読んでいます。

 どうです? 伝わりました?」


「『決定論のメタ破れ』により、「観測以前の、準備していなかった過去は変えられない」ともいえるし、「もしそうやって過去を変えた場合は、先に飛び込んでいた少し未来を破棄してゼロスタートする事になる」と言うことですね。」


「そう、まさにそとおり」


「あと余談ですが、オープンでもクローズドでも、共通する事として、ジャンプのさせ方も説明しますね。

 ターゲット日時の天体としての地球の位置(公転・自転・地軸の傾きなど)と、その中の到達したい目標地点を宇宙の絶対座標として厳密に計算、同様にジャンプ元の今現在の絶対座標との相対座標ベクトルを計算して、座標変位とする。それと時間変位の二つの要素を使ってジャンプを掛ける。

 ここからわかってほしいのは、どうしても地上ぴったりに送り届けるのは難しいし危険なのだ、どうしてもある程度上空の空気と入れ替える形で送り届けるので、落下に耐えうる機体が必要で、今見ているような姿になっているんだね。」


「なるほどです、謎がだいたい解けました」




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