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キュベルス~人類滅亡とたたかう者たちの笑うしかないデス・ループ~  作者: 泊波佳壱
第2章 日本の新たなる夜明け

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第4話  ~隊員たちの会議風景~

2117年 1月21日(木) ⇨ 時間跳躍9 ⇨ 2025年1月21日(火) ⇨ 8日後

⇨ 2025年 1月29日(水)  潜伏開始から8日後


人類滅亡まで あと580日   時間跳躍可能回数 あと41回


二つの大きなミッションをやり遂げたキュベルスメンバーたち。


 2117年、4件のターゲットを設定して、そのうちの2つのミッションに成功した。

 

 未来の総理大臣、鷹宮氏と、木村教授のご先祖さんを味方につけた。

 

 メンバー6名で、メインホールに集合して、これからパーティーを開催しようとしている。




 2階で最も賃料の高い1世帯分のマンション201号全体を、メンバー共有のスペースとしている。


 この201号は4LDKと言われる間取りで、LDKはリビング・ダイニング・キッチンの頭文字だが、大きなソファーの並ぶリビング、食卓が置かれるダイニング、調理スペースはアイランドキッチン、ここでは、これらがすべて仕切りなくつながって28畳となっている。


 この空間をメンバーたちはメインホールと呼んで主な活動場所としている。

 4LDKの4は、他に4つの個室が有ることを意味していて、8畳が2つ6畳が2つだ。このうちの大きな2つを第一会議室、第二会議室などと呼んでいるが、さほど使われることは無い。他2部屋については、特に用途も決められていない。


 ここには、当然それ以外に、トイレ、バスなどが有るわけだが、トイレは2つ、バスに関しては、浴室と独立したシャワーブース、その前に脱衣所とは別に6畳分の作業スペースが取られている。

 さらに2つのウォークインクローゼットなどもあり、ゆったりしたつくりになっている。



 

 さて、そのメインホールで、2つのミッションをクリアしたパーティーの準備が始まっている。


 料理を主に作っているのは、滝隊長と水嶋副隊長だ。



 隊員たちが2025年に来て、8日が経っているが、なんとか服装の問題は解決したものの、食事の問題はなかなか解決しなかった。

 それはなぜか?


 隊員たちは、この時代の食材が、あまりにも未来とは違うことに驚いた。

 

 まず、彼らがいつも口にしていたホウボウ、ハタハタ、シイラといった魚が、どこを探しても売られていない。近い印象の魚は多少あっても鮮度の良いものがまったく手に入らないのだ。


 未来では、巨大漁業プラントで大量養殖されていたのだが、調べてみると、この時代にはそういう設備が無い。


 魚料理を断念する事になる。肉は未来人にとっては驚くほど多く売られているので、それらをどう料理するかを、現代の料理情報などを調べながら検討する事になる。


 さらに、彼らを驚かせたのが野菜の違いだ。品種の違いもだが、大きさがまちまちだし、なぜか高価なものほど大量に土がついていたり、ダメージのあるものばかりしか売られていない。


 未来の野菜は全て水耕プラントで作られているが、この時代には主に地面に植えているという事実に思い当たり、感心するばかりだ。



 最初は当番制で、それぞれ食事を作ることに決めたが、いくつもの問題が発生した。


 村橋りんさんは、外交官の父を持ち、どの国で暮らしていた時も必ず何人かの家政婦さんやお手伝いさん達がいた暮らしということで、自分で料理などしたことが無いため、すぐにローテーションから外れることになった。

 

 近藤清明と永倉詩織さんが担当で、買ってきた野菜をきざんでいた時のことだ。

 中から虫が出てきて大騒ぎになった。二人とも、台所の全ての食材を放棄してその場を離れている。


 近藤君は、リビングの反対端まで逃げ出して、清明は壁際に座り込んで、

「こんなの食材じゃない、無理、気持ち悪すぎ」と震えていた。


 永倉さんは、自衛官で野外で何日か自然の中で生き延びる訓練もしているとの事だが、「とにかく虫だけは無理」と、この時ばかりは、堂々とした体躯に似合わず、部屋の外に通じるドアまで素早く移動し、身をかがめて震えていた。


 この時、この二人を助けたのは、高杉風香さんだ。


 普段あまり活発ではない彼女だが、この時は、

「え、虫がいたの?」と元気な声を上げてすぐにキッチンに近づき、ひょいとキャベツについていた青虫? をつまみ上げて、目の前にもってきてじっくり観察している。


 その場にいた皆が、口々になにか言っているが、彼女の耳には入っていない様子だ。




 そんな事があって、近藤君と永倉さんも料理は「ごめんなさい」と担当を外れることになった。


 なぜ高杉さんは料理担当になっていないのか?

 それには、そのすぐ翌日に発生する新たな事件が関係している。


 翌日の料理担当になった高杉さんは、

「昆虫食の自販機が有ったよ~、これなら美味しいみたい」と、イナゴやコオロギと書かれた銀色の包みを皆の食卓に配り始めた。


 連日のショックで、近藤君など、本気でブルブルとふるえていたが、本人は気にもせずに袋を開けて、

「ほら、大丈夫だって」と、パリパリと食べて見せ始める。


 そんなことが有って、本人はいたって平気な顔で「私も料理担当するよ」と言ってくれるものの、他からの反対の声で担当を外れることとなった。



 そんなわけで、料理を主に作っているのは、滝隊長と水嶋副隊長だ。




「なんでかなー、結構忙しいんだけどなー」とかぼやきながら、パーティーの為の料理を滝は用意している。

「作らない人には、味の文句とかは言わせないようにしましょう」と、微妙なにやけ顔を作って水嶋さんが料理の手を動かしている。


 これは余談だが、高杉さんは2110の大災害発生より前の子供の頃には、フトアゴヒゲトカゲとかという名前のトカゲなど飼っていたらしく、虫や小動物とかをエサとして与えていたらしい。


 ここでもそういう物を飼うと言い出さないか、隊員たちは内心、皆怖がっている。




 隊長、副隊長がかなりの手間をかけて用意した、温野菜のサラダと、スープ、そしてメインの肉料理が、テーブルにきれいに並べられた。


 盛り付けや、配膳は流石に皆が手伝っている。みると、いつのまにか高杉さんの前にだけ、みずみずしい生野菜のサラダが置かれている。


 この時は、皆、生活のバタバタの方に多少の不安を抱えているわりには、ミッション自体が順調に進んでいることに単純に喜んでいた。


 未来の総理はここに呼ぶことはできないとしても、木村教授のご先祖さんは、ここに招待してもよいのではないか? そういった事も話し合われた。



 あと、財布に小銭がどんどん増えて収まりきらなくなる現象を、多くのメンバーが抱えていた。未来ではほぼ全ての買い物が電子決済で、現金を手にすること自体がほとんどない。


 ミッションの話しそっちのけで、なるべく小銭を使って支払う方法についての勉強会になった。


 ここでも歴女を自認する水嶋さんが活躍した。

「5円玉1枚と1円玉3枚をセットにして、50円玉1枚と10円玉3枚をセットにします。このセットを幾つか作ってみて、でどう使うかというと……」と力説している。


「なんで、1円4枚、10円4枚じゃないの?」との村橋さんの質問に、


「そうね、素早く小銭無くしたければその組み合わせがベストなんだけど、4の時は5円出したり9の時は10円出したりして、さすがにそこは1円増えてもいいかな、としておく方が、セットを作る手間と確率論からすると、お勧めみたいだよ。


 あ、あとそれは、「ピッタリ出す」というだけじゃなくお釣りがどうなるかまで考える訓練にもなるんだって」と説明を続けている。


「ふぅーん」と言っていても、絶対このまま小銭を増やし続けそうだなという人もいる。


 その後はいつの間にか、皆がテーブルの上に、持っている小銭を山のように積み上げて、「昭和64年探して~」とか、水嶋さんのコイン・コレクションに協力するイベントに変わっていた。


 皆の小銭から、各年号のコインをひととおり探し終えた頃合いで、やっと本来の会議が始まった。


 明日はいよいよ3つめのミッションの開始だ。誰がどう対処するかなど細かな打合せをして、その後、タイムマシンに全員が乗り込んで「お祈りタイム」を実施し、その場で解散となった。



 今回の9回目のジャンプの後で、手放しで皆が笑顔でいられた、これが最後のタイミングとなる事を、この時の隊員たちは、誰も知らない。



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― 新着の感想 ―
高杉さんなんだか親近感感じます。 お話してみたいです。
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