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キュベルス~人類滅亡とたたかう者たちの笑うしかないデス・ループ~  作者: 泊波佳壱


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第25話(1章-25)~帰還した龍馬が言う~

2117年 1月7日(木)~  マシンルームの12人

 人類滅亡まで あと602日   時間跳躍可能回数 あと42回


 ついに、全メンバー12人が揃った。早速の会議だ。


「今までの時間(タイム)跳躍(ジャンプ)8回は、結果的にすべて、2週間の時間をかけている中で、向こうの有効な活動時間は一日とか二日とか、いわゆる「ショートスティ」すぎると思うんです。


 これだと、時間(タイム)跳躍(ジャンプ)の機会が何度あっても、ターゲットとなる時代に与えられる関与が少なすぎます。


 なので、最初は考えてなかったんですが、新しい世界線に対して、ターゲットの時間よりも、例えば1年前に飛んで、「ロングスティ」しながらいろいろと現地に関係性を構築したいと考えているんです」


「良い考えじゃな」「ほうほう、それはいい」「ですねぇ」と、博士たちの反応は想像以上に良い。




 代表してしげ爺が話してくれる。


「実はな、先ほどの映像の通り、武器を持って威圧しても、結果は思わしくない。

 一時的に要望は聞かせられても、ドンドン対立と、より激しい戦いといった泥沼な展開しか見えてこんのじゃ。

  じゃから、そういう対処が必要だと、ちょうどわしらも考えていた所じゃ。

 ひとまず、こちらの案は置いておくから、どんどん話してみてくれ」




「まさに同感です、なので新しい攻撃手段を考えました」


「? いや、武力での解決は……」


「まあ、聞いてください。

 ITのキーワードでFIFOやFILOといったのが有りますが、それを参考に、その新しい攻撃にはFHLAと名付けたいと思います。

 Fast Help Last Attackです」


「だから、力では……」と言いかけるしげ爺に、


「ふぉっふぉっ、滝君らしいな」と木村教授が笑い始める。


「はい、つまり、歴史的な重要局面で、こちらの希望に沿ってほしいキーマンに対して、事前にその人やその人物の家族の危機を救ったり、助けたり、そういう恩をしっかり売っておきます。


 そうすると、後になって、こちらの要望を(しかも世界を救うという大義名分のあることですので)、断ることができないというこういう攻撃です。


 まあ、攻撃というか恩を売るだけの作戦ですがね。


 ま、親しくなっちゃえって事です」


 先ほどから笑っている木村教授が補足してくれる。


「まあ、タイムマシンで未来が見えるから助けられたと、信じてもらえて一石二鳥だな」


「はい、そこもあります」


「それなら、小さな事よりも、しっかり命を救ってあげたりとか、大きいのがいいですなぁ」と廣庭博士も。


 それに対して、誰かが発言する。


「本当にそうでしょうか? タイムパラドックスとか、殺すのもですけど、死ぬはずの人を生かすのも、それって、大丈夫なんですか?」


「なるほどな、世界線はこちらが関与するたびに、新たな分岐を生む。

 その先は以前とは違ってしまいますから、その先は、よめなくは成りますなぁ」と、博士の言葉。


 実際には、予測が難しいだけで、大した問題は無い事だと俺にはわかっているが、何となく不安だといった空気が流れ始める。




 と、高杉さんが、ガタッと大きな音を立てて立ち上がった。


「世の中いろいろ、面白くなって何が問題なの? 数十億人救うんだよ! 1人や2人先に救うのなんて、むしろ「チョット少なすぎてゴメンネ」って感じでしょ!」


 笑いが起こる。確かにそうだ、何の問題もない。




「まあ、その攻撃が有効な人もおるだろう、相当数な。

 じゃが、なかには、そういう力よりも、普通にちゃんと話してくれれば理解して協力したいと、自然に思ってくれる人もおるじゃろうな。

 そして一部には、自分の意思が曲げられることに嫌悪感を抱いたり、それで反発して逆効果となる人もおるかもしれん」


「はい、充分に有り得ます。

 その人物を味方につけるのに、いつ誰が何をするのが最適か、検討も試行錯誤も必要かもしれません。

 ですが、ショートスティの試行錯誤よりは、ずっと理想的です。」


「ここにいる我々の、誰が、いつ、誰に対応するか、って事ですなぁ」とは博士の談。




「口をはさんでいいですか?」と、これは日下さん。


「もちろんじゃ」とのしげ爺の即答に、すぐに日下さんが質問を続ける。


「その、ロングスティの意味を、念のため詳しく、この場に共有願えますか? 滝さん」


「はい、例えばこの次の2117年1月21日の時間(タイム)跳躍(ジャンプ)9で、

 現地の2025年の1月21日に飛んだとします。それから、その世界線で、隊員が、

 1年後の2026年1月20日まで活動したとしましょう。


 その、現地の一年後の隊員を、こちらからは2117年2月4日の時間(タイム)跳躍(ジャンプ)10で引き戻します。


 これだと、我々に残された時間は14日しか減らない間に、現地で1年間の活動が可能です。」


「その時、何かデメリットは?」


「金なら心配ないぞ、それに現地企業の持ちビルなど、いろいろ細工も可能じゃ」


「おお、それは話が速いです。だとしたら後は、浦島効果というか、現地隊員だけ1年近く、多く歳をとる点だけですね」との俺の説明に対して、水嶋さんがすかさず言う。


「それは実は、終末へのタイムリミットからすると、より多くの時間生きてられますね」


「あ、それはお得だ。それから比べたら、今までは、どちらの隊員も少し損してますね」との日下さんの発言。


 本人は笑いを誘ったつもりだろうが、実際に笑う者も、多少嫌な顔をする者もいた。




 この話しはそろそろいいだろうと、俺は、ここで水嶋さんの方を向いた。


 目が有った瞬間、水嶋さんが、先ほどから握っていたデータをみんなのスマートグラズに送り込む。


「現地調査で、とても面白いものを見つけました」と水嶋さんの言葉に続いて、清明が、


「教授、ぜひ詳しいご説明をお願いします」と、詰め寄るような口調。


 みなのスマートグラズには、「2027年版 日本のAI開発のトップエンジニア」というタイトルのリストが映っている。そのリストの上から三人目に、「木村明治(あきはる)」という人物名が並んでいる。


「ん、なにがどうした? ああ? あぁ、わたしのひい爺さんだな」


 複数の笑い声が上がる。


「やはりそうでしたか」と、俺としてはガッツポーズしたくなりながら、話す。


「だがな、何の面識もないぞ」と教授が言ったので、これには、先ほど以上に多くの笑いが起こる。「教授そこはそうですって誰だって……」と、思わず突っ込みを入れたくなるが、ご本人も言った後でハッとされているようなので、余計な発言は控えた。


「我々が現地に潜伏するだけではなく、現地での強い味方を、準備できる可能性も有るということです」


「そうじゃな、木村さんだけじゃなく、他のみんなのルーツもあらためて調査した方が良いようじゃの」




「今から、2週間後の次の時間跳躍までに、いろいろ調査検討が必要です。

 その事前準備と、本番の詳細計画、つまり、

 2027年のターゲット・デイに、その時の現地のどんな立場の偉い人に、どう動いてもらってAI憲章を国連とかに持ち込んで合意形成に進めてもらうのか、そのあらかたのストーリーを、まず、事前に立て切っていないといけません。


 それと、それに先立つしばらく前の時間軸で、事前準備として、我々の内の誰が、現地の誰にいつ何を働きかけておくのか。この両面から攻めていきます。


 そのための調査検討と、実際の事前準備そのものに、新たな第二隊でロングスティを実施したいです。」




「厳選して効率良くという動き方ですかね?」と清明が言う。


「そこはむしろ、可能な限りいろいろな手を打っておくのが吉ですかいなぁ」と博士。


「はい、私としては、特に一度目は、可能な限り多くの手を打っておきたいです。

 そうすれば、その世界線の先で、より安全な対応が可能となります。

 が、実はそれよりも、どんなに多くの手を打っておいても、実際には足りなくて、違う世界線でまたゼロからトライするということも有り得ます。

 そのためにも、検討時点で可能性として残ったものは、なるべく実施しておきたいところです」


「そうじゃな、そのためには、膨大な現地情報を継続して調べる必要が有るな」と、しげ爺が応じる。


「そうですなぁ、ほんなら、その件に関しては、複数体の超小型ドローンを用意させてもらいます。それ積んでいってもらいたいですなぁ」と博士からの提案。


 その言葉に、タイムマシンチームの研究員3名が、拳を前に出して、コツンと重ねてみせてくれた。


「ほう、ほう、それでは、今からAIチームでは、当時のネット上から、必要情報をかき集められるbotや、そのbot制御と収集データの精査用のAIをチューンしておこうか」との木村教授の言葉に、日下さんと高杉さんが、腕を重ね合って、こちらもやる気満々のアピール。清明が、あ、僕も、と遅れて混ざろうとする姿に、どこからか笑いが起こる。


「あ、それと、これは第一隊、第二隊ともなんですが、提案が有ります。

 現地ミッション遂行中は、「セーブポイント」というか「お祈りタイム」というか、一定期間ごとに、メンバー全員が揃って、機内・コックピットの席につき、ベルトして、数秒間でいいからじっとしている、と、そうすると、その後何かが有っても、可能な限り後ろのセーブポイントから、こちらに引き戻してもらえると」


「それはいいですねぇ、早速2機ともに、設定人数全員がベルトつけて、それで移動していない時だけ、StandByのマーカーが灯る仕組みをつけておきますよ」との博士の言葉に、しげ爺も「うんうん」と合意の合図だ。




 ここで、しげ爺が立ち上がって話し始めた。

「まだまだ話すことも有ると思うが、ひとまず食事にしよう、

 本当のたたかいはこれからだが、今はひとまず、ちょっとした祝いの席だ!」





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