第24話(1章-24)~新たなる跳躍に向けて~
2117年 1月7日(木)~ 時間跳躍8 第二隊を救出
2027年11月27日(土) 奥多摩の山中
人類滅亡まで あと602日 時間跳躍可能回数 あと42回
我々はついに、8回目のタイムマシン稼働日、2117年1月7日(木)を迎えた。
今から2週間前、第二隊の活躍で、第一隊の救出が成功した。
が、その直後、第二隊が想定外に一瞬で壊滅するという事態に、それから2週間、皆がずっとその事実をそれぞれ受け止め切れずにこの日を待っていた。
ターゲットとなる現地時間はもう一度、2027年11月27日。
マシンルーム中央のタイムマシン管制スペース。常設のモニターが10台以上並んでいる。
真ん中のモニターの一つに第二隊のコックピットと外からの映像が映し出されている。
その周りを、8人のメンバーが取り囲んでいる。
皆が見やすい様に、正面の空間上にも立体投影にして、同じものを投影してある。
今回の時間跳躍は、タイミングを間違うと危険と言う事で、廣庭博士から任された大久保研究員が、コンソールの前に座っている。
第二隊のタイムマシン内のコックピットの様子を、特に何人かが凝視している。
画面の中では、第一隊のメンバーが前回の時間跳躍で、向こうの画面から消えた。
それとほぼ前後して、外で作業を行っていた水嶋隊員と近藤隊員が、第二隊のマシンの中に戻る。
4人の隊員は、それぞれ、立ったり座ったり、外から戻ってきて、一度は自分の席に座ったりと、せわしなく動いている。
その中で、滝隊長が、「次の目的地、奥多摩に向けて、出発!」と言い、それに応じて水嶋隊員が操縦桿を操作して離陸し始める。
そこから少し巻き戻して、滝隊長が発言を始める前の2秒間。このタイミングが、全員が席について、ただしマシンは動いていない、安全な唯一のタイミングだ。
画面を見ている8人、その中央にいる大久保さんが、滝隊長が背筋を伸ばした(発言直前の)タイミングで、素早くレバーを引いた。
120本のタキオン・クロノードの先端から出た明るい光が、球体の中央に集まり、瞬間虹の様な波動を作った、マシンはスクリーンから消えた。と同時に、明るい光の中心に出現した。
※※ ここまでは 村橋目線 ※※
※※ 以降、俺 滝 龍馬目線に戻る ※※
真っ白な光に包まれながらも、
「次の目的地、奥多……」と、突然の事に言葉を途切れさせる。
目が慣れてくると、そこは120のトゲトゲの内側、そう、元のマシンルームに戻っている。
「ちょっと、突然すぎて危なく発進しちゃうところだった」と、水嶋さんも驚いた声を上げる。
「何か緊急の事があって、予定変更になったんだな。
通信で細かい相談をする暇もなかったということは、そういうことだろう。
まっ、せっかく帰還したんだ。まずはみんな外に出てみよう」
と、俺はみんなに声を掛けた。
声をかけてみたものの、皆すぐには動かないので、すぐに自分からハッチを開けて外に出る。
降り立った瞬間に、ひとりの女の子が、がっしりと抱き着いてきた。
状況が呑み込めないまま、えっと、エビくれた子、村橋さんだったな、とか思ってると、その子は、すぐ後に降りて来た水嶋さんに向きなおって、
「せんぱーい、よかったですぅ」と泣き出しそうな声で、そちらに思いっきり抱き着いて、今度は水嶋さんにしっかりハグし返されて、どうやら本当に泣き出しそうな勢いだ。
他にも、皆が集まってきている。
「先輩たち、2回死んじゃって、もう、もう私……」さきほどの村橋さんが、涙声で話している言葉は、どうやらそういう事らしい。
くぐもっているのと、いつのまにか、女性が4人塊りになって、その中にいる関係で正確には聞き取れなかった。
永倉さんが、手を伸ばして、その村橋さんの頭をなでている。
管制スペースのモニターが並ぶ卓のあたりで、こちらを笑顔で見守っている、しげ爺、木村教授、廣庭博士の方に向かって、俺は、速足で歩いていく。
「おかえり、龍馬ようやったのぉ」としげ爺、
「ほぉっ、ほお、さすが」と木村教授、
無言で、右手を握って人差し指を立て、上空に向けて振りながら、こちらを指さして、ウンウンと頷いてくれる廣庭博士。
「早速なんですが、いろいろとご相談したいことが、このまま会議させてもらうことはできますか?」
一刻も早く、いろいろと今回の成果を次に繋ぎたいと気が焦る。
「一休みしてからでいいぞ」
「一日くらい休んでも」など、など声を掛けてくれるが、背後から
「たった数時間でしたから、こちらはすぐにでも大丈夫です」と水嶋さんが声を掛けてくれる。
さきほどまで塊になってなかったか? と思ったが、どうやら、歩き始めた俺に気が付いて、すぐにみんなゾロゾロと、こちにに来てくれたようだ。
どこかしら、クスクスと声が聞こえる。
「龍馬さん、それじゃあ、紹介しますよ」と清明が話し始める。
一緒に第二隊として時間跳躍を終えた近藤清明、その隣には、かまぼこをくれた女性、高杉風香さんがいて、その二人が手を刺して紹介してくれている、一人の女性に目が留まる。
永倉さんと同じくらい背が高い、175cmくらいは有るだろうか。だが、とてもすらっとして体育会系と言うよりは明らかに研究員といった感じの女性だ。
高杉さんが紹介してくれる、
「こちらは我々AIチームの研究員の代表で先発隊の隊長、日下まことさんです」
俺はすぐさま、両手を出して、
「お会いできてよかった、怪我とかないですか? 滝 龍馬です」
と、握手を求める。
「ありがとう、ございます」
「いえ、こちらこそ、これからいろいろ宜しくお願いします」
こちらが強く握った握手に対して、握り返した手は、あくまで力を込めず、そっと、受け流すように添えられている。
それでいて、すこし吊り上がった目元とその眼球から、強い意志、迫力が伝わってくる。
ゆっくり話したかったが、すぐに横から声がかかる。
水嶋さんを中心に、一塊になっている三人、向かって左が村橋さんで、右側が初対面、
「こちら、タイムマシンチームから先発隊に参加していた、大久保美波流さん。
シミュレーターでは、最強! ゲーマーですからね」
「えっ、ちょっとやめてよ、その紹介~」
「なるほどー、勝てそうにないですね、滝 龍馬です。よろしく」と、握手をしようとしたが、それより先に、永倉さんに「滝さん」と、声を掛けられる。
振り向きざま俺は、
「永倉さん、今回本当に助かりました」と声をかけると、ビシッと綺麗に敬礼して、隣に立っている男性を紹介してくれる。
「こちら、池野翔太さん。もと消防レスキュー隊で、人命救助のプロです!」
「おお、それは心強い、滝 龍馬です。よろしく」と、手を差し出すと、思いっきり強く握り返してくれた。
「いえ、今回はおもいっきりこちらが助けられました。ほんっと~~に、ありがとうございます」と、満面の笑みだ。
「どうやらこのまま、すぐにでも会議始められそうじゃな」
その、しげ爺の声で、全員がそのまま、会議卓の周りを囲むこととなった。
まずは、我々第二隊が、なぜ急に呼び戻されたのか、衛星軌道からのレーザー攻撃で破壊される映像が見せられ、説明を受けた。
奥多摩のキャンプ場で破壊されるタイムマシン2台の映像も、だ。
自分たち自身は、まったく未体験な事で、驚くしかない、が、異様なほど歓待された先ほどの帰還の瞬間が、すこし腑に落ちる。
「実は、第一隊の事で考えていたんですが、今の映像を拝見すると、結果、第一隊も第二隊もそれぞれ2回死んでるんですね。
僕らとしては数時間の行軍だったので、実感わかないんですが、今から話したい、幾つかの提案が有って、その中の1つ目として、ちょうどいいです」
「ほう、言ってみてくれ」としげ爺が応じてくれる。
「今までの時間跳躍8回は、結果的にすべて、2週間の時間をかけている中で、向こうの有効な活動時間は一日とか二日とか、いわゆる「ショートスティ」すぎると思うんです。
これだと、時間跳躍の機会が何度あっても、ターゲットとなる時代に与えられる関与が少なすぎます。
なので、最初は考えてなかったんですが、新しい世界線に対して、ターゲットの時間よりもより少し前に飛んで、「ロングスティ」しながらいろいろと現地に関係性を構築したいと考えるんです」
こんな感じで、「いくつかの提案」をはじめた。




