第23話(1章-23)~時間跳躍8をすぐにでも~(村橋りん目線)
2116年12月24日(木) 時間跳躍7で第一隊を救出
2117年 1月7日(木) 時間跳躍8で第二隊を救出予定
2027年11月27日(土)~ 国会議事堂前~奥多摩の山中
人類滅亡まで あと602日 時間跳躍可能回数 あと43回
我々はついに、7回目のタイムマシン稼働日、2116年12月24日(木)を迎えた。
プラン「クリスマス・イブ」の実行開始だ。
ターゲットとなる現地時間は2027年11月27日。
もう一度、現地の状況を整理しておく。
第一隊が、こちらを5回目2116年11月26日に出発し、2027年11月26日に到着している。その日のうちに拉致され、その後12月8日には全員死亡という流れになるが、その手前の2027年11月27日。
第二隊が、こちらを6回目2116年12月10日に出発し、2027年11月27日に到着して、その日のうちに、前日拉致された第一隊を奪還した瞬間。
プランの1つ目の目的は、我々が、7回目の時間跳躍を使って、奪還直後の第一隊を、こちらに引き戻す作戦。
プランの2つ目の目的は、その日のうちに、残った第二隊に対して、情報提供。
その内容は、3日後の危機を知らせ、対処を促し8回目時間跳躍を待ってもらう事。
こちらの時間、2116年12月24日13:00。
現地の時間、2027年11月27日 12:10。
第二隊のコックピット、滝隊員と通信がつながっている。
外には、水嶋隊員と近藤隊員が出て、少し前に外した右アームのレーザー砲を、交換用に前に移動させ始める。
向かって左隣に戻された第一隊のマシンに、縄を解かれた第一隊の3名が乗り込み始める。
この間も、返還された第一隊のコックピットに向けて、第二隊の滝隊長から、ずっと通信を呼び掛けている。
第一隊のマシンと通信がつながり、「こちらスタンバイ完了」との声が聞こえた。
しげ爺が、廣庭博士の肩に、ポンと手を乗せた。
「博士は、タイムマシン、始動!」と声を上げた。
私は、操作パネルと、スクリーンを素早く見比べる。
スクリーンに映る第一隊のタイムマシンに、しっかり照準があたっている事を確認しながら、レバーを引く。
球状に配置された120のタキオン・クロノードの先端から放射された明るい光が、波動となって収束する中、スクリーン上のマシンは消え、こちらの光の中に、マシンが現れた。
帰還、成功です!
いつのまにか重さんが、タキオン通信機のマイクをしっかり握りしめて、
「よくやってくれた、ミッション前半は見事にクリアだ!」と大声で第二隊にメッセージを送っている。
第一隊のタイムマシンの後ろのハッチがひらき、帰り着いた第一隊メンバーが転げるように出てくる。
気が付いたら、走り出していた。
大久保美波流ちゃんに駆け寄って、おもいっきり抱きしめた。美波流ちゃんは私と同じタイムマシンチームだ。
隣を見ると、高橋風香さんが、同じAIチームの日下まことさんとハグをしている。
そのすぐ横では、一番最後に出て来た池野翔太さんが、教授と博士に囲まれて、なんとなくハグを回避している姿が、ある意味微笑ましい。
この場の皆が、歓喜に沸いて声を掛け合っている間にも、第二隊の行動がスクリーンの中では展開している。
レーザー砲を受け渡した、水嶋、近藤の両名が機内にもどり、席に着いた。
奥多摩のキャンプ場に二週間いさせてもらう交渉を終え、第二隊のマシンもその場から発信する。
戻ってきた、第一隊の隊員たちについて、詳細を記しておく。
第一隊隊長 AIチームのトップ研究員 日下まことさん
第一隊副隊長 私と同じタイムマシンチームの研究員 大久保美波流さん
第一隊隊員 消防レスキュー隊から支援の 池野翔太さん
みんな無事だ、本当に良かった。
つい数時間前までモニターには死んでいた彼らが映っていた。その彼らがこうして無事に戻ってきた、そして、今この瞬間は、助けに行った第二隊も無事に元気でいる。
第一隊の3人は、2回死んで、今日ここに生きて戻っている。
が、彼ら自身には、直接その記憶はない。そうなる前に時間は改変されているからだ。
彼らの体感では旅立ってから、2日間。ただ、それでも、過去の時代で捕らえられ、1日をそれぞれ慣れない場所に拘留されていた。そこから戻されてまたすぐに時間跳躍、それだけでも、長い時間と感じる事だろう。
プラン「クリスマス・イブ」、その一つ目の目的は達成された。
次は二つ目の目的に向けて、行動だが、ここから3日、まだ充分に時間あると、この場のみんなは考えていた。
ひきつづき、誰もが目の前の第一隊の帰還を手放しで喜んでいた。
と、その次の瞬間、ツーッ……、
第二隊との通信が突如、途絶えた。向こうからもその直前まで、談笑の声が聞こえていたはずだが……。
何人かが、コンソールに駆け戻り、つながっている世界線の映像を巻き戻した。
そこで、プラン「クリスマス・イブ」、その二つ目の目的は、全く果たされることなく無駄になったことを、この場の皆が知ることになる。
キャンプ場に向けて発信したすぐの第二隊のタイムマシンが、空からのレーザー攻撃で、消滅した。
まだ3日後まで時間が有ったのではなかったの?
おもわず、その映像を見返して悲鳴を上げてしまった。
「滝さん、さな子先輩、それと近藤なにがしと強そうだった永倉さん? 今度は、貴方たちが? なんで? どうして?」
喜びの瞬間から、一気に最悪な気持ちになった。
今回はこちらが渡したレーザー砲ではない、渡してすぐに、エネルギーの装填方法もわからずに使えるはずがないのだ。
あきらかに、この時代に既に有るレーザー兵器からの攻撃、そう人工衛星軌道からのものだ。
調べると、画面のずいぶん奥にわずかだが、すぐ後に、もう一本同様のレーザー照射が見られる。こちらは、第二隊が渡したレーザー砲が破壊されたのだと考えられる。
我々がこの時代に持ち込んだレーザー兵器が、全て消し去られたわけだ。
映像を見ていた重さんと博士が、私の気持ちとは裏腹に、落ち着いた口調で話し合う声が耳に入ってくる。
「これは、やはり前回のも今回のも、超大国の都合ってやつですなぁ」
「明らかに、衛星軌道からのレーザー攻撃じゃな」
「日本が、自国と同様のレーザー兵器を持つのを嫌ったんですなぁ」
「ああ、これではっきりしたのじゃ。じゃが龍馬なら救ってくれるじゃろう、大丈夫じゃ」
「へ? 何を言ってるの、その龍馬さんは、今レーザーで跡形もなく消えたじゃない……」
ちょっと前まで気持ちが沈んでいたのは私だけじゃない、博士たちもみんな暗い表情をしていた。
だけど、今は明らかに違う、ここにいるみんなは、何も諦めていない。
そうだ、第一隊は2度死んで、それでもちゃんと戻ってきた。
龍馬さんたちも、次に、元気な所をねらって帰ってきてもらえばいいんだ。
ずいぶん気持ちが軽くなった。
私も沈んでないで、いろいろ調べて、出来る準備をして、その時を待たなきゃ。
それからの2週間、第一隊として出ていた3人は、自分たちの経験して、そして最後には経験せずに済んだ未来の映像を見たが、誰一人辞めたいとは思っていないようだった。
それよりも、急に筋トレや、銃の訓練をしたり、いろんな調べものをしたりと、人が変わった様だった。
そして、年が明けて2117年1月7日(木)、私たちはこれから、第二隊救出作戦を開始する。




