第21話(1章-21)~時間跳躍7 第一隊救出~
2116年12月10日(木) 14:10~ 時間跳躍6の起点からの経過
2116年12月24日(木) 12:00~ 時間跳躍7 (引き戻し)準備中
2027年11月27日(土) 12:10~ 国会議事堂前
人類滅亡まで あと616日 時間跳躍可能回数 あと43回
海野坂氏の声が聞こえてくる。
正面のテントからの拡声器でなんだか少し怒った様な彼の声が響く。
「そちらの要望をすべて受け入れる事となった」と、言葉の端々に、「ありがたく思え」感がみなぎっている感じだ。
「今から1時間以内に、そちらの要求どおり、マシンも、3人のメンバーも、全てこの場に到着する。
そちらからは、レーザー砲の技術は、どういった形で提供されるのか?」
ま、そこは気になるだろうな、
「今、我々のこのマシンには2門のレーザー砲が装備されている、その一つを外すので、交換の形で提供しよう」
「わかった、ではそれで」
「こちらも準備を始めるので、マシンと隊員3人、よろしく頼む。
確実に交換が終わったら、レーザーに必要なエネルギーなどの追加の情報も渡す」
「わかった、そこは信頼する」
マイクをミュートして、独り言とも説明ともいえる言葉を隊員に聞かせる。
「渡しても、エネルギー源がすぐに用意できるわけではない、まっ、無事にこれでなんとかなるかな」
俺はひとまず、深く、シートに腰を下ろした。
水嶋さんが席を離れて、こちらに近づいてきた、
「ね、これ見て」とこちらのスマートグラズに、どうやらこの時代の技術者たちのリストらしいものを送ってくる。
「ほら、ここ」
「おお、ほんとだ、これは……」
永倉さんの問い詰める声!
「この重大な任務中に、いちゃつかないでください」
「え、滝なんかと、有り得ないし」とは水嶋さん、
「呼び捨て、それも、なんか? は、ひどくないか?」
「ほら、まだ続けてる」といっている永倉さんの方を向くと、口調とは裏腹に、ニマニマしている。清明まで、
「なんだかな~」と言い出す始末なので、
「みんな、これ見てくれ。水嶋さんがこれを見つけてくれたんだ」と、俺はフロントスクリーンの真ん中に、今貰った名簿の問題個所にマーカーで色をつけて、映し出した。
「帰ったら、本人問い詰めないとね」と、誰かが声に出す。
そんな話をしていると、大型トラックの姿が見え、エンジン音も聞こえてきた。
どうやら受け渡しに向けて、いろいろな機材などを運び込み始めたようだ。
我々としては、先ほどの件は後回しにして、また、目の前の監視や、追加のデータ収集など、それぞれの作業に戻った。
特に大きなトラブルもなく、時間は過ぎていく。
永倉さんは、周りの監視と、外に出るメンバーに危険が無いか、引き続き警戒してもらう。
水嶋さんには、引き続き情報収集をお願いして、清明と俺で、外に出て作業を始める。
右ウェポンアームに取り付けられたレーザー砲の取り外し作業だ。
清明が、両手を挙げてレンチでボルトを回しながら、こちらをチラチラ見ながら声をかける。
「まっ、実際渡しちゃうのもったいないというか心配は有りますけど、メンバーの命にはかえられませんもんね。特にあの映像見ちゃったら」
あの、頭蓋骨を開かれている映像を思い出しているのは明らかだ。
「だな、同感だよ」と答えながら、俺も手早くボルトを緩める。
遠くからずっとこちらを無言で伺っている大勢の現地の、おそらくは自衛隊員や警官隊員たちの目を気にしながらも、まあ、この会話ならいいだろうと感じているが、同じように感じてこの会話をしているなら、清明もなかなかに交渉の何たるかがわかっているかもしれない。
やがて作業は進み、外したレーザー砲を、機体の元あったまっすぐ下の地面に置いて、俺たちは中に戻った。
大型トレーラーが、幅広の荷台を引いて、我々のタイムマシンを運んできた。
荷台が斜めになり、乗せられていたマシンが、道路に下ろされる。
すぐに、第一隊の隊員3人も、この場に現れた。
ただ、後ろ手に手錠を掛けられ、腕や腰を縛られ繋がれている姿は、見てるだけでちょっとイラついてしまいそうだ。
今度は、本人の申し出で、水嶋さんと近藤清明、2人がレーザー砲を機体の下から前ら運び、それと交換するように、隊員3名が縄を解かれ、先ほど降ろされたタイムマシンに向かった。
このやり取りの一部始終を、未来のマシンルームと通信をつないでいる。ただ時間は、我々は飛んできた時間ではない、その14日先、2116年12月24日(木)、7回目(残り44回)の時間跳躍が可能になったタイミングの未来だ。
こちらのコックピットからは、返還されたコックピットにもずっと通信を呼び掛けている。
第一隊の隊員が乗り込んで椅子に座ったのであろう、向こうのマシンと通信がつながり、「こちらスタンバイ完了」との声が聞こえた。
その瞬間、第一隊の、今まさに3人が乗り込んだマシンは真っ白な明るい光に包まれ、時間跳躍により2116年の未来に引き戻されていった。
2116年とつながっているタキオン通信機から、しげ爺の声がきこえる。
「よくやってくれた、ミッション前半は見事にクリアだ!」そう言ってくれる声の向こうに、帰り着いた第一隊メンバーと、それを迎える人たちの声が聞こえる。
レーザー砲を受け渡した、水嶋、近藤の両名もこちらの機内にもどり、席に着いた。
ひとまずは、今回ミッションの前半は終了だ。
見ると、現地の自衛官たちと思われる人物たちが、先ほどの大きなトレーラーの幅広な台車に、こちらのレーザー砲を積み込んでいる。
我々はこれから、この世界線で4週間、居座って様々な調査や交渉を続けることとなる。
様々な情報提供をかねて、何度も会談を持つなどを目的に、しばらくこの時代に残りたい旨を伝えると、奥多摩のキャンプ場に、場所を提供してくれることとなった。
国会議事堂前にずっと居座っても、いろいろと都合が悪いのだろう。
早速、機体を浮上させ、指定された場所への移動を開始する。
東京都といっても、西に随分と飛行すると、山あいのエリアは、木々が茂っていたり畑が有ったりと、のどかな場所も多い。そんな風に流れていく景色を見ていると、
突然、世界は青白い光に包まれた。
全身に痛みが走った、こんな死が有るのか?
第一隊の帰還を喜び、喚起に沸いていたマシンルームで、急に第二隊との通信が途絶えた。
驚いたメンバーが、時間を巻き戻すと、そこに映った映像に全てのメンバーが言葉をうしなった。
それは、一瞬の事だった。はるか上空から真っすぐ叩き落すように、青白く閃いたレーザービームが、第二隊のタイムマシンを貫いた。
遠目に見ると、所々プラズマ放射の様な物をまといながら、青白い光の柱が、瞬間にして空間を切り裂きその場に出現した。
そして、もともとそこに有ったマシンを呑み込んだ。
マシンルームに、誰かの悲鳴が響いた。
青白い光の柱が消えた後には、何も残っていない。ただ、真下の地面がえぐれて黒く焦げているだけだ。
そのすぐ直後、遠い空の向こうに、もう一本同様の光の柱が立っている。
主役たちの、突然の死




