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キュベルス~人類滅亡とたたかう者たちの笑うしかないデス・ループ~  作者: 泊波佳壱


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第15話  ~会議の続く一日、ひとやすみ昼休み~

2116年12月8日 ランチタイム  マシンルーム

 ちょうど12時になっていることに気付いた誰かが「あ、昼だ」と、声を上げる。


 その声が終わるかどうかのタイミングで、文字にしてしまうと、


「フゥォ~ン」という字面になってしまうが、未来的な耳に優しい警告音? といった音が鳴り響く。




 その音を聞いて、皆が揃って、有る一方向をみる。


 この部屋に入ってきた扉よりもずっと左の方向だ。その視線の先を追って、そこに驚く光景を発見する。


 ここに入ってきた時に何もない長い通路だと思っていた部分は、まるで乳白色の半透明な壁になっている。向かって左端に、下にスライドした扉が見える。ちょうど外壁の扉だ。


 その位置に人影が現れる。すらっと背の高い女性だ。と見る間に、通常のカメラ映像だったそれは、レントゲン写真のような骨だけの白黒画像に変わる。


 一瞬ぎょっとするが、セキュリティー上のボディーチェック機能だと気づかされる。片足に長い金属棒? 実際に透けて見えているのではなく、壁一面の広大なスクリーンに、向こう側の様々なカメラ越しの映像が投影されている感じだ。


 とみている間に、また先ほどの通常映像に戻ったかと思うと、正面から、反対側面から、上部からと、様々な角度からの映像に切り替わっている。




 俺の知る中で最も厳重なのは、昔一度行ったことのある、自衛隊向けの航空機開発を請け負っている企業の建物だったが、それよりもここの方がはるかに厳重だな、などと思いながら眺めていると、その女性はもう、あの合言葉を聞かれた扉の前まで歩いてきている。


 格闘系のスポーツでもやっているのか、かなり体力も有りそうだ。


 下に沈み込む扉を超えて、入ってきた女性は、大きな四角い荷物を抱えていた。


 しげ爺が手を挙げて、

「永倉君、なんだか荷物まで運ばせて、すまなかった」と呼び掛ける。

「いえいえ、皆さんの昼食にお招きいただいて恐縮です」と、テーブルに置いた包みには、どうやら10人分程もの弁当が入っているようだ。


 さらにしげ爺が、水嶋さんと清明の方を向いて、

「村橋さんと、高杉さんを呼んでもらえんかのぅ」と声をかけている。


 その間にも永倉さんと目が合った俺は、切っ先の届く距離まで、互いの間合いを詰める……と言うのは冗談だが、挨拶のために歩み寄るのだが、なんだかスキのない眼光の鋭さに、ビリっと背筋が伸びる気がした。


 パッと半歩、右前にジャンプして驚かせてみようとするが、ほんの少しその女性の左の瞼がひらいた気がするが、それ以外は表情も変えず、眼球だけは的確にこちらを追っている。


「いゃー、たまるかぁ(びっくりした)。こんなに武術に長けた女性に出会えるとは、驚きです」と、大げさなくらいの笑顔で、右手を差し出して握手を求めてみる。


「あなたは?」と、きつめの声で永倉さんが質問してくる。


「おっと、名乗るのが遅くなりました。滝 龍馬、今日から此処のメンバーとなったばかりですが、どうかよろしくお願いします」


「あ、貴方が滝さんですか。技術者だと聞いて、もっとヒョロっとしてる方かと思いましたが、なかなか、何かスポーツでもやってましたか?」


「いえ、大したことはやっていません」その後、何をどう話そうかと一瞬考えている間に、廣庭博士から声がかかった。


「ほな、皆さんおそろいのようですし、ひとまずは昼食にいたしましょ。

 自己紹介とかは、それからということで」


「今日のお昼のお弁当は、重富博士のおごりとの事ですので、おいしくいただきましょう」とは木村教授の発言。


「いやいや、急に昨晩申し入れて、昼の準備をしてた人がいたら申し訳ないが、新たなメンバーが揃うこのタイミングで、どうしても皆さんに一言伝えたかったのじゃ。


 じゃがまぁ、まずは、ささ、みんな、どうか自由に食べ始めてくれ」


 各自のスマートグラズに、席順が示されている。誰が決めたのだろう? とは思いつつ、移動して、その席に着く。




 左右どちらも、まだ話した事の無い女性が座っている。


 明後日には過去に向けてのジャンプ、旅のスタートだ。限られた時間の中で一瞬でもはやく一通りの人物を紹介しようとのしげ爺あたりの配慮なのかもしれないと思い当たる。


 案の定、俺の隣に座った、二人の人物についての詳しい情報を知らせるべく、水嶋さんと清明と、廣庭博士からも木村教授からも、スマートグラズの端にメッセージがどんどん入ってくる。


 うわーっ、みんなまてまてーっ、こんな一度にメッセージくれたら、読んでるだけで、俺が一人、目を泳がせてて、まるで不審者みたいじゃないか?




 慌ててスマートグラズの画面に集中している間に、全員の前に、ビールやカクテル? この場に似つかわしくないと思ったが、よく見たらノンアルコールの缶が配られている。




 教授がしげ爺に向って何か話していると思ったら、立ち上がって皆に向き直り、

「ではこれから、キュベルス・プロジェクトのボスに挨拶をお願いしましょう」と小気味よく声を張り上げた。




 しげ爺が立ち上がり、話し始めた。


「この場の皆さんには、2110の後、それぞれに集まってもらい、本当に今までいろいろと苦労を掛けてきた。「なんとしても人類を救う」そのためとはいえ、わしの無理な期待や要望に良くここまで応じてもらえたものと心から感謝する。


 大切な仲間を失うところだったが、第二隊の新たな隊長を迎え、なんとか救い出せる方針も見えて来たようじゃ。


 いよいよここから、全てが本格的に始まることになる。どうかよろしくお願いしたい」


 一呼吸おいて、


「滅亡を回避して、人類の未来を、我々のこの手で取り戻すのじゃ。

 この最高のメンバーと、新たなスタートに……乾杯!」


「乾杯!」「かんぱい」……。




 右隣を見ると、弁当の蓋を開けた後、じーーーっと中をのぞいている。


 この状況で、悩みは「さあ、何から食べようか?」なのかな……と思うと口元が緩むが、その思案を邪魔しないように左隣を見ると、こちらの女性は、何から話したものか、明らかにこちらを向いて、複雑な表情を浮かべている。


 清明、そして木村教授からもらったこの女性のプロフィールを思い起こしてみる。


 高杉風香さんは俺より一つ歳上で、子供のころから数々のIT系のコンテストで優勝し、仕事ではいくつもの論文が話題になるなど、デキる技術者/研究者だ。


 今回のAIチームの研究でも、相当に重要な役割を果たしてきたに違いない。


 笑顔で自己紹介をするが、言うならば、まるでロボットのような、感情を押し殺し、感情を読ませないぞ、という固いガードの無表情、そういう印象の挨拶を返された。


 ふと見ると、左手の手のひら、小指の付け根のさらに下の方に、赤黒い点が無数に見える。ペンや鉛筆で、自ら突いたのだろうと推察される。無意識なのか? それとも……。


 教授からのメッセージで「とても優秀で、研究成果について「は」申し分ない」との内容が有ったが、今回この女性よりもはるか若手の清明が、次の隊員として選ばれていることに、なんとなく察した気持ちになった。


 内心、激しい感情が煮え立っているのだ。それでいて、それを悟られたくないという無表情の仮面。


 いくつかの可能性もあるが、激しいまでのプライド、自己顕示欲と、それを充分に満たせない場合の激しい苛立ち、そういうパターンだと推察した。


 俺としては、実はこういう時こそ、自分の活躍の場だと思ってしまう悪い癖をつい発動したくなる。「気に入った人には、輝いてもらわないと気が済まない」


 今回、この高杉さんとは初見だが、たった数人しかいない、この「人類を救う仲間」なのだ、それに実際に正面からたたかったら技術者としてのスキル、そのものでは、敵わないかもしれない。


「高杉さん、俺、ガキの頃、高杉さんの記事、何かで読んだ気がするんですよね、何かのコンテストの優勝者の紹介記事だったと思うんですけど。記憶するの苦手で、すぐ忘れちゃうんで、詳細覚えてなくてすごく失礼なんですけど、確かいくつものコンテストの優勝、総なめにしてましたよね?」


 見るからに、パッと表情が明るくなる、良かった見込みのポイントは外していないようだ。


「うーん、どれのことかなぁ?」


「ほら、迷うほどいろいろあるでしょ、えっと、一万桁レベルの素数を、より早くより多く求めるスピード競ってたやつとか?」


「ああ、そんなのもあったかも」


「でしょ、実は自分もそれ、挑戦したコンテストで、こっちは予選敗退だったのに、すげー人がいるもんだなと、感激したんだすよね」


 そんな話をしていると、水嶋さんから、メッセージが入る。


「なによあんた、(じじ)転がしかと思ったら、今度はナンパなの?」


 それに対しては、


「小さな世界を救ってます、後ほど」と曖昧な返事を返しておいた。


 スマートグラズでは、僅かな視線異動で文字も入力できるが、余りそれをしていると、対面で話している人には気づかれてしまう危険が大きい。




 会話の続きとして、現代のAIの分類などについて、認識のすり合わせなど、知的な会話で、軽く競い、適度に敬意を混ぜて話しをつないだ。


 その後、右隣りの村橋りんさんに、デザートを進呈して、今はもう食べられなくなったスイーツの話しなどで盛り上がった。


「好きだったこと、食べ物でも小説でも、ドラマでも……ありとあらゆるジャンルの大好きな物事が、人類が終わってしまったら、すべてなくなってしまう、それが耐えられないです」


 その点に関しては、マジに言葉にしてみた。


 村橋さんが、弁当の残りのエビを、俺の弁当箱に入れてくれた。


 それを見ていた、高杉さんが、自分のかまぼこを、俺の弁当箱に入れてくれた。


 このやり取りを見て、爺様たちが、そろってニマニマしている。


 なんだこれ?




 そんな感じで、昼休みの時間は過ぎて行った。




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― 新着の感想 ―
爺転がしからのやり取りで、一人でくすくすしてました。 このキャラのこの先を追いかけたくなります。
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