第10話 ~数々のデス・ループと対策(1)~
2116年12月8日 マシンルーム
俺は、会議メンバーそれぞれの顔と、眼鏡を通して空間に実像を結ぶ表を見ている。
回 ジャンプ元 タイプ ジャンプ先
1 2116/10/1(木) 第一回遠征 ⇨ Open 2027年10月1日 渋谷交差点へ
2 2116/10/15(木) 戻り ⇦ 2027年10月2日 渋谷交差点から
3 2116/10/29(木) 第二回遠征 ⇨ Open 2027年10月1日 お台場へ
4 2116/11/12(木) 戻り ⇦ 2027年10月5日 お台場から
5 2116/11/26(木) 第三回遠征 ⇨ Closed 2027年11月26日 国会議事堂前へ
ここでは、引き続き、しげ爺が説明をしてくれる。
「議会指導の元、実施された計5回分のジャンプじゃ。
詳しく説明するぞ。
念を押すと、2027年やその前後。温暖化が極めてひどくなり、都市部にまでクマや猪が降りてきたり、紅葉の赤は失われ、山々は茶色や黒いモミジが短い秋を汚す時代じゃ。
またAIが大きく一般化した時代じゃ。それよりも少し前の方が、より手を打てるのではと最初は我々も考えたが、この年あたりよりも前では、AIとはなんぞやと、大勢が知らない、まあそれまでもAIと呼ばれるものは有ったが、2022年に公開され2025年あたりに急に爆発的に広がったタイプをそれまでとは区別して「生成AI」と呼んだようじゃ。
世の誰もがAIを知ることとなったわけじゃな。
それと重なっての温暖化が身に染みる時期じゃ、この時に働きかけるのが、前にも後にもない唯一の好機だと考えておるわけじゃ」
「議員さんの中には、「金はいくらでも払うから、個人的に、そんな時代じゃなくバブルな時代に送り届けてくれ」っていわはるかたもいましたわなぁ」
「廣さん、その怒りはわしも一緒じゃ。とにかく、そういう個人的な要望は拒否しつつも、何とか2020年代の改変を目指してきたわけじゃが、それならどうしても人通りがなどと言う言葉に踊らされ第一回遠征は渋谷のスクランブル交差点に送り届けたわけじゃ。
何かの広告、何かの製品のプロモーションだろう、と何をどうやっても受け入れられん。
二週間、食料や他もろもろ無駄にして、その無駄を帳消しにするため、送り届けた翌日の時点から、こちらに引き戻したわけじゃ。
2週間分の記録は残っておるが、隊員たちは2日しか現地に居なかったので、マシンの食料もそれだけしか減っておらん状態で帰ってきた。
3回目のジャンプタイミングで、今度はお台場じゃ。
こんなの似たようなものだと思ったんじゃが、議会に押し切られてな。
結果はもっとひどかったな。「新しいアトラクションだろ、乗せてくれ」などと、大騒ぎになって、テレビやいろんなメディアも集まったが、こちらの意図とはまるで違ったのじゃ。
それでこの第二回遠征もジャンプ4のこちらの11/12に、向こうの5日時点から引き戻したのじゃ。
この時の隊員たちの「自分たちは、未来から救いに来た」という主張が、4日目にはメッセージとして強く印象付けられたハズだ。との言葉を評価して、同じ世界線にクローズドで飛び込むことにしたのじゃ。
それがジャンプ5、ほぼ2週間前の11/26(木)じゃな、飛び先も見た目にシンプルに揃うように2116/11/26 から 2027/11/26としたわけじゃ。
ここからは、実際の映像で見るのがはやいかな」
「では、私が流しますね」と、水嶋主席がジャンプ5の記録映像をグラスに届けてくれる。
現地時間:2027/11/26 13:00 元時間:2116/11/26 13:00
国会議事堂前の幅の広い道路、その上空10数メートルに突然出現したタイムマシン。
2か月近く前にお台場に出現していたUFOと同形のものと、既に政府の緊急対策室は、このような飛来を危惧し、用意していたようで、すぐに自衛隊・警察隊の合同組織に取り囲まれた。
隊長が呼びかけを行うが、
「まずは出てきて、姿を見せて話し合おう」
となり、ハッチを開けたところ、すぐに自衛隊員がなだれ込んで、全員が取り押さえられ、その場で身柄確保される様子が映っている。
「武器は所持していってないのですか?」と、思わず聞いてしまう。
「我々の意見としては、武器必須と唱えたのだが、「平和的な交渉に、平和国家日本に行くのに必要ない」との議会の猛反対で、この時は徒手空拳だ」
「基本的に、レーザーキャノンが2機、それと機関砲も一機、標準装備なんですがねぇ、議会指示で取り外して出発してますからねぇ」と博士がコメントをくれる。
議会、まったく邪魔にしかなっていないと、ここの面々が腹を立てているのがよくわかる。
「おかしいと感じるじゃろうが、どこかで現地警察官が言っていたな。「宇宙人なら国家規模の重要交渉案件だが、日本国民なら、我々の法の元で取り調べさせてもらう」とかなんとか」
「あ、ありましたね、探してみましょうか?」
「いや、それはいいかな、12/3を出してくれるか」
「はい、これです」
現地時間:2027/12/3 17:12 元時間:2116/12/3 17:12
どこかの研究機関、ダイヤモンドカッターで、がりがりと外装を削られ、バラバラにされるタイムマシン。
「こうなったら、そらもう、まったく修復不可能ですわいな、ほんまひどいことしおってからに」博士の怒りの声が響く。
ふたたびしげ爺、
「あと最悪が、今朝の映像だな」
現地時間:2027/12/8 9:15 元時間:2116/12/8 9:15
オペ室の手術台の上に寝かされている人物と、それを取り囲む複数の人影。タブレットに何か打ち込んだり写真を撮っている? という様子や、ベッドに寝かされているのは、今ならわかる、2117年のここの服装をした、第一隊のメンバーだ。
オペと言うより、様々にデータ取りをしているとおもったら、ドリルで乱暴に頭蓋骨に穴をあけ始めている。
見ているだけで、吐き気をもよおしそうだ。
「どこに人権が有るんだ? 狂っとるな」
「なんでこんなことしはるんでしょうねぇ」
「スマートグラスの影響とか? 本当に狂言じゃなく未来人だという証拠とか?」
「何にしても、こんなの、わたし、絶対許せません」
「龍馬、よう聞いてくれ。12/3や12/4に、取り調べと称して、隊員たちに何度も
本当は何処から来たのか? 未来からなら最新の技術や未来の重要事象を教えろ
といったような強制尋問的なことが行われている。
今日のようなことも、その時点である程度は予測できたのに、議会連中は何といったと思う?」
「なんと言ったんですか?」
「タイムマシンの機体は2体あるということは、1体は残っているんだろ! マシンが無いなら仕方がない、そいつらを見捨てて、新しい隊を編成して、ゼロからやり直してくれ」
と、こういうのじゃ。
それから4日間、まあ、いうなれば軽いクーデターだな」
「へ?」
「そうそう、木村さんが本気だからですなぁ」
「いやいや、廣さんこそ」
「まあ、とにかくここの部屋のみんなが完全命令無視で、「重富の命令しか今後は聞かん」と粘ってくれたおかげで、自由にさせてもらうということになったのが、昨日の事なんじゃよ」
「あれは、どう突いても自分らのメリットにならないと、ある意味このプロジェクトをあきらめた議員はんが多いんでっしゃろうなぁ」
「それでいい、ただ邪魔や妨害だけは注意しないといけないな」
「まさにそのとおりじゃ、さて、そういうわけで、今朝から、龍馬、お前にここに来てもらったわけじゃが、お前ならここはどうする?」
「そう聞いていただけるのなら……」思わず腰を乗り出して話しを始める、俺。




