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第25話「レンレンも先輩も、ご苦労さまでした」

「レンレンも先輩も、ご苦労さまでした」

 礼拝堂の地下を掘ってから三日後の夕方。素人強盗団は約束通り、りくの部屋で作戦会議を行っていた。

 ……と言っても会議の始まりは猫と女子高生の報告を座して聞くのみであり、男子中学生は何もする事がなかった。それゆえ彼は労いの言葉を口にしたのである。

「本当にアイツ、気持ちが悪かったのサ!」

 レンレンはそう言ってささくれ立った自分の気持ちを鎮めるように、ベッドの上で自分の前足を舐める。沖田おきたに近距離接触してしまった彼女は彼にさんざん撫で回される、猫界隈で言うところのモフられまくったのである。

 因みに陸の部屋は会議室でも何でもない。勉強机の前の椅子に陸、TV鑑賞用のソファに陽女ひめ、ベッドの上にレンレンという配置である。

「まあでも無事で良かったよ。あと収穫も大きいし」

 陸はそう言ってレンレンを宥めた。彼女の偵察行動は多大な犠牲を払ったが、得るモノも大きかったのである。

「そうなのだわサ?」

「うん。今まとめるね」

 訊ねる猫に彼は優しく微笑んで、手元のノートに書き込んでいく。レンレンは一連の行為で、沖田たちの計画の内容を獲得したのだ。

「文化祭の終わり頃、ファンティーニ先生が運転手の須貝すがいさんと護衛の吸血鬼を用務員室へ呼び出す。そこで沖田総司が護衛を倒しファンティーニ先生が念入りに須貝さんに催眠をかける。護衛の代わりに沖田総司がバスに戻り、須貝と一緒に出発。ランデブーポイントでファンティーニ先生と合流し彼の車に血液を載せ替え、そのまま逃亡……と」

 陸の書いた図には献血バスと用務員室、そして移動したバスとファンティーニの車が合流する場所が三角マークで描かれている。それを見たハチワレ猫は呆れたように呟いた。

「改めてこう聞くと雑な作戦なのだわサ」

「まあ沖田総司って元新撰組(しんせんぐみ)だものね。荒事集団だからこういうのが性に合ってるのだと思うよ。それよりも意外なのがファンティーニ先生の方だね」

 そう言う陸の言葉を聞いて、今度は陽女がソファの上からぐいっと身を乗り出す。

「でも先生がこの計画に全ベットしてるのは間違いないと思う~」

「そうなのだわサ?」

「うん。先輩が聞き込んでくれた内容によると、知っての通りファンティーニ先生には彼女がいっぱいいるんだけど、彼女たちの管理が雑になってきているし割と私物もあげて回っているみたいなんだ」

 陸はレンレンにそう説明した。陽女は三日間かけて女生徒たちに聞き込みを敢行した。そうする中で見えてきたのは、ファンティーニが今の仕事である『貞操おとめ管理』を辞めようとしているのではないか? という事だった。

「たぶんなんやけど、ウチらの相手に疲れてきてはるんやと思う~。『最近ちょっと冷たい』って愚痴る子もいれば、『大事なもんやけど、って愛用の品をくれた~』って自慢する子もいるねん」

「なるほど。確かに茶室で話を聞いてるだけのワタシも、たまにウンザリしていたのだわサ」

 レンレンはそう言って毛玉を吐く時のような顔をした。形は違えどこの猫もまた大量の恋する乙女の相手をしてきた。その心労を一番理解できるのは彼女であろう。

「仕事を辞めたかったから、沖田総司の誘いにのったのだろうね。逆に強奪計画に噛むから、仕事を辞めざるを得ないのかもしれないけど」

 何れにしても、自分の管理下で大量の乙女の血を強奪されたとあればファンティーニの身分は無事ではあるまい。ならば全てを捨て、沖田と共に姿を消すのが得策……と考えたのであろう。奪った血が、新天地で再出発するのに足るのかは定かではないが。

「そう言えば沖田総司の方はどうなん? 遊ぶ金欲しさなん?」

 ふと疑問に思った陽女はレンレンにそう訊ねる。

「ええ。なんかそれっぽい事を言ってたのサ」

「話を聞いてみた感じ、軽薄そうな吸血鬼やね~」

 陽女はそう言って頷いた。沖田総司という人物、活躍していた頃というか歴史の話で聞く分には志のある剣士である。しかし実際は新撰組所属時から吸血鬼であり、激動の時代を超えて今も刹那的に生きている、或いは死んでいる様だ。真実を知った人々はさぞかし失望するだろう。

「だからこそ、付け入る隙もあるし……」

 もっとも陸たちにとっては有り難い話である。己の剣の強さと吸血鬼である事にあぐらをかいた杜撰な計画だからこそ、出し抜くチャンスがある。それどころか……

「やり方を丸ごと、飲み込む事もできる」

 陸のその発言に、レンレンと陽女は驚いて顔を見合わせた。

「坊やそれは……ファンティーニたちの作戦をパクっ(真似し)てしまおうってことなのサ?」

「いや、それだけじゃない。あと先輩に教えて貰った映画で銀行強盗が使った手段も使う気なんだ」

「えっ、あれを~!?」

 驚く吸血種たちの顔を見て、陸は力強く頷いた。

「『インサイド・マン』を観ている途中からうっすらと浮かび上がってきていたんだけど、レンレンと先輩からの情報を貰って形になった。ただ完成には引き続き、やって貰いたい事があるんだ」

 それから彼は作戦の概要を語り出した。猫と女子高生は最初、その作戦の大胆さに不安を覚えたが、やがて彼の説明にのめり込んでいった……。

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