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第20話「知っての通りワタシは……」

「知っての通りワタシは御西女学院ごせいじょがくいんの子たちからよく恋の相談を受けていたのだわサ。ただその中でヤツの話が出てくる度に、不審な気持ちはあったのだわサ」

 彼女がそう言うと学生コンビはそれぞれ何かに気づいた顔になった。陽女ひめは必死に手を合わせレンレンを拝む。一方、りく

「女子校に勤務するイケメンの先生だから、人気があるのは当然。ただ話の中身が、て事だね?」

と確認するように言った。

 彼も何度も見かけた事はあるが、ファンティーニは端正な顔立ちをしている。その名が示す通りイタリア人と日本人のミックス(混血)で背も高い。多くの女生徒から想いを寄せられても不思議ではなかった。ならば聡明な猫が不審を抱いたポイントとは……?

「そう。片想いしてるだけじゃなく、『実はファンティーニ先生と付き合っているんだけど……』と打ち明ける子があまりにも多かったのだわサ」 

 レンレンは陸と陽女にウインクを送りながら言った。因みにこのウインクには三つの意味がある。一つ目は聡い中学生を褒める為に。二つ目は陽女に対して

「貴女の相談内容は秘密にしておくから心配するな」

という返事で。三つ目は、猫が信頼する相手に示す愛情として。

「正直、彼氏に二股をかけられているという愚痴は山ほど聞いた事があったのだわサ。でもファンティーニがかけてる股は、多忙な高校教師が管理できる数じゃなかったのだわサ!」

「それで気になって彼の方も尾行してみたんだね?」

「そう! まあ時系列で言うと沖田が来るより前の事だし、ワタシも吸血猫になってなかったからハッキリと理解した訳じゃなかったけど……」

「ファンティーニ先生は他の生徒にも催眠をかけていた、と」

 陸は先ほどレンレンから聞いた用務員室での光景を思い出しながら言った。あの吸血鬼教師は加藤という生徒の心を操り、激しく求め合ったという偽りの記憶まで植え付けた。なるほど、催眠でそこまで出来るのであれば多数の生徒とお付き合いする事も可能であろう。

 いや実際にお付き合いしている訳ではないのだが。

「でも何の為なん? そこまでして大人数と付き合いたいもん~?」

 そこへ黙っていた陽女が口を挟む。レンレンが沈黙を守ってくれる事に安堵して話に取り残されそうになっていたのだ。

「いや、僕に聞かれても……」

 視線が自分に集まり、陸は困惑の声を漏らした。この場にいる男性は彼一人なので当然の事ではあるが、なにせまだ中学生だ。大人の遊び人(プレイボーイ)の心境など想像もつかない。

「そうやんな~。りっくんは年上のゆるふわ彼女一筋、ってタイプやもんな~」

「勝手に坊やの設定管理をするんじゃないだわサ」

「管理……そうか!」

 陽女の独断専行きめつけをレンレンが咎める間に、陸はある事に思い当たって言った。

「品質管理ですよ!」

「品質管理~?」

「なるほどだわサ!」

 陽女はピンと来ない様だがレンレンはその一言で察しがついて頷いた。猫の視線に勇気づけられて、彼は言葉を続ける。

「ええ。こういう例え方をすると失礼ですが、御西女学院の生徒の血は高額商品です。以前、先輩が仰った様に『聖職者見習いで乙女』ですからね。でもその後半が無くなると価値も半減してしまう」

「つまり……ファンティーニ先生はウチらが卒業まで純潔(貞操)を守るよう、何股もかけてるってこと~?」

「きっとそうなのだわサ! それなら付き合う相手の中に、意外と奔放そうな子が多い事にも説明がつくのサ!」

 最後の部分についてはまだ話していなかったので、レンレンはファンティーニの交際相手(管理物件)についてざっと説明を行った。

「どうですか?」

「うん、確かに派手目な子が多いね~」

 陸に問われ、陽女はできる範囲で思い出しながら答える。

「ではまとめます。ファンティーニ先生は吸血鬼で催眠能力の持ち主。それを使って大人数の女子生徒とお付き合いしている……と思い込ませて、清い体でいさせている。その目的は献血で集める血の価値を高いままに保つこと」

「補足して言えば、催眠だけでやってる訳ではないわサ。自分に純な想いを寄せている子については『卒業まで待ってくれ』って言うだけで良いのサ。ヤツにあまり興味無くて、他の男と関係をもってしまいそうな子を中心に催眠で魅了している訳サ!」

 レンレンは猫の割に非常に言葉を選んだ表現をしたが、要は簡単に他の男とやってしまいそうな女子を誘惑して留めているのである。これは高度な寝取り(NTR)かもしれなかった。

「赦せへん! ピュアな乙女の恋心を自分達の良いように操るなんて!」

「まあ操った結果、ピュアな状態でい続ける事にはなるんだわサ」

 憤る陽女にレンレンが事情の複雑さを解説し、それを聞いた陸は苦笑いした。確かに催眠という行動は神をも恐れぬ行為である。しかし結果は神の御心に従うものと言えるかもしれない。

「そのうえ彼は、沖田とも内通していて彼の計画の手助けをしている、と」

 彼はそう付け足し更に複雑な表情となった。ファンティーニは多くの乙女の心を裏切っているが、実はそれはさほど問題ではない。陸たちにとって障壁となるのは、あの教師が吸血鬼の上層部も裏切っている事。そして日常的に校内にいる事だ。

 何らかの理由で彼は、献血バスの強奪をもくろむ沖田に協力をしている。同じく強盗を計画している陸たちと何処で衝突するか、分かったものではなかった。

「何か難しくなってきたね~」

 陸の指摘に噴き上がっていた陽女も鎮火し、部屋は再び別の部屋から漏れ聞こえる歌声に包まれた……。

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