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しばらく進むと、地面が削れて高さ2m位の崖が現れた。


一同が見上げた。



「じゃ、マートルさま肩車して。」

「上についたら木にロープを結んで垂らすからみんな登って来て。」


マートルが屈む。


「よいしょっと。」

フリージアがマートルの肩に跨がると、脛をしっかり支えてくれる。


「立ち上がるが大丈夫か?」


「ゆっくりお願いね。」

マートルがゆっくり片膝ずつ立ち上がる。


「いいわ!背が高いし、がっしりしてるから安定感抜群ね!」



ニーレンは、このことを口止めしようと思いネリネを見る。



「ネリネさま、クフェアさまには内緒にして下さいね。」


「クフェアだって諦めてるさ。」

呆れた目で崖を登った孫娘を見上げた。


ニーレンは顔の前で仰々しく手を振った。

「流石にこれはクフェアさまも想定外でしょうから。」



フリージアは木の根のしっかりしたところを掴んで、崖の上に這い上がった。


登った先はも草木が生い茂って、木々によって光が遮られて暗い。

足元も木の根が盛り上がってうねっている。


太めでしっかりしていそうな木を選び、縄をぐるりと回し、しっかり結ぶ。


そのまま縄を持って崖下に垂らす。


「さ、みんな登って来て。」


最初に、ネリネがマートルに支えてもらいながらロープを掴んで登る。


次にニーレンがマートルに支えられて登る。


マートルはロープを掴み、崖に足を掛けて上がって来る。


草木が生い茂って辺りが暗いので先を見通しにくいが、目を凝らすと遠くにかなり小さくだが小屋が見える。


途中でお昼ごはんを食べて、休憩を取りながら歩くと、もう夕方で小屋が目の前だ。



ようやく3人は小屋に到着した。



こちらの小屋も鍵などはなく閂がしてある。


マートルが閂を外して扉を開けて、横に立て掛けた。



マートルが感心したように呟いた。

「深淵の森の小屋の作りはどこも似ているな。」


「ノースポール領の小屋とは違いますか?」

ニーレンが質問する。


マートルが小屋の中を見回す。


「昨日も思ったが、必要なものがきちんと揃えてある。」


「ノースポール領はそもそも小屋自体が少ない。」

「ほんの雨宿りに使う程度だ、ここまでのものは維持にお金が掛かるかかるからな。」


フリージアは背負ってきたリュックを下ろし、中から簡易食を取り出して自分の知ってることを話す。


「そうだね…この小屋自体も王家が建てていることもあって全部外観が似ているのかもね。」


「中の物資とかも王家お抱えのギルドが時々補充して廻っているみたいよ。」


フリージアが冷蔵庫を確認すると、果実酒とチーズが入っていた。

冷蔵庫の横の棚には、乾燥させたきのこ類が常備してある。


「前のと違うところもあるよ。ここはお風呂がお外にあるんだよね。」

フリージアがチーズを冷蔵庫から取り出す。



「では、私は井戸水を外の浴槽に溜めてこよう。」

マートルはこの旅では、浴槽に水を溜めることを自分の仕事にしようと思っていた。


ニーレンがマートルを呼び止める。

「違います、ここは温泉が湧いてるんです。」

「温泉もあるのか?」

マートルが驚いた。




今夜は、きのこの香草焼きとパン、スープとチーズだ。

ニーレンがフリージアが用意したものを配膳していく。



フリージアはリュックの中からハーブティーを取り出し、ティーポットに水出ししておく。


「マートルさま、コンロ台の横にある冷蔵庫に新しいタランをセットしてください。」


ニーレンが空のグラスの用意をしながらマートルに頼む。


「冷蔵庫にタランをセットしたらいいのか?」


「そうなんです。ここを利用した人が必ず新しいタランを入れることになっているんです。」


「そうすると地脈からの熱エネルギーを切らさないので、この小屋の冷蔵庫はだいたい冷えています。」



マートルが自分で持参したタランを冷蔵庫にセットした。

「タランをセットしたが、中を見てもいいか?」


「どうぞ。」

冷蔵庫の中には、瓶が何本か入っていた。


マートルが冷えた瓶を手に取る。

「これは…?」


「良ければ夕食と一緒にどうぞ、果実酒です。」

ニーレンがグラスをマートルの前に置く。



みんなのでそろって夕飯をいただく。



食後のハーブティーを飲んでネリネとフリージアは温泉へ行った。



マートルは、フリージアが出してくれたドライフルーツと一緒に果実酒を楽しんでいた。


ニーレンがそのお付き合いをしてグラスに果実酒を注ぐ。

「先程、外に温泉があると言っていたが、2人だけで大丈夫だろうか?魔物などが寄ってきたりして危なくないのか?」


ニーレンが少し得意気に話す。

「この小屋の木材は、王家所有の森から伐採された特別な賜り物で、魔物の苦手な匂いがする芳香木を使って建てられておりますので、この小屋は滅多に魔物が近付くことがありません。」


「ちなみに外の温泉もこの木で周りを囲んでいます。だから大丈夫ですよ。」


ニーレンが、マートルの空になったグラスに果実酒を注ぐ。


「小屋の木を持ち出すと重い罰が下るんですよ。」

「そんな貴重な物ならそうだろうな。」

マートルが頷いた。



(確か、王妃が執り成して特例で3年の労働で済んだと聞いたけど…)

ニーレンがにネリネの杖を見て、昔聞いたことを思い出して苦笑した。



「そういえば、ノースポールでは食事は簡易食を持って行かないほうが多いんですか?」


「そうだな、イノシシの魔物程度ならしょっちゅう出てくるから狩って森で解体して食べれば特に困らなかったからな。」


ニーレンは単独で行ったアイスリンを思い出し心配になった。

「まさか、アイスリンさまも?」


「今回はお一人だし、少し用意して森に入られたのかもしれん。」





ネリネとフリージアが温泉から戻って来た。


「先に入らせてもらったよ。」

「悪いけど、こちらの明かりは落とすよ。」

ネリネが長椅子のそばの明かりを消す。


「私らは今から休むから、ニーレンもそのくらいにして温泉に浸かっておいで。」

ネリネが明日のことを心配して声を掛けた。



「おやすみなさい、マートルさま。お先にニーレン。」

フリージアも2人に声を掛けてから、長椅子をベッド代わりにして休んだ。










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