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この小屋の窓は小さめだが、簡易ベッドとして使える大きめの長椅子のちょうど頭の辺りにある。


そのため、朝日が差し込むと寝ている者の顔辺りを照らす。


天気が良い日は目覚めまし時計の代わりになる。



昨夜、この長椅子には窓側にフリージア、部屋側にニーレン、足元にネリネが寝て、暖炉前のスペースにリュックを枕にしてマートルが寝ていた。


フリージアは窓から入ってくる光で最初に目が覚めた。


急いで身支度をして、朝食の用意に取り掛かる。


用意といっても持ってきた簡易食を温めるだけだが。


外にある井戸まで行き、桶に水を汲んで鍋に水を入れ湯を沸かす。


パンを窯に入れて焼く。



「ジア、早起きだな。」

後ろにマートルが立っていた。


「今朝は早めに出ようと思って。」

パンのいい匂いが小屋の中に広がる。


持って来た粉スープをお湯に溶く。


「日が暮れる前に小屋に辿り着きたいのよね。」


「その小屋でスリンさまに会えるだろうか。」


「私達は東周りでワイバーンの棲家に向かっているのよね、スリンさまが西周りのルートになると次の小屋では合流できないかも。」


 「では、いつなら合流出来るんだ?」

「明日泊まる予定の小屋かな?」


「そこに今夜泊まることは出来ないのか?」


「今日は、小さいけど崖も越えなきゃ行けないからそこまで進めるかなぁ…」


「私だけでも、先に…」

マートルは、弓矢を一刻も早く届けたかった。


2人の話し声にネリネが目を覚ました。

「短気はいけないよ、マートルさま。」

それだけ言ってお手洗いへ向かう。


「そうだよマートルさま。」

「昨日、魔物に遭遇しなかったのってお祖母さまの…」


「おはようございます。ジアさま、マートルさま。」

ニーレンがマートルに微笑みかけて挨拶する。


「おはよう、ニーレン疲れはどうだ?」

嬉しそうな顔で挨拶を返す。


「マートルさまのおかげで。」


このマートルの変わりようにフリージアは呆れた。


(私には全くいたわりの言葉が無かったわね、このテーブルを拭く布巾で顔を拭いてやろうかしら。)


「ジアさま、ネリネさまの宝杖のことはネリネさまの了解を得てお話ください。それまではご内密に。」

フリージアを手伝う素振りをしてこそっと耳打ちする。

「そうだったわ、うっかり勝手に喋っちゃうとこだったわ。」

後ろを振り返ってネリネがお手洗いに行ってるのを見てホッとした。



4人は朝食を摂って小屋を後にした。



ネリネが、杖を突きながら草を掻き分け進む。


先頭に老女のネリネ、次にニーレン、それに付きそうように熊のような大男のマートル、しんがりをフリージアで進んで行く。


「意外と魔物に遭遇しませんね。」

マートルが周りを警戒しながら疑問を口にした。

ノースポールの森では、こんなことはあり得ない。


魔物が近くにいれば気配でわかりそうだが、今のところそんな気配も感じない。


「私の持っている杖の効果だね。」

あっけらかんと種明かしした。


「小物には効果覿面なんだが…この先の大物にはそんなに効かないだろうね。」


木の根が複雑に網の目のように張り巡らせ、地表から浮き出ている。

道が上がり下りしていて、膝への負担がかなりかかる。



疲れてきたのかネリネの歩く速度が落ちてきた。

「休憩できる場所がなかなかないね。」


草を不自然に掻き分ける音がする。


先頭を歩いていたネリネに声を掛ける。


「お祖母さま…後ろに下がって。」

「3人共後ろへ。」



イノシシの魔物が草叢に身体を隠していた。

こちらが気付いたことに勘付いて、排除しようと動き出した。



「マートルさま頼むね。」



マートルが目を凝らす。



「イノシシの魔物か。核は普通に心臓付近か。」


フリージアがネリネとニーレンを連れて木陰に隠れようと引っ張る。

「私達隠れてるからね!」


「いいんですか?フリージアさま。」


ニーレンの心配気な声を聞いてマートルがニーレンを見て頼もしい声を出した。

「任せて、下がってていいからニーレン。」


「ほら、マートルさまもそう言ってるからね。」

ニーレンを引きずって隠れる。


イノシシの魔物が勢いを付けて向かって来た。

マートルが腹帯に差していた剣を抜いて構える。


イノシシの魔物が真っ直ぐ向かって来たところを飛んで交わす。

身体の大きさを考えるとかなり俊敏な動きだ。


不意を付いて、イノシシの魔物の眉間に剣を突き立て、そのまま力で仰向けに押し倒して、剣を抜き核に刺して勝負はついた。


「さすが慣れているわね!無駄な動きがないわね。」

フリージアとネリネが感心して見る。


マートルが満更でもない顔をした。


「核は取り出して、売ろう。」


ネリネが魔物の側に来た。

「肉はどうする?」


「引きずって持って行けないし、置いていくしかないわ。」


このまま放置して行くのは嫌だと思いながらも、フリージアは提案した。



「そうだね、小屋に近かったら良かったけど、解体できるのがマートルさまだけなら、そのままにして置くしかないね。他の魔物の餌になるだろう。」


ネリネがフリージアの心を軽くする為に言う。


マートルがフリージア達を急かした。

「もったいないが、ここで時間を食うわけにはいかないしな。血の匂いで他の魔物が寄って来るだろう、さっさと立ち去ろう。」














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