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深淵の森と呼ばれるこの森の、最奥まで行ったことある者は片手で数えられるほどしかいない。


小屋は森のちょうど中頃に建っていた。



ネリネとフリージアが先に小屋に到着した。


小屋は木組みになっていて、入口の階段を5段ほど上がると扉がある。


誰でも使えるように特に鍵などはなく、外側に付いている閂を開ければ中に入れるようになっている。


中に入ったら、外に付いていた閂を中に掛ける。


中は天井が低めで、小さな窓が一つある。


部屋の中に台所とコンロがあり、ちょっとした料理ができるようになっている。

角には暖炉もある。


ネリネが小屋の中に入って直ぐに、隅に置いてある室内ランプに手際よく明かりを点ける。


「スリンも、ここに泊まると思ったんだけどな〜。」

フリージアが大きめの長椅子のシーツを新しい物に替えた。


ネリネが小さな窓を開けると、夕陽が窓から射し込む。


大分遅れて、ニーレンとマートルが小屋に入って来た。

「すみません、足が疲れてしまって皆さんにご迷惑をお掛けしました。」

申し訳無さそうにニーレンが謝る。


「いや、ニーレンは良く頑張った。女性の足でこの森を歩くなど大変なことです。」

マートルが、ニーレンの荷物を長椅子の横におろした。


「そうよ、ニーレン!付いてきてくれただけでも感謝だわ。」


「じゃ、余裕のあるマートルさまは外の井戸から水を汲んで来て浴槽に水を張ってね!ニーレンの代わりに。」

フリージアがそう言って木の桶をマートルに手渡す。


「ジアさま、マートルさまもお疲れでしょうから少し休んだら私が…」

ニーレンが申し訳無さそうにマートルを見る。


「私は鍛えているので、このくらいなら大丈夫だ。ニーレン、君は安心して休むんだ。」


マートルは桶をフリージアから受け取ると小屋の外へ出て行った。


それを横目で確認してフリージアはニーレンを称賛した。


「よくやったわ!ニーレン。」


「よくやったとは…?」

ニーレンは疲れていて頭が働かず、フリージアが何を言いたいのかわからない。


「マートルはあなたが気にいったみたいね。その証拠にスリンの行き先を聞かなくなったわ、これで私達と離れることなく一緒にスリン探しができるわ。」

「この調子で頼むわよ!」


「頼むってジアさま…」


「私達だけでスリンを追うのは大変でしょう?マートルを離さないで。」

フリージアがニーレンの手を握りしめた。



マートルが水を汲んで戻って来た。

「これはどこに持って行ったらいいだろうか?」


「そちらの右手のドアを開けてください。浴槽があるのでそこに汲んだ水をお願いします。」


マートルが浴槽に水を移してまた小屋の外に水を汲みに行った。


「こういう力仕事を頼める男の人がいると助かるね。」



「ジア、油売ってないで夕飯の支度頼むよ。」

「はーい!」

ネリネが椅子に座って脚を揉みながら、無駄口を叩いているフリージアに夕飯の催促をした。



夕飯は、持ってきた簡易食を軽く温めたものを皆で食べた。

パンと豆のスープとドライフルーツだ。



フリージアが食後にハーブティーを淹れる。


「美味しいよ〜、フリージア特性ハーブティーだよ。どうぞマートルさま。」


「ありがとう、いい匂いだ。ネリネさんとジアは旅慣れてるのかな?」


「慣れてると言えるのかな?…お祖母さまは植物の研究で若い頃には深淵の森とか、他にもいろいろな所を回っていたんだよね?」


「それは、凄いですね。」

それを聞いてマートルの言葉遣いが変わった。


「ノースポール領地の森も入ったことあるよ。あそこもは魔物被害も多いし、けっこう奥に行くと強い魔物がいるもんね。」

ネリネが昔を思い出しながら答えた。



「うちの領地の森にも来られたのですか?」


マートルがネリネを尊敬の目で見た。



「ここと違って森の入口付近でも魔物に遭遇するので大変だったでしょう。魔物討伐に我が領の私兵だけでは追いつかず、魔物討伐組合を作って常に討伐者を募っています。」


「スリンの婚約者も同じギルドメンバーだったのでしょう?」



「よく知ってるな。そう、一緒に討伐に出てその時に……」


「気の毒に…」

ネリネが眉を寄せた。


「アイスリンさまはずっと、ノースポール領でワイバーンを探していたのですが、全く見つから無かったんです。」

「それが先日、リナリスを襲った個体を深淵の森で見たという噂を聞いてアイスリンさまが飛び出してしまって、私が後を追って来たという次第です。」


「リナリスがスリンの婚約者ってこと?」


「そうだな。」


「あのね、この深淵の森には後5つ小屋があるの、絶対小屋に泊まると思うから小屋で待ち伏せしようと思って。」


「ワイバーンの巣の場所はある程度こちらの討伐組合も把握しているから、闇雲に探すよりそこに網を張って待ち伏せたほうがいいね。」

ネリネがフリージアの案に賛同して言った。


ニーレンが気になることを聞いた。

「あの、ワイバーンを一人で討てるものなんですか?」


「罠とか仕掛けて、核を一発で狙えればいけそうかな……お祖母さまの昔の仲間はどうされてたの?」


「ワイバーンが棲むような深いところまでは流石に私のギルドメンバーは行かないよ。」


「スリンさま大丈夫かな?」


「そうだね、討伐というのは日が経ってくると気力と体力の勝負にもなるからね、長引けば不利だろうね。」


「万全な体調で挑む、というのが大事になってくるだろうが一人でどこまで上手くいくかね。」


「ネリネさまの言うとおりです、食事のことや寝床の心配などもあるので早めに合流したいのですよ。」

マートルの心配が声に表れていた。







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