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小屋の窓から朝日が差し込むと、フリージアは誰よりも先に目を覚ました。



朝の身支度と朝食の準備をする。


昨日使った魔物の肉が少し残っていたのを、薄くスライスして、持って来たハーブティーのパックを破って塩と一緒に振りかけて味を染み込ませておく。



温泉の側に果実が生っていたのを思い出して、それを採りに行く。


だいたいどこの小屋でも同じような作りになっていて、温泉の周りに目隠しのために木の囲いがあり、この囲いの木が魔物の苦手な芳香木が使われているので、この近くは魔物が来る心配をそこまでしなくてもよい。



階段をおりて、果樹ところヘ行く。


木は2メートル位にの高さで、実はフリージアが手を伸ばせば届くところに生っている。


上を向いていると実を選別していると、朝日が眩しい。


実をもぐと果実の甘い匂いが立ちこめる。


「芳香木の近くとはいえ、この甘い匂いに誘われた魔物と遭遇するかもしれないわね。」


木製の桶に果実をもいで入れる。


見た目は茶色くてコロンとしているが、厚めの皮を剥くと真っ白の甘くてツルンとした実が出てくる。


「実は一口サイズぐらいだから、15コはいるかな…」

果実が入って木桶が重たくなってきた。



「おはよう、フリージア。」

振り返るとアイスリンが立っていた。

「おはよう、スリン。」


スリンが木の桶を覗き込んできた。

「それは、ボリジ?」


「そう、よく知ってるね。ノースポールでは見ないでしょう?」


アイスリンが、フリージアの手から桶を引き取った。


「王都の酒場で食べた。」



「暖かいこの時期しか実をつけないから、ちょうど今が食べ頃だよ。」


「1個でもビタミン類が豊富だから疲れが取れるんだよ。」

「さ、このくらいでいいよ。もう戻ろう。」



もう少し2人で居たかったが、早くボリジの皮を剥かなくては。

肉も味が染みて臭みも消せた頃だろう。

頭の中で調理手順を立てる。


小屋ヘ戻ろうとしたフリージアに呼び止めるように話出した。

「……隠してて、済まなかった。」



(隠す?身分のことかな)


「ノースポール伯爵家のご子息ってこと?」

「ああ。」

アイスリンが頷く。


フリージアは右手を振って気にしてないと伝える。

「いいよ、平民に下手に名乗っても碌なことないよ。」



「そうじゃないんだ。私は、三男だしギルドに所属して生計を立てているけっこう自由な身なんだ。」


「私自身はもう貴族と名乗るほどの生活をしているわけでも無いので、名乗るのが気恥ずかしくてな。」


「そうですか。」


(そうだとしても、伯爵家だもんね、三男とはいえ普通はこうやって話すことすらないんじゃないのかな…… でも、スリンのこうやって謝ったりするのは確かに貴族らしくないかも。)



「マートルさまも貴族なの?同じギルドメンバーだと聞いたけど…」



「マートルの父親が家の家令をしているから、幼少期より交流があるんだ。」


(家令なら、貴族ではない可能性が高いわね。)


「マートルさま、ニーレンがお気に召していらっしゃるようだから、なんとかならないかと…」


「確かに、あんなマートル初めて見た。」

思い出したようで可笑しそうに笑う。


「ニーレンは元は王妃さまの侍女だったらしいんだよね。」


アイスリンが目を丸くした。

「それは…王妃の元侍女って、逆にマートルとは身分が違い過ぎるかもしれんな。」


アイスリンは、底知れないものを見るような目をフリージアに向けた。


2人は話ながら小屋の前に着いた。

アイスリンが桶を抱えながら、小屋の扉を開ける。


「スリン、桶ありがとう。」

「いいよ、どこまで持って行く?」

「じゃ、台所の作業台までいい?」

「ありがとう、助かった。」

アイスリンがフリージアを見て微笑んだ。



深みのない平鍋をコンロ台に置いて、タランをセットして火を点ける。

先程のハーブティーの袋を破ってまぶしていた肉を焼く。

焼けるまでの間に、果実の皮をナイフで器用に剥いていく。


「おはようございます、ジアさま。」

朝の身支度が済んだニーレンがそばに来た。


「おはよう、ちょうど良かった。ニーレン井戸でお水汲んで来て。」

「お湯を沸かして、ハーブティーを飲みましょう。」



マートルが起きてきた。

「おはようございます、アイスリンさま、フリージア。」


先程のを会話を聞いていたようで井戸にニーレンを誘う。

「おはよう、ニーレン一緒に外の井戸に行こう。」

「おはようございます、マートルさま。」


ニーレンとマートルが一緒に井戸へ行く。



「おはよう、スリン。マートルあのコにベッタリじゃない!ちゃんと領地に帰るのか心配になって来たわ!」

エリカも身支度が済んだようだ。


フリージアがパンを窯に入れる。

しばらくするとネリネが起きてきた。


「おはよう、お祖母さま。」


「よく寝たよ、お肉の焼けるいい匂いだね。」


「肉が冷蔵庫に残っていたから、朝ごはんにとおもって。」


「それ、昨日私達が狩ったやつまだ残っていたのね。」


ニーレンとマートルが井戸から戻って来た。


「お帰り、ニーレン手伝ってもらえる?フォークとナイフをお願いね。」


ニーレンがフォークやナイフ、コップやらを配膳する。


フリージアが、井戸から汲んだ水を火にかけて、パンを人数分出す。

(魔物を狩ったら次の小屋で干し肉を作らないと…)


「先に食べてていいよ。」

「ハーブティーを淹れるから。」



テーブルには、焼いた肉とデザートとパンが並んでいて、そこにフリージア特性のハーブティーを淹れて並べる。


「フリージアの一手間でお肉が美味しい!」

一口食べて、エリカが感嘆した。


「ああ、とてもこんな小屋で食べているとは思えないな。」

「昨日よりも肉も柔らかい。」

スリンも嬉しそうに食べる。


フリージアは満足そうなスリンとエリカを見て、口元が緩んだ。


















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