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タンラザン王国は周りを海に囲まれた島国で、広い森を有しており魔物と人が共存している。
王家は所有する森に炉を置いている。
炉の中ではタラザンという鉱物とコランという鉱物が衝突を繰り返すことでエネルギーを生み出している。
このエネルギーが地下に張り巡らせた地脈を通ってエネルギーをつくる。
地脈のエネルギーを吸うことで、森が広大になり獣が核を持ち魔物化している。
衝突した鉱物の破片は炉の外側に弾き出される。
この弾き出された鉱物をタランという。
人々が、それを色々な用途に工夫して利用していた。
例えば、お湯を沸かすときコンロにタランを埋め込むことで地脈のエネルギーを効率よく使えるのだ。
フリージア・ラプシモは王都から比較的近くにある深い森の入口付近の小さな小屋で、糸を染めて生活していた。
フリージアは夕陽に照らされたような赤茶色の髪とアンバーのパッチリとした瞳を持っている。
「ニーレンどう思う?糸を染めるのにバイオレットの実が多すぎたかも。」
フリージアは大きい盥に、まだ色の付いてない糸とバイオレットという紫の花の実とお湯を入れて、丈が大腿まであるブーツで踏んで実を潰しながら染色していた。
ニーレンはフリージアのお世話係兼友達だ。
ニーレンは青い髪色に襟足までのショートヘアで瞳の色はくすんだ青紫だ。
「ジアさま、紫ではなくて黒に近いですね。クフェアさまに叱られますね。」
ニーレンがそう言って盥を覗き込んだ。
「水を増やそうかしら?」
「そうですね…今更間に合いますかね?」
ニーレンの目にはもうしっかり染まっているように見える。
「ちょっと、川まで行って水を汲んで来るわ。」
ポンチョ型の膝丈の貫頭衣の裾を持ち上げてフリージアが盥から足を出した。
「この辺は大丈夫と思いますが、魔物に気をつけて行ってきてくださいね。」
ニーレンは、絶対もう手遅れだと思ったが、フリージアが元来頑固なのを知っているので好きなようにさせて見守ることにしている。
ニーレンは盥は放って洗濯物を取り入れに庭に行った。
洗濯物も片付けてしまって、30分しても戻らないので心配していたら、何やら地面を引き摺るような音が小屋の外から聞こえる。
「え…怖い、何かしら…魔物!?」
ニーレンが備え付けの銃を手にして、タランを装填した。
魔物は核を壊さなければ倒せない。
核の破壊にはこのタランが不可欠なのだ。
小屋の窓から外の様子を覗き見ると、フリージアが黒い物体を引き摺って歩いて来ていた。
「ニーレン、ニーレン!大変よ、これを見て。」
外から一生懸命声をかける。
ニーレンは一先ず深呼吸をして落ち着いて、銃をもとに戻して小屋から出た。
「それは、川の水ではないですよね?」
「やっだ、当たり前でしょう。見たらわかるじゃない。」
フリージアがそう言って、呆れた目でニーレンを見る。
「川に水を汲みに行ったのでは無かったのですか?もとの場所に戻して来てください。」
「え、このヒト倒れていたのよ、そんな酷いことよく言えるわね、絶対ヤダ!」
「こんなズタボロの雑巾みたいなのに包まれてるヒト怪しいでしょう。」
「違うわ、見てよこのローブ!汚れているけど高級だわ。触り心地が最高級よ!」
「ローブを引っ張ったら、人が付いてきたって感じかしらね。」
ニーレンが額に手を当てて溜め息をついた。
「じゃあ、ローブだけ追い剥ぎしてきたらよかったでしょうに…」
「ニーレン、お風呂沸かしてよ〜。この人お風呂に入れてあげよう。こんな高級ローブを身に付けれるなんてどんな人か気になるじゃない。」
ニーレンは説得を諦めて風呂の支度に行った。