96. リュカとミカヅキと魔獣
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次の日の朝、私たちはポアンの村を発った。精霊たちによると少し西の方向だというので、途中から東に向かう街道を外れ、西寄りの北に向かう。
見渡す限り平原だった。歩きやすいけれど、見通しがいいので私たちは丸見えだ。しばらく歩いていると…
『来る』
『上だ!』
大きな鳥が6羽ほど私たちの上で旋回していると思った途端、そのうちの1羽が下降したのを先頭にこちらに向かってきた。
リュカとミカヅキが右に向かって走り出し、アル様とフランが左に走った。3か所に誘導してそれぞれのペアで戦う。
私はジークと一緒に戦う。飛んでいるので、方向が定まらないけど、下降してくるときは一直線にこちらに向かってくるのでその時を狙う。
『ルイ、今です』
「はい、ウィンドブレード!」
ウェンティアと合わせて風魔法を両手から2つ放つ。一つは外れちゃったけどもう一つが羽に当たり、バランスを崩して落ちてくるところを、相手が体制を立て直す前にジークが魔法をまとわせた剣でとどめを刺す。
もう1羽も同じようにするけれど、今度は両羽にブレードが当たり落ちてきたところをジークが難なく処理。
アル様とフランも、アル様のストーンバレットで落としてフランが槍で仕留めていた。
「ジーク、ありがとう。ジークがいるから落ち着いて対処できたよ」
「いや、飛んでいる魔獣にちゃんと当てるのは難しいぞ」
「ウェンティアの魔法操作と、スキルの命中率アップのおかげだね」
「そんなスキルもあるのか!」
今回の魔獣、ブラウンファルコンは空からの攻撃は厄介だけど、そんなに強い魔獣ではない。こういう時は3組に分かれて戦うことを決めていた。もう少し強い魔獣になると、アル様がリュカたちと、フランが私たちと組んで2組になって戦うことになる。
リュカとミカヅキは大丈夫かなと思って見ると、ミカヅキがこっちに向かって走ってくるところだった。
『ルイ、聞いてよ! リュカってば、ずるいんだよ』
「どうしたの? でもちゃんとやっつけたでしょ?」
『一人が飛んでいる魔獣を落として、もう一人がやっつけるんでしょ』
「まぁ、基本はそうだね」
『でもリュカは飛んでいる鳥をどんどんやっつけちゃうんだ』
「それはすごいね」
『だけど! 僕ができないよ!』
それは…リュカの弓がちゃんと急所を突いているからであり、まさか、こんな時にミカヅキにも戦わせてあげてとも言えない。やれる時には仕留めた方がいいのだ。
そんなことを言っているとリュカが戻ってきた。
『リュカ、次は僕もちゃんと戦うからね!』
「ああ、そうしてくれ」
ミカヅキはそれだけ言うと走って行ってしまった。ペアを組みかえてくれと言わないところは、今の状況をわかっているのか、それともそこまで頭が回らないのかはわからないけど、次からもやる気満々だから良しとしよう。
「ミカヅキは大丈夫か?」
「うん、多分ね。ミカヅキはやっつけるのが好きだから、自分もやりたいみたい。普通はやってもらってありがとう、と言うところなんだけど」
「ま、俺の腕がいいからな」
「リュカ、だんだんフランに似てきたね!」
「?! それは絶対違う~」
「俺がなんすか?」
「ふふ、何でもないよ。フランの槍もすごかったね」
「そうだろ~! 腕がいいからな! ハハハっ」
「ほらね!」
リュカの顔を見ると納得できない!という顔をしていた。
みんなに怪我がないことを確認してまた先へ進む。回収した魔核は王宮へ渡すためアル様に持ってもらう。私たちにかかる費用は国から出してもらうんだけど、倒した魔獣の魔核を渡すことで相殺しているらしい。どっちが儲けているのかはわからないけどね。
祠のある辺りは大きな魔獣ばかり出るそうで魔核も大きくなる。だから絶対国の方が儲けているとアクティオは言っていた。
途中でお昼休憩をとる。平原は良くも悪くも見通しがいいので警戒しながら簡単に済ます。今朝サンドイッチを作ったのでそれをみんなで食べた。私は干し肉があまり好きじゃないので(とにかく硬いのだ)、可能なら自分で作ってもいいから干し肉以外のものを食べたい。そんな理由で作ったサンドイッチは、みんな、おいしいと言ってくれた。
はるか遠くに見えていた山が、少しずつ近づいてきているように思う。私たちが移動しているんだけど。でもまだまだ平原が続き、山へはまだまだ遠い。今日中にあの山のふもとまで行きたいと、フランとアル様が話し合っていた。
時々単体で飛んでくる鳥系の魔獣を落としながら進んでいると、先頭を歩いていたリュカが急に走り出して行ってしまった。
「リュカはどうしたの?」
『ウルフ』
『ああ、魔獣の群れが人を襲っているな』
「え?! 大変じゃない!」
「私たちも行かないと!」
『多分大丈夫よ』
ルキティアの “大丈夫” という言葉の後に、ミカヅキから声がかかる。
『ねぇ、ここに動けなくなってる人たちがいるけど』
「えー?! 魔獣にやられているの?」
『みんな、痛そうだよ』
「大変! ミカヅキ、今どこにいるの?」
『ここだよ!』
すると、前方でぴょんぴょんと飛び跳ねるミカヅキがいた。そして立ち上がったリュカも見えたので、急いでそこへ行ってみると、傷ついてうなっている、冒険者と思われる人たちが5人ほどうずくまっていた。
その5人は痛そうにしているけれど、命に係わるほどでもなさそうだ。多分なるべく背を低くしている方がいいと思ってうずくまって動かないだけだろう。
「魔獣はどこっすか!」
「全部やっつけたから大丈夫だぜ」
リュカとミカヅキで魔獣の群れを倒しちゃうなんてすごい。
「おい、大丈夫か、傷はひどいのか」
「すまない、ウルフにやられた。動けないこともないが…」
「冒険者協会に依頼があったブラウンウルフの群れね。仲間が対処したから心配ないわ」
「治療をしますから、傷口を見せてください。ジークは傷口を洗ってもらえるかな」
「了解した」
アル様とジークで傷口を確認してもらい、ジークが水魔法で洗う。それから私は一応浄化をかけてから治癒魔法をかけた。
他の依頼で歩いていたら、ブラウンウルフの群れが来て取り囲まれたらしい。群れはそれほど多くはなかったけど、入れ替わり立ち代わり襲って来るウルフに手こずったようだ。何頭かはやっつけたけど、体力がどんどん奪われているところになぜかブラックウルフまで現れたので、もうダメかもしれないと覚悟を決めたところにリュカが来てくれたと言っていた。
「それは…どうもすみません」
「え?! なぜ謝るんですか? お礼を言うのはこちら側です。本当にありがとうございました」
『ははは、ルイ、ミカヅキのことは内緒にしていた方がいいな。アレが従魔だと説明すると話がややこしくなる。それにバレる可能性もある』
『アクティオ、わかったわ。ミカヅキには悪いけど、知らない振りをしておくよ』
「それにしても、こんなところにブラックウルフまでいるとは。でもブラウンウルフと戦っているようにも見えたんですよね」
「先にそっちを倒してから、ゆっくりと俺たちを殺るつもりだったんじゃないか?」
「そこへ弓のお兄さんが来てくれて…俺、助かったと泣きそうでしたよ!」
うわ~、ミカヅキ、ごめんね。ミカヅキ、悪役決定だわ。ミカヅキは遠くに行ってもらったので、この場で話を聞いていないのが幸いね。
ほとんどミカヅキがブラウンウルフを倒してこの冒険者たちを助けたのに、結局リュカが来てくれたおかげで自分たちは助かったと思っているみたい。『また俺がいいトコロをもらったな』とリュカが呟いていた。
全員怪我が治ったことを確認してから、彼らと別れた。今回のことは冒険者協会に報告すると言っていたけど、そうすると私たちのことが協会にバレちゃうかな。心配してアル様に聞いたら、協会は私たちのことは把握しているから大丈夫だと言われた。そう言えばウォーターフォードの街の宿屋も協会を通して予約してもらったんだ。要らぬ心配でした。
そのあとは順調に草原の中を進み、私たちは陽が落ちるころ、山のふもとにたどり着くことができた。
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