70. リュカがやってきた
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「あれ、ジーク。まだお城にいるの?」
「今から行って来る」
『はは、ジークは迎えに行くのが野郎だと思うと気が進まないらしい』
「アクティオ、そんなことはない」
今日はリュカを迎えに行く日。仮契約をしているジークが転移の魔法陣を使って迎えに行く予定だけど、私がダンスのレッスンに向かう途中でジークに会った。
私を迎えに来てくれた時は、もう宿屋ウェールの風に来ていた時間だと思うけど。
「気が進まないなら、私が行ってこようか?」
「何?! そうではないから大丈夫だ。今からすぐ行って来る」
『そうよ、ルイが迎えに行ってしまったら、踊りの相手のフランが独りぼっちになってしまうわよ』
ウェンティアさん、多分私が行かなかったらフランはダンスのレッスンは無しになるだろう。だって、ほぼ完ぺきだよ、フランのダンスは!
「ルイは、踊りのレッスンを頑張れよ。当日一緒に踊ることを楽しみにしている」
「ぐふっ、わかりました。頑張ってレッスンを受けてきます」
「では行って来る」
「はい、気を付けてね。行ってらっしゃい!」
私が手を振ると、ジークもぎこちなさはあるものの手を振り返してくれた。あれ、こんなシチュエーション、前にもあったような…って、私も行かなくちゃ!
私はジークを見送ると、ダンスレッスンの部屋に急いだ。
「はい、今日はここまでです。お疲れ様です」
「お疲れ様でした。ふ~」「お疲れっす」
「それでですね、ボル様は今日で卒業となります。頑張りましたね。短期間でしたが、これならご令嬢と踊ってもちゃんとリードしていけるでしょう」
「ホントっすか! ありがとうございました」
「先生、私はどうなりますか…」
「オウカ様は…その…舞踏会ギリギリまで頑張って練習をしましょうねっ!」
「わ、私だけですか? なぜ一瞬目を逸らしたんですか? 相手もなく、一人でレッスンですか!」
「いえ、明日からはミルズ様がいらっしゃると聞いておりますので、一人ではないですよ」
「ミルズってリュカもレッスンを受けるんですか」
「そのようですね。舞踏会まで日がありませんが、教えて欲しいとベイグ宰相より承っております」
「ベイグ宰相…リュカも大変っすね」
「明日からはリュカが相手ね…負けないように頑張らないと」
リュカも王宮に来て早々、ダンスレッスンを受けるみたい。舞踏会当日はリュカも踊るんだね。舞踏会なんて私と同じで出たことはないだろうから、きっと驚くだろうな。いやいや、人の心配より自分の心配だ。私も頑張ってもうちょっとできるようにならないと、ジークも一緒に踊ってくれないよ。せっかくの舞踏会なんだから、せめてジークとは一緒に踊ってみたいな。なーんて!
それから急いでシャワーを浴びて、急いで着替えて、急いでランチの部屋まで行くともう3人そろっていた。フランは支度が早いね。
私がしてもらったように、リュカが来るのをみんなで待つ。主役より遅れてきたのでは申し訳ないので、間に合って良かった。
リュカが侍従さんに案内されて入ってきた。4人で迎えると、リュカのもふもふの耳がピクピクと動く。
「久しぶりね、リュカ。会えて嬉しいわ」
「元気だったっすか。これからよろしくな」
「リュカ、会いたかったよ。よろしくお願いします」
「ひ、久しぶり。俺は元気だ。よろしく」
ジークとはもう挨拶は済ませてあるのだろう、ジークは何も言わなかった。
『テラティオもお久しぶりですわ。これからよろしくお願いします』
『ほほ、リュカともども、よろしく頼むよ。アクティオ、お手柔らかにのぉ』
『俺はいつも優しいぞ』
『テラティオは一番の年上ですから、頼りにしているわ』
精霊たちも久しぶりに会えて嬉しそうだ。テラティオが一番年上って何歳くらいなんだろうか。いや、聞くまい。スゴイ年齢が出てきそうで怖い。
私たちは、すでに自己紹介は済んでいるので、挨拶もそこそこに昼食会を始めた。
「おい、ルイ。俺は食事のマナーなんて知らないぞ」
「今日は昼食だし、そんなに気負わなくても大丈夫よ。最初のお料理は侍女さんたちが取り分けてくれるわ。そのあとは自由で。フランを見習うといいと思うよ」
「そうか、それならまぁ大丈夫か」
円卓で、隣に座ったリュカが心配そうにこっそり聞いてきた。わかるよ、その気持ち。私もそうだったもの!
昼食会は穏やかに進んだ。リュカも口数は少ないけれど、みんなと仲良くやれそうみたい。
私とは同じ匂いを感じるのか、リュカは何かわからないことがあると私に聞いてくる。ジークは、一緒に戦った仲ということで、目に見えない繋がりができたように見える。フランとは、祝賀会で仲良くなったみたい。いつ、そんなに話していたんだろう?
アル様にはあまり話しかけていないように見える。アル様から話しかけられるとリュカは顔が赤くなる。あれは照れというよりは、高貴な人に話しかけられてちょっと緊張するって感じみたい。それもわかるよ。私も緊張したもの!
「そうそう、リュカにルイのこと、ちゃんと言っておかないとね」
「マジでビビるから、心して聞いた方がいいっすよ」
「ん? こいつがレベル5っていうのは聞いたぞ。いまだに半分疑っているが」
「リュカ、それはないでしょ」
「それだけじゃない」
「ルイはね、全属性使えちゃうのよ」
「な、何を言ってるんだ?」
「私、レベル2だけど、光属性以外の魔法も使えるの。便利だから必要な時は言ってね」
「お前、バカじゃないのか?…複数の魔法を使えるのは魅入られし者じゃないのか?」
「ルイ、リュカは口が悪いけど悪気はないから気にしない方がいいっすよ」
リュカにバカと言われた…。全く信じてない様子。
「ね、見てみて。練習してみたんだけど」
私は暇な時間に練習していたことを披露することにした。
左手を前に付きだして指先に魔力を送る。人差し指から小指にかけて一本ずつ違う魔法を送る。そうすると火属性の赤い球、土属性のクリーム色の球、水属性の青い球、そして風属性の緑色の球が現れた。ビー玉くらいの小さな球だけど、指先でクルクルと回っている。
「これ、可愛いと思わない?」
「お、お前、本当はすごいヤツだったんだ!」 リュカは一言多い…。素直に褒めて欲しい。
「すっげー、スゴイっすよ」
「そんなことができるなんて…ルイって本当に並外れているわ」
「ルイ、相当練習をしただろう」
「そうですね。片方ずつの手から2種類の魔法は出せますけど、5ついっぺんに、っていうのはできなかったので練習を重ねて、やっとできるようになりました。でも光属性は魔力の加減が難しくてもっと大きな球になってしまうので、多分レベル2だからできることかも」
『それで、いっぺんに出して何ができるんだ?』
アクティオの言葉に私は固まった。
「…」
『…』
「…特に何もできないです…」
沈黙が続く…。ごめんなさい、特に意味はないんです!
『ほぅほぅほぅ、ルイは魔法が好きなんじゃな』
「! はい! テラティオ、魔法を使うのが楽しくて、いろいろやってみたくなるんです。別に何に使うって訳ではなくても」
「魔法が楽しい、のね。不思議な感覚だわ。だからルイには魔力が多いのかもね」
アル様の言葉にみんな納得しているようだ。ジークの方を見ると、微笑んで頷いていた。
私は指先に出していた魔法を手の中に戻した。
『お、おい! 今何をした!』
「アクティオ、びっくりした! 何って出していた魔力を体の中に戻しただけだよ」
『そ、そんなこと、できるのか?』
「? だって、最初に教えてもらったじゃない。周りに漏れている魔力を取り込むってこと。それと同じだよ。あ、でも大きな魔力は取り込めないから、このくらい小さな魔力しか戻せないかな」
『お前、やっぱりすごいな』
アクティオの言葉に精霊たちが頷いて、なぜかウェンティアだけはドヤ顔だった。
ちゃんと、教えてもらったことを応用して使っているよ。そして、魔法って本当に不思議で楽しいんだもん。いろいろ試したくなるでしょ!
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