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穴から落ちたソコは異世界でした  作者: 森都 めい
第1章 森の中で
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6. スキルの話

お読みいただきありがとうございます。

今回は少しお話が長くなりました。

楽しんで読んでいただけると嬉しいです。


「では、次にスキルについて話しましょう」

「スキル…あ! そういえば、スマホにアプリが入っていたよ。これ、使えるのかな?」

 私はそう言いながら、リュックからスマホを取り出した。


「それ! 朝から音が鳴って、謎な物体でしたわ。一体なんですの?」

「これは “スマートフォン” と言って、本来は電話なんだけど、ここでは電話は役に立たないね。スマホは使えるようになると便利なんだよ」


 説明はしたが『この人は何を言っているのだろう』という顔をしているウェンティア。わからないのはしょうがないね。とりあえずスマホの画面を見せながら、私は昨日見つけた “スキル” というアプリを開いた。昨日は文字がグレーだったけど今日は半分以上が濃い黒色に変わっている。一番上にあった5つの枠は、その一つに “結界” がもうすでに入っていて、その枠は二重の枠で囲まれていた。


「あれ、もう結界が選択されている。他のスキルは、この中から選べるのかな?」

「こ、これは…こんなの、見たことがありませんわ! 一体どうなっているのやら…」

「普通はどうやってスキルを取得するの?」

「ルイにはそこからお話しなくてはいけませんね。スキルはレベルによって取得できる数が違います。レベル1の人は1つだけです。普通の人は日ごろ使っていることに関して特化したものがスキルになります。体を動かすことの多い人が “身体強化” とか、魔法を使うことの多い人は “魔力増強” とかですね」

「なるほどね。じゃあ、スキルって最初からは持っていないんだ」

「そうです。魔力が成長と共に多くなってその人のレベルが決まってくるとスキルも決まってくる、という感じですわね」

「“結界” とか、日ごろ使わないもののスキルは、みんなはどうするの?」

「補助魔法的なスキルは、魔核と魔道具を使って行えます。例えば “索敵” ができる魔道具があります。使われている魔核に魔力を流せば “索敵” が使えます。結構使われている魔道具なので簡単に手に入りますが、魔道具は使われる魔核の大きさによって精度が変わってきますから、その辺りで金額が変わってきますね」


 普通は魔道具を使わなくてはいけないことも、私ならスキルで使えちゃうって、かなりお得なのか。これは有効活用しないと!


「ねぇ、必要なスキルってどれかな?」

「そうですわね、どうしましょうか? ルイはレベル5なので、スキルはあと4つ選べますね」

「ねぇ、スキルって取り外し可能なの?」

「そんなことできません! 選ばれし者の場合は精霊と契約したときと、パーティが見つかった時に選び直しする、多くて5回だけです!」

「なぜ選び直しをするの?」

「重複するスキルは必要がないからです。例えば鑑定のスキル。パーティの誰か一人が持っていれば問題ないのです。レベル3の人はスキルが3つしか選べません。結界は絶対必要なので、残りの枠はあと2つです。パーティ全員で誰がどんなスキルを持つのか考えながら選び直しをするのです」


 なるほどね。私はウェンティアの説明を聞きながらスマホの画面を見ていた。


「これ、結界はもう固定で外せないけど、他のスキルは枠に入れたり外せたりするよ。入れ替え可能なんじゃないかな」

「そ、そんな…異世界人ってそんな特権があるの…恐るべし…」


  “恐るべし” とか、そんなこと言われてもね。できるものはできちゃうんだもん。それに異世界からこんな遠い、月が2個もあるようなところまで飛ばされたんだから、少しぐらいご褒美がないとやってられないよ。


「それでお勧めは?」

「気配を消す “隠密” か、又は情報を隠す “隠蔽” ですわね。ただ…」

「ただ、何?」

「ルイは結界を張るために名乗り出ることはまだ決心がつかないんですよね」

「昨日の今日だからね、決心も納得も全くついてないよ」

「そうですよね…隠蔽は、鑑定で相手を見たとき、自分と同じレベルかそれ以下のレベルの相手しか、情報や精霊を見ることができません」

「とうことは、私と同じレベル5の人なんてほとんどいないから誰も私を見抜けない…ってこと?」

「そうです! ルイが隠蔽していると、ルイが選ばれし者だということは誰にも気づかれないということなんです」

「…ねぇ、他の4人の選ばれし者とどうやって会うの?」


 精霊と契約した選ばれし者は、ほとんどが自己申告だそうだ。魔力コントロールを教えてもらってそれができるようになると、王都にある王宮に行き、自分が選ばれし者だと伝えるらしい。お城に行って『私が選ばれし者なのです!』なんて宣言するなんてちょっと恥ずかしい。


「普通は、王宮へ自ら行って、そこで他の4人と出会うんですけど」

「もし自己申告しなかったらどうなるの?」

「新しい結界が張られた後、3年ほど経つと次の選ばれし者が現れ始めます。現れる、つまり精霊と契約した者がいるということは、国が行っている占いでわかるんです。ですが、現れたのに王宮に来ないとなると、その時は集まった人たちで探しに行きます」

「探すって、どこを探していいのか、わからないんじゃない?」

「おおよその場所も占いでわかります。あとは精霊たちの勘といいますか、引き合う力ですわね」

「じゃあ、もう私が現れたってことも王宮の人たちはわかっているってこと? もし私が自ら王宮に行かなかったら探しにくるってこと?」

「そうなりますね」

「今って、結界が張られてからどのくらい経ってるの?」

「だいたい…4年くらいでしょうか」

「じゃあまだ時間はあるのね」


 でも、私が隠蔽のスキルを使っている間は、探しに来られてもわからないんだわ。だからウェンティアは心配そうな顔をしているのね。


「私が自己申告もせず、探しに来ても見つけることができなかったらどうなるの?」

「それは…私にもわかりませんわ。だって、今までそんなことは起きませんでしたもの。選ばれし者になるってことは名誉なことなんです。それに国のために働くのですから、結界を張った後は国が保障してくれます。今までも何かの理由で王宮に行けなかった人もいますから探しに行くことはありましたけど、見つからなかったことはなかったですわねぇ」


 結界を張れなかったら自分の生活もこの国の人たちの生活も危うくなる。それを守れる力が自分にあるとわかれば名誉のためだけじゃなくても自分から名乗り出るってことか。


「わかった。そのことは心にとどめておくよ」

「ルイにならできると、私は信じています。とりあえず、その話は一旦置いておいて、魔力のことから始めていきましょう」



 今は隠す相手が誰もいないので “隠蔽” はパス、“隠密” を選ぶ。声を出すとか攻撃をするとか、相手に気が付かれたら隠密のスキルは解除されてしまうが、こっそり近づいたりやり過ごすときには使えるので、森の中では必須だろう。

 それと “気配察知” も必要だと言われた。“隠密” は自分の気配を隠し “気配察知” は相手の気配をつかむ。ちょっと忍者になった気分。


「ねえ、“魔力探知” とか “索敵” とか、必要そうじゃない? でも、スキルの一覧には載っていないのよね。どうしてかなぁ」

「だって、それは精霊ができるんですもの。選ばれし者には重複してしまっていらないですわ」

「? 精霊ができればいい話なの? でも一緒にいないときもあるんじゃない?」

「? 一緒にいないときはないですわ」

「私はウェンティアといつも一緒にいるの?」

「そうですよ。昨日からそう言ってると思いますけど…おかしなことを言いますわね、ルイ」


 そう言うウェンティアは、ケラケラと笑った。本当に私がお門違いなことを言っているみたいだ。そういえば、精霊は選ばれし者と共にいるって言われたような…。今までそういう存在がなかったというか、遠い記憶になってしまっていたから全然実感がわかない。


「あとは何が欲しいかな?」

「“鑑定” も欲しいと思いますわ。他の選ばれし者を見つける時などに必要です。それにいろいろな物の説明も見えるので、ルイには楽しいと思いますわね」

「なるほど~。鑑定するとその情報が見れるってものだね。隠密とか気配察知は常に発動されているスキルでしょ? 鑑定もそうなの?」

「鑑定は目に魔力を込めて『鑑定』と思うと発動するので、ルイが見たいと思った時だけですね」


 最後のスキルのひと枠は、その都度入れ替えようと思う。知力、判断力、習得、浄化、薬学、調合、敏捷力なんかが使えそう。

 それと “複製” も便利っぽい。今私が使っている物は前の世界のもの。壊れちゃったらこっちの世界では手に入らないし、オリジナルは残して使った方がいいかなと思ってね。でも、複製の複製は劣化が激しいからやめた方がいいと言われた。やはり複製すると少し劣化するらしい。それを聞いて、食べ物の複製はやめようと思った。だって、劣化した食べ物ってなんか体に悪そうじゃない? 日本の食べ物が今あるものだけになるのはちょっと惜しいけど、これはしょうがないね。


 今のところは “習得” にしておく。知力とどっちにしようかと思っていたら、知力は考える力を補助してくれて、習得は覚える力を補助するらしい。これからいろんなことを覚えて行かなくちゃならないから少しでも多く吸収しよう。



 でも、よく考えると、この “スキル” ってアプリ、私がウェンティアと出会う前からスマホにあったよね。それと、魔力増強の玉の “オーブ” ? とやらのアプリもすでに入っていた。ということは、私がこの世界に来た時から私の運命は決まっていたってことかな。私がこの世界に落ちた理由は、やはり結界を張るために来たってことなんだろう。いずれ私にもちゃんと決断できる時が来るのだろうか。



読んでくださり、ありがとうございます。


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