66. リーガル城へ戻りました
王宮に転移の魔法陣で戻った私たち4人は、陛下の執務室に通された。
「選ばれし者たちよ、よくぞ無事に帰ってきた。疲れているところを悪いと思ったが、無事であることをこの目で確認したくてな。今回の活躍は聞いておるぞ」
「陛下、お言葉をありがとうございます。私たち選ばれし者も、騎士団も、誰も怪我もなく今回の使命を果たすことができました。ワーズコートの街の魔獣討伐は皆の力を合わせて達成できました。どうぞ戻ってくる騎士団にもお言葉をかけてあげてください」
「ははは、アルフォンセが少し興奮気味に報告するとは珍しいな。余程今回の出来事は良かったと思われる。また、皆を集めて言葉をかける場を設けよう。大儀であった」
陛下のお言葉にアル様が答える。陛下が無事を確かめたかったのは、主にはアル様のことが気がかりだったのだろう。
陛下からのお話の後は、ベイグ宰相が引き継いだ。
「皆様、今回の件、誠にありがとうございました。民を代表してお礼を申し上げます。今、お食事をご用意しておりますので、その間少しお時間を頂いて、これからのご予定をお伝えいたします」
「5人目の選ばれし者のリュカには、半月後位に迎えに行くと伝えたがそれでよかったか」
「はい、また日が決定次第ご連絡いたしますが、そのくらいと考えてよかろうかと思います。選ばれし者様たちのご披露の件はもうすでに準備を整え、後は最終確認となっておりますので」
「では日が決まったら言ってくれ。精霊から伝えてもらう」
私の知らないところで、どんどん動いていたんだな。国が行うイベントだから、抜かりはないよね。
「それで、これからの皆様の大まかなご予定ですが、ミルズ様が登上されましたらそれから7日後に契約の儀式、その5日後に舞踏会、その後3日以降の晴れの日に王都内パレードとなっております」
「え、パレード?! って何ですか!」
「王都の民にお披露目よ。盛大に行われるから楽しみね」
そ、そんなことまで…。アル様は楽しみかもしれないけど、私は見る方でいいよ。
「それから、今後のそれぞれのご予定ですが、アルフォンセ皇女様とファイネスト卿には前回同様に、ご披露の催しについて係わっていただきます。アルフォンセ皇女様は最終確認に、ファイネスト卿はまだ遅れている事項にご助力をお願いいたします」
「わかったわ」
「了解した」
2人はイベントの準備の方に関わるのね。大変だわ。でも、アル様とジークは前回同様にって言われているくらいだから、要領はわかっているのかも。王宮としても欲しい戦力みたいね。
私とフランは何もないのかな。半月もの間何をして過ごそう。森に行って、ミカヅキを遊ばせながら私はまた薬草採りでもしようかしら。
「そして、ボル様とオウカ様ですが、舞踏会までに踊りのレッスンをしていただきます」
「は?!」「え?!」
「それが午前中でして、午後は…」
「ちょ、ちょっと待った~! 思い切りサラッと流したっすね。踊りのレッスンとは何ですか?」
「ですから、舞踏会でご披露頂けるよう踊りの稽古をしていただきます」
「私たちも舞踏会で踊るんですか?」
「当り前でございます。皆様が主役ですから。主役が踊らずに他の者は踊れません」
ベイグ宰相、頭の切れる人かと思ったけど、実は腹黒い人なんじゃ…
「そんな短期間で覚えられるものなんっすか?」
「…覚えていただきます」
「今、一瞬考えたっすよね!」
「ふふ、この宰相、言ったら絶対にやらされるから覚悟しておいた方がいいわ」
「アル様…何か逃げ道はありませんか!」
「ないわね」 即答された!
「くぅ~、ルイ、腹をくくるぞ。これから地獄の特訓が始まるようっすよ」
宰相は、他人事だと思ってニコニコしている。その笑顔、ものすごく怖いんですけど。
「では話を続けます。えー、それが午前中で、午後はボル様はファイネスト卿に付いてご披露の催し物の準備の手伝いを、オウカ様はこの国についての歴史と、マナーについての講義を受けていただきます」
「え?! 私だけ?」
「俺は、ルイを待っているときに歴史については講義を受けたっすよ」
「そうなんだ…。でもマナーについてはなぜ…」
「選ばれし者様の今後についてもいろいろ考えなくてはいけませんからね。女性の選ばれし者様は、結界を張り終わった後は貴族の方に見初められてご結婚される方が多いのです。ですから覚えておいて損はないかと」
そんなの、見初められてから始めればいいんじゃないかな…と思ってみんなを見ると、なぜか3人ともうんうんと頷いていた。な、何で~?!
あ…でも、もし、もし、もしも! ジークとそんな仲になれれば私も貴族になるのかしら。
「顔が赤いけどどうしたっすか?」
「え?! な、何でもないです…」
ダメ、ダメ! 今はそんなこと考えない! 落ち着け落ち着け、私!
「わかりました。よろしくお願いします…」
私のことを考えて言ってくれているし、どう考えても決定事項で覆すことはできないよね。私も腹をくくろう。
半月の間何をしようかな、なんて考えた楽しい時間が一瞬でガラガラと音を立てて崩れたよ。
「ルイ、頑張ってね! ぜひルイの素敵な踊りを舞踏会で見たいわ」
「アル様~、もうすでに逃げ出したいです」
「大丈夫よ。王族専属の踊りの講師に任せておけば、必ず踊れるようになれるわ」
「…それって、めっちゃ厳しいってことですよねっ!」
アル様は、すっかり楽しむ方に気持ちが行ってしまっているよ。
「フラン、ルイを頼む」
「ぎょっ、ジークの顔、人に頼むって顔じゃあないっす…」
「そんなことはない。でもルイと毎日踊れるのか…」
「ちゃんと踊れるように頑張るっすから、心配しなくていいっすよ」
「ルイ、当日、一緒に踊れるのを楽しみにしている」
「じ、ジーク…踊れるようになっていたら、その時はよろしくお願いします…」
私は味のない昼食を頂き、どんよりした気持ちのまま部屋を出たところで知った顔に出会った。
「ルイ様、ご無事のお戻り、嬉しく思います。おかえりなさいませ」
「! イアナさん! 待っていてくれたんですか」
「当り前です。私はルイ様の侍女ですから」
「ルイ様、おかえりなさいませ。私もいますよ。お疲れでしょう。ゆっくりとお休みしてください」
「セリカさんも! 2人に会えて嬉しいです」
「ルイ様、大げさですわね。さぁお部屋にご案内いたします」
イアナさんとセリカさんの笑顔を見たら、沈んでいた気持ちも半分位上がった。
それからの日々は過酷だった。
午前中はフランと一緒に踊りのレッスン。背筋をピンと伸ばして踊るから、毎日背中がバキバキになる。ヒールを掃いて踊るから、足もパンパンだ。回復魔法がなければ1日でギブしていた。
フランは、さすがというか、どんどん上手になって、5日も経てば先生からお褒めの言葉をもらっていた。これが身体能力の違いか! そのあとは私の踊りに付き合ってくれたような感じになっていたよ。
午後は、今度は椅子に座って講義の時間。歴史は好きだから、結構面白かった。異世界の国の成り立ちとか、考え方とか。とても興味深かった。
マナーの時間は、一通り教えてもらったら実践だ。アル様とお茶の時間を一緒に過ごしたり、第4皇女様にお招きいただいたという設定でお茶会に参加したり。
第4皇女様は私より5つも年下なのに、ものすごく大人びた女の子だった。まだ高校生の年齢だよね。マナーも完璧でいろいろ教えてもらった。
そんな毎日を過ごしていたある日の昼食の時。いつもはフランと2人でランチタイムだけど、その日はアル様とジークも一緒だった。
「ルイ、明日はお休みだろう? 俺も午後から休みをもらった。ルイは何かやりたいことはないか? もしよければ付き合うが…」
「ジークもお休みなの? そうですね…な、何でもいいですかっ!」
「ん? やけにグイグイ来るな…そ、そうだな、何でもいいぞ」
「じゃあ、私、王都に行ってみたいです!」
「王都か。ルイは行ったことがなかったか」
「はい。ここでは王宮内しかなくて」
「俺、俺も、王都に行きたいっす!」
「は?! 却下…」
「え?! みんなが行くなら私も行きたいわ」
「は?! アルまで何を言って…だから却下…」
「俺、新しい防具が欲しいっす。王都に行きたかったっすよ」
「それなら、私、市場でお昼を食べたいわ。前に食べた串焼きが美味しかったからまた行きましょうよ」
「うわっ、みんなで行けるんですか! すごく楽しみです!」
「むっ、そんなことになるとは…」
「ジーク、2人で行こうとしているなら、こんなところでルイを誘ったらダメよ」
「そうっすよ」
「え、何の話ですか?」
「いや、何でもない」
『ははは、ジーク、観念するんだな。アルの言うようにここで話を出したお前の負けだ』
「アクティオまでそんなことを言う。わかった、わかった。明日は昼を食べながらみんなで王都に行こう」
読んでくださり、ありがとうございます。
面白い、次が読みたい、と思ってくださった方、いいね!や、ブクマ登録、評価をよろしくお願いします。
とても励みになります!




