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穴から落ちたソコは異世界でした  作者: 森都 めい
第1章 森の中で
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2. 契約しました

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 木の陰から現れたのは私の手の平ぐらいの大きさの女の子の妖精。認めたくはなかったが、どう見ても動いているし話しかけられた。やはりここは異世界なのだ。


「あの…妖精さん?」

「えっ? そうですわね、この姿は妖精っぽいけど、私は精霊ですわ。風の精霊のウェンティアと言いますの」

「…精霊さんですか。私は、ルイ、と言います。それで…誰かを探しているようだけど、私じゃないと思う」


 私、精霊の友達なんていないし。あなたに今、初めて会ったし!

 それにしても、この精霊? 私の想像と違うんだけど…金色がかった萌黄色の髪に縦ロール、ふわふわのドレスに編み編みのブーツ。髪の色に合わせたオーガンジーのようなストールが風に舞っていて、羽のようにも見える。名乗りながらスカートをつまみ、片足を後ろに交差して挨拶してくれた姿はスゴク可愛いんだけど、話し方もちょっと変だし、この世界の精霊ってこんな感じなのかな?

 そのお嬢様風な精霊、ウェンティアが両手を広げて話す。


「いいえ、あなただわ。だって体の周りにまとわりついている魔力がすごいもの。これは、かなり多いと思いますわ」

「魔力? …じゃあ、やっぱり私じゃないと思うけど。私、魔力とか魔法とか使えないし」

「え、えー?! あなた、魔法を使ったことないの? ホントに? 本人が知らないだけなのかしら? おかしいわね…。あの、あなたには見えないかもしれないけれど、確かに魔力が溢れ出ているわ。でも不思議ね。普通は魔力って成長と共に徐々に高まっていくものなのに。というか、あなた! ここに、突然大きな魔力が現れたのよね。それもこんな森の奥で…。私にとっては近くにいましたから好都合だったけれど」

「そうなんだ…」


 この精霊、痛いところを突いてくるよ…やっぱりここは森の中で、普通、人はあまり来ないところなんだろう。絶対変に思っているよね。良い言い訳が見つからないからその辺りは触れないでおこう…。黙っていると突然話を切り替えられた。


「それで、契約するわよね!」

「へっ? けいやくぅ?」

「そう、契約よ。そんなに魔力を持っているんだもの。もちろん契約するでしょ?」


 なになに~! この精霊、ヤバめな宗教とか言わないよね。怖すぎるよ、突然契約しようなんて!


「いえ、宗教は間に合っていますので、契約はしませんけど」

「えっ? どういうこと? あなた、そういう話って聞かないで生きてきたの? どんな田舎育ち…いえ、もしかしたら天涯孤独で誰にも教えられていないのかしら…今時こんな人がいるのかしら…それで魔法も使えないのかしら…」


 ちょっと~、全部聞こえているから! なかなか失礼な精霊ね。そりゃあ孤独は否定しないけど。


「ですので、やっぱり人違いってことで…」

「でも、あなたのその魔力をそのままにしておいたら、そのうち魔力が体を飲み込んでしまいますわよ。それに今話した様子だと、あまり世間を知らないのではないかしら。私と契約すれば魔力もちゃんとコントロールできるようになるし、魔法も使えるし、いろいろなことを教えてあげられるわよ」

「えっ、魔力が体を飲み込む?」

「そうよ、魔力コントロールをしないと、最悪の場合は死んでしまうかもしれないわ」


 そ、そんな…私、こんな異世界に放られて、挙句の果てに魔力暴走で死んじゃうの? 


「あなたと契約したら、魔力暴走がなくなるの?」

「魔力暴走? 魔法を知らない割にはそういう言葉は知ってるのね。うーん、そうね、そういう言い方もあるわね。そうよ、しっかり教えてあげるから心配しないで」


 契約することで死から逃れらるのなら、契約するしかないのかな。それに、いろいろ他にも教えてくれるって言ったし。精霊は嘘は言わないのかな? この精霊の言葉は信じていいのかな?

 私は腕時計を見た。今は午後3時前。太陽はだんだん傾いてきている。このままいけば夜になってしまうだろう。何も知らずにこんな奥深い森の中で夜を明かすのは危険極まりない。ここに一人置かれても魔力暴走でなくても死んでしまいそうだ。選択は一択しかない、ということか…。


「わかったわ、あなたと契約します」

「まぁ! それが正解だと思いますわ、ちゃんと考えてくれてありがとう。」

「それで、契約って何をするの?」

「簡単よ、では両手を出して。手の平は上に向けてね」


 私はウェンティアに言われるままに両手を前に出した。するとウェンティアは私の手の上に乗って彼女の両手を置いた。多分、私と彼女の手をつなぎたいんだろうけど、彼女は小さいので私の手の平に乗ることになってしまうのだ。お姉さん風なのにこういうところは可愛らしい。そんなことを思っていると、ウェンティアが唱え始めた。



「汝、いかなる時も我を助け、我、いかなる時も汝を助けよう。汝、求むる時、我も互いに求めあらん」


 そして、私は契約の言葉なんて知らないのになぜか一緒に声を出していた。


「「風の精霊、ウェンティアと選ばれし者、ルイ・オウカとの絆をここに結ばん」」



 言葉が終わったと同時に足元から渦を巻いた風がぶわっと吹きあがった。風と一緒に体中の血液が一旦抜けて、その後また体の中に入ってきた感じがした。ウェンティアを乗せている手が熱い。


「さあ、これで私とあなたの絆が結ばれたわ。あら、どうしましょう…信じられない、レベル5だわ」

 ウェンティアが何かを言っているけど、私は車酔いをしたように、うぷっ、ちょっと気持ちが悪い。その場に座り込んでしまった。


「まぁ大丈夫? そうだったわ、契約の後はみんな気分が悪くなるのよ。座っていて。それとも横になった方がいいのかしら?」

「座っていれば大丈夫…でも何かに寄りかかりたいかも…」


 四つん這いにになって近くの木に近寄り、寄りかかって座る。体がポカポカする。目が回りそうなので、目を閉じる。

 しばらくすると落ち着いてきた。目を開けると目の前に心配そうな顔をしたウェンティアがいてびっくりした。


「ごめんなさいね、契約の後は気分が悪くなることをすっかり忘れていたわ」

「ふふ、大丈夫よ、かなり気分が良くなってきたよ。それにしてもこんなに心配してもらったのは久しぶりかも」

「ルイ…そんなこと言わないで。これからは私が心配してあげるから。って、その前にそんなに心配することはしないでね」

「さっき、初めて会ったのに、私のこと親身になってくれるなんてちょっと変な感じ」



 両親が生きていた頃は、多分すごく大事にされていた。でも一人になってしまってからは大事にされたことや心配されたことなんてあまり感じなくなってしまっていたように思う。私もウェンティアもお互いのこと、まだ全然知らないのに心配してくれるなんておかしな精霊だわ。それともこれが契約の力なのかな。


 気分が良くなってくるとさっきウェンティアが言っていたことが気になり始めた。『レベル5』とか言っていたよね。レベル5って高いのかしら、低いのかしら? 『信じられない』という言葉からすると低いのかな。魔力が多いって言ってたのに…。レベル99の内のレベル5かな? 確かに低い~。まさか、もしかしてレベル999の内の5ってこと? それは確かに信じられない!


「ねえ、レベル5って低すぎるの?」

「え、何を言ってるのかしら? あら、うそ! あなた、全属性持ってるじゃない! え、私が契約しちゃって良かったのかしら…レベルは…他の属性はレベル2だわ…それなら大丈夫なのかしら。まぁ私が見つけて契約できたんだから問題ないわよね。え、あなた、ルイっ! この世界の人ではないの~?」


 ウェンティアは、ブツブツ言いながら私の周りをぐるぐると飛び回り、3、4回驚きの声を張り上げたと思ったら、最後には草の上にうつぶせになり撃沈していた。


「ウェンティア…今度はあなたが大丈夫かな? ねえ、どうしたの? なんかすごくいろいろ言いながら飛び回って最後には地面に落ちちゃったけど…。私にわかるように説明してくれないかしら?」



読んでくださり、ありがとうございます。


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