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穴から落ちたソコは異世界でした  作者: 森都 めい
第1章 森の中で
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1. 穴に落ちました


 今日は晴天! 本当は秋晴れの絶好の山登り日和と言いたいところだけど、気温が不安。朝晩は程よい気温らしいが、日中は結構暑くなるという予報。上着で調整しなくちゃ。

 ペットボトルと昼食用のサンドイッチ。チョコレートとクッキーも入れておこう。タオルを2枚ほど準備。雨具は…今日はいらないかな。あとは、スマホを入れて、小物もろもろを入れて…大丈夫かな。いつもリュックに入れ過ぎちゃうのは私の性分ね。

 帽子を被って、腕時計をして、窓閉めとガスコンロのチェックをして、さて出かけますか!



 近くの山に登る計画をした。もちろん、一人です。今まで一人だったので自分ではそれが当然という感じになってるけど、結構一人で登っている人もいるので私のような人が多いのかな、とも思う。

 今回登る山は3回目。前回は春に行ったので記憶も新しい。電車で登り口の駅まで行って、そこから整備された登山道はちょうど良い登り具合。日帰りで帰ってこれるのが嬉しい。


 休日の少し早めの電車はさすがに空いていた。40分ほど電車に揺られ、駅に着いた。やはり人が少ない。早めに来て正解だったな。空気がひんやりとする。上着を持ってきて良かった。

 周りの木々を見ながら歩いて行く。少し前に歩いていた人たちは早いペースで、もう見えなくなってしまった。鳥のさえずりと、風が葉を揺らす音に自分の靴の音を混ぜながらのんびりと歩いて行く。


 途中で一休み。ちょっと暑くなってきたので上着を一枚脱ぐ。リュックに仕舞いながらペットボトルを出してお茶を飲む。ふー、まだ少し冷たいお茶がのどを潤す。


『それにしても誰にも会わないなぁ』


 この山の登山道はこの道しかないと思ったんだけど、最初に見かけた人たち以外、私の後ろから来る様子が一向にない。まぁ、それもいいかな。山を独り占めしているみたい。


『んん? 何か光ったのかな?』


 周りの景色を見ていると、少し道から外れたところで何かが光ったような気がした。飲み物をしまって登山を再開する前に、光った辺りへちょっと入ってみることにした。本当は入らなくてもいいんだけど、何か気になる…止めようという気持ちより知りたい気持ちの方が大きかった。

 もさもさと生い茂っている草をかき分け、この辺りだと思っていたところには何もなく、もう少し奥に入ってみると、そこには大きな穴が開いていた。


『うわー、こんなところに穴があるなんて! あっぶな~でも何が光って見えたんだろう?』

 そう思って穴をよく見ようと奥深くに目を凝らした。


“ずるっ”

『あーっ何で?』


 足を滑らせた、というよりは何かに引っ張られた気がした。そしてそのままずるずると穴に落ちていく…。そんなに深い穴だったの?と思いながら、落ちる感覚の中で意識を失った。




◇◆◇




「う、うぅ…」


 鳥のさえずりが聞こえる。風が頬を撫でている。草と土の匂いが鼻にかかる…

 私は、薄っすらと目を開けた。木々の合間からの日差しがまぶしい。青い空に白い雲が浮かんでいて、なんとも気持ち良くてこのままもう少し寝ていたい気分だ。というか、なんで私、こんなところで寝ころんでいるんだっけ? ここは外だよね? 何をしていたのか…


 まどろむ中で思考を働かせた。えーと、えーと、そうだ、私、山登りに来たんだ。そして、それから、えーと、!! 穴に落ちたんだ!


 がばっと起き上がってみると、そこは草が生えている少し開けたところ。上を向くと空が見えていた。周りは木々がうっそうと生い茂っていて森のようだった。


「ちょっと待ってよ…私は穴に落ちたんだよね…まあ、落ちたところに草が生えているのはあり得る…空も見えるかもしれない…でも土の壁ではなくて見渡す限り木ばかりっていうのはどういうこと…」


 あまりの驚きに思わず声を出していた。とりあえず、落ち着こう。すーはー。深呼吸を2回ほど。よし、大丈夫。そう思ってまずは自分の体を確かめてみる。ところどころ土がついているようだけど、傷もないし痛いところもないようだ。穴から落ちたはずなのに打ち身も擦り傷もないっていうのもどうかと思うが…とりあえず無事みたい。それから…うん、お茶を飲もう。背負っていたはずのリュックは背中から外れていたが私の手はがっしりとリュックの紐を握っていた。私、えらい!


 リュックからペットボトルを出そうとジッパーを開けて中を見ると…そこは真っ暗だった。

「何これっ」


 一度リュックを閉じる。リュックを確かめてみるが、どこにも破けたところはない。外側は何もなっていない。もう一度リュックの中を見ると、真っ暗で何気に渦を巻いているようにも見える…図書館の図鑑で見たブラックホールの様だ。


「えー、私の飲みかけのペットボトルはどこに行ってしまったの?」

 そう言いながら恐る恐るリュックに手を入れてみると、すぱっと何かが手に入ってきた。取り出してみると飲みかけのペットボトルだった。

「ど、ど、どういうこと? うーん、まぁあればいいということにしよう。いろいろ突っ込みたいが今はやめておこう」


 先ほどから心の声が普通に口から声に出てしまっているが、そんなことは気にしていられない。なんか、あまりにも訳が分からな過ぎて声に出していないと自分さえもどこかに行ってしまいそうだ。ペットボトルをじっくり見たけど、先ほど飲んだものと一緒のようだったので一口飲む。飲みなれた味にやっと少し落ち着いた。


「ふー、体は大丈夫、リュックも中身も…多分大丈夫。ここって一体どこなのかしら?」

 腕時計を見ると11時半。穴に落ちた頃からすると3時間ほど経っていた。それだけ気を失っていたのだろうか。お昼の時間だけど、何となく食べる気もしなかったのでクッキーをつまむことにした。

「クッキーとスマホ」

 そう言いながらリュックに手を入れると何かが手に入ってくる。このスポンって入ってくる感覚には慣れないが今は考えないことにする。


 クッキーを口に入れると甘さが身に染みた。凄くおいしくて涙が出そうになった。

 スマホの地図で場所を確かめたい。今自分はどこに来てしまったのだろう。服の汚れ方をみても、穴に落ちて転がって全然違うところにいるって訳でもなさそうだし、見当もつかない。

 スマホの画面を見ると、なぜかアプリが歯抜けだった。きれいに並べておいたのに、ほとんど消えている。そして当然のことながら圏外だった。地図のアプリはあったので、とりあえず起動してみる。


「まぁ、期待はしていなかったけど…」

 青い矢印が真ん中にあるだけだった。周りはグレー。ここがどこなのか、これだけでは全くわからない。だけどよく考えると圏外なのに矢印があるのはおかしな話だった。ちょっと周りを歩いてみると、確かに矢印は動く。グレーの部分が少し緑に変わった。反応はしているようだけど、なぜ反応するのか意味が分からない。


 地図のアプリを閉じて、他のアプリを見てみる。山登りをするので、コンパスのアプリを入れてある。アプリを指で触り開いてみるとちゃんとコンパスの指針の画面が出た。太陽の位置からして、コンパスもちゃんと反応しているようだ。だけど、経度と緯度の表示が消えていた。うーん、どういうことかな?

 知らないアプリもなぜか入っている。“リュック”というのがあったので開いてみると、ペットボトル…1、クッキー…2、となっている。あ、頭が痛い。どういうこと? なぜこのリュックと連携しているのか? クッキーは5枚持ってきて、3枚食べて2枚はリュックに戻したので、その数を示しているのだろう。めちゃ便利だけど。それと、リュックに入れてきた他のものはどこに行ってしまったのだろう? この様子だと一度取り出せばこのアプリに表示されるのかもしれない。


 あとは “スキル”。こんなアプリ、入れてない。何だろう…というか、何となくわかるけど…。開いてみると5個の枠と、ずらっとスキルらしきものが載っていたが、薄いグレーになっていて触っても何も起こらなかった。とりあえず閉じる。

 それと “オーブ”。これは開いてもただ真っ白な画面だけだった。


 はー、嫌な予感がする。このリュック、そしてスキルという言葉、それとこの景色。これってもしかして、もしかしなくても…と思っていたら後ろでカサカサと葉擦れの音がしたので、振り向いた。



「こんなところにいましたのね、見つけましたわ!」



 ここに来てから初めて人の声を聞いたと思ったら、そこには笑顔の小さな妖精が浮かんでいてこちらを見ていた。

 私の異世界転移が確定された瞬間だった。



読んでくださり、ありがとうございます。


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