16 再会
シエスタの墓参りが終わった事で、この村に来てやるべき事は全て終えたと言ってもいい。
後は明日の帰りの便の時刻まで温泉宿でゆっくりする。
それが良いという話を皆とも……そして宿を取ってくれたシエスタの両親からも進められた。
勿論旅の疲れを癒す事や、その温泉がこのクーライトの観光名所と呼べるような施設だったりするからという理由もある。
だけど一番の理由はアヤだ。
……出発時刻まで宿に居れば、アヤの家族と鉢合わせる可能性を大きく減らせると思うから。
そんな訳で墓地を後にしたレイン達は、再び宿へ向けて移動し始めた。
「……私の所為で窮屈な思いしてないっすかね。ずっと宿に居る感じになっちゃって」
「いや別にしねえよ。そもそも観光目的で来てたとしても温泉が此処の観光名所だろ」
「そうだね。ゆっくりしようゆっくり」
「あ、お風呂入った後卓球しません? ボクはあんまりうまくないですけど」
「アスカの大した事ないだとかあんまりだとか、そういうの全部謙遜にしか聞こえねえよ……」
「兄さん。勝てなくても薬とか飲んだら駄目だからね」
「心配もそこまで行ったか……」
たった一度緊急時に過剰摂取しただけで、信頼がボロボロである。
もっとその一度をナチュラルに『たった』と考えてしまう辺り自分でも良くないとは思うし、そういう所を見抜いて冗談交じりに長い目で見て釘を刺されているのだという事は分かるが。
(……いやでも此処で釘刺されるのは流石に違くないか?)
フォローしようと思ったが限界がある気がする。
「……まあ使わねえよ遊びで薬なんて」
「レインさん、卓球の事遊びだと思ってんすか?」
「話ややこしくしねえでくれる?」
苦笑い浮かべながらそう返答しつつ、適当な事を言ってきたアヤの様子を見て少し安堵した。
まだアヤの様子は本調子からは程遠い。
それでも家族に会わなくてもいいようにという配慮がある程度精神的な余裕に繋がっているのか、この村にやって来た時よりはかなりいい状態だ。
だからこのまま何事も無く王都に戻れたらと、そう思う。
シエスタの両親との対面も、墓参りも無事終わったのだから……このままトラブルが一切なく。
だけどそう都合よくはいかなかった。
宿までの道中で鉢合わせてしまったのだ。
おそらく田舎特有の情報伝達の速さだとか、そういう理屈の外側にある偶然に導かれるように。
「……アヤ。良く戻って来れたな」
アヤに対して静かに、そして鋭く圧を向ける四十代半ば程の金髪の男と。
「………………お父さん」
アヤの父親と。




