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医魔のアスクレピオス~不遇職【薬剤師】はS級パーティを追放されても薬の力で成り上がります~  作者: 山外大河
1章 賢者と薬剤師

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16 これからの色々の為に

「さて、とりあえずこれで三人。冒険者パーティとしてはひとまず形になりますね」


「……そうなってくれると良いんだけどな」


「というと?」


 少し不思議そうに首を傾げるアスカにレインは答える。


「アスカはアヤを頭数に入れているんだろうけど、新しいパーティに誘った訳じゃないからな」


 アヤは諸々の事が有った今でも仲間だと呼んでくれたわけだが、それでも改めて組むパーティに入ってくれるかどうかは分からない。

 当然誘うし入ってくれたら嬉しいなとは思うが……。


「誘えば良いじゃ無いですか。何か問題あります?」


「……」


「……どうしました?」


 どうしたも何も、一つ問題がある。


「いやアスカが入ってくれたのは俺の諸々の事情を話したからって側面があるだろ?」


「え? あ、はい……協力したいって思いましたから。そういう解釈で問題ないと思います」


「だよな……で、そういう理由でアスカを勧誘した以上、アヤに黙ったままでいる訳には行かないかなぁって」


「そういえばアヤさんには目標の話はしてないんですよね……すれば良いじゃ無いですか。それこそなんの問題も無いですよ」


 至極真っ当な事を言うようにアスカは言うが、言うは易く行うは難しという奴だ。


「変な事やってるとか思われたら嫌だなぁって。それきっかけに仲悪くなったりしても嫌だし」


 自身の行動理念をおかしな事だとは思っていない。

 思っていたらやってはいないし、自分自身でそれを否定する事はそれこそ自分自身を否定する事に繋がる上に、それこそここまで自身を導いたシエスタを否定する事に繋がる。


 それ故にそんな事は無い。

 自分のやっている事には胸を張れる。

 張らないといけない。


 だけどアスカにも話した通り、自分でも何を言っているのか分からなくなる位、支離滅裂に聞こえるような話ではあるわけで。

 それを人に話すという事は……ある程度親しくなれた相手に切り出すというのは普通に勇気がいることだ。


 自分の感情はコントロールできても、人の感情はコントロールできるものではないから。

 だからこれまで話してこなかった訳だ。


 そしてそんな発言をするレインに対し、どこか呆れたようにアスカはため息を吐く。


「あの、レインさん。失礼ですけど……立場上ボクが言うの本当に良くないと思うんですけど、すみません……レインさんは馬鹿なんですか?」


「……俺そんな馬鹿な事言ってるかな」


「言ってますよ……物凄い馬鹿な事を。まあ実際ちゃんと話聞かないと滅茶苦茶な事言ってる風にしか聞こえないから気持ちはわかりますけど、そういう大事な話をちゃんと聞かなかったり、聞いて変な印象持つような人なら、アヤさんはレインさんに協力してないと思いますよ」


「……」


「お二人の事は正直ボクはまだ良く知らないです。だけどきっと悪いようにはならないと思います。それはボクよりレインさんが良くわかってないと駄目な事だと思うんですけど」


「……まあ、そりゃそうなんだけどさ」


「分かってて話そうとしないなら、それレインさんがヘタレなだけですよ」


(ほんと悪気なく攻撃力強いなこの子……)


 でも言っている事は事実だ。

 アヤはきっと自分達のような旧医療従事者に偏見を持っていなくて、だからこそ今回の件では一緒に命を張ってくれていて。

 仲間だと呼んでくれて。


 そんな相手に自分のやっている事を話せば、助けられた事でバイアスが掛かっているアスカと同じかそれ以上位には受け止めてくれるんじゃないかと。

 それは分かってはいるのだ。

 だけど些細な事で悪い印象を持たれたくないから話さなかった。

 ……それはヘタレ以外の何物でもないだろう。


(……いや、違うな。ヘタレでもあるって感じなのか)


 自分ではおかしい事は言っていないと思っていても、実際それを人に話す事が億劫になっている時点で、やっている事への自信が足りていない事を表しているのかもしれない。

 ……とにかくその実情がどうであれ、脱却は必要だ。


「……するか、ヘタレ脱却」


 色々な事のこれからの為に、此処は逃げずに一歩踏み出してみよう。


「その調子です。頑張ってください。応援しますよ」


 そう言ってアスカが胸の前で両拳を握ったその時だった。


「あのー、レインさん起きてるっすかー……」


 ゆっくり扉を開きながら顔を覗かせるアヤが目に映ったのは。

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