13 冒険者として成り上がる事について
「えっと……今の流れでも支離滅裂に聞こえるんですけど」
「だよな。自分でも言ってて意味が分からなくなる時がある」
自虐するように小さく溜息を吐いてからレインは言う。
「多分かなり不毛な事を俺はやってるんだと思うよ」
そう思うから余計にアヤにも言う機会が無かった。
「……ちなみにどういう考えなのか、聞いても良いですか?」
「ああ。此処まで言った以上、その先を話さなきゃ訳の分からない奴で終わっちまう」
そして一拍空けてから、そんな不毛で支離滅裂な話を紡ぐ。
「冒険者は俺達薬剤師が関わる仕事としてはかなり特異だ。危険な戦いの最前線で活動し、後方支援とはいえ戦闘にも参加するってのは明らかに他と大きく違うんだ」
だからこそ、そこに活路を見出した。
「まだこういう切り口なら、影響力を得られるかもしれない」
「影響力?」
「さっきも言ったけど俺達はこのままじゃ完全に潰される。そしてそれを変える為の正攻法なプロセスは、旧医療従事者が前に出なければ解決できないような一件が大規模に起きてそれを解決する。そんな事位しかない。そんな事にでもならなきゃ誰も耳を傾けないんだ」
だけど現実的にそんな事はそう起きる事がなければ、起きる事を祈ってもいけない。
ましてや起こす訳にもいかないし、起こさせてもいけない。
「そんなのはあまりに非現実的なんだ……だから正攻法から外れる」
医療従事者として声が届かないのであれば、立ち位置そのものを変える必要がある。
医療従事者という属性を抱えたまま、別の何かになれれば。
「超優秀な冒険者パーティの一員って形になれれば……その中で薬剤師として活躍が出来ていれば。俺の話を聞いてくれる人が増えるかもしれない」
その為に、薬学の力を駆使して冒険者として成り上がる。
そしてそこから旧医療従事者の立場を少しでも……最低限の位置まで引っ張り上げる。
「支離滅裂な話の中身はつまりそういう事だ」
レイン・クロウリーが冒険者として活動している理由はつまりそういう事だ。




