山賊
領土を拡大している大国は、東から西に向けて進んできている。
私は、西へ旅に出ることにした。
森に入って、数日。
持ってきた食料も少なくなった。
食事をとらなくても不死である自分は、死なないが。
空腹は感じる、中途半場だ。
それと同じように切られれば、痛みも感じる。
どうせなら、それらを感じないようにしてほしかった。
山を3つ超えた時。
森の中で、20人ほどの人に囲まれてしまった。
こわもての男達、手には武器を持っていた。
にやにや、と意地のわるい笑みを浮かべている。
山賊だろう。
「おい、金目の物を全部出しな」
「よかった。言葉は通じるようだ」
「あん? 何言ってるんだ」
数百年たっていたので、言語自体が変わってしまうことも考えられたが、
このあたりは、まだ私の知っている言葉が通じるらしい。
「俺たちは、盗賊だ。殺されたくなかったら、金目の物をおとなしくだせ」
「こっちのセリフだ。殺されたくないならとっと、失せろ」
「なめたこと、いってんじゃねぇぞ」
山賊の一人が魔女に近づいて、ほほを引っぱたいた。
魔女の口からは、血が垂れていた。
「これで分かっただろ。おとなしく言うことを」
魔女をたたいた男が言い終わる前に、力なく倒れた。
倒れた男の腹部を大きい木の根が貫通していた。
山賊達の間にざわめきが起きる。
魔女が口から流れた血を手で拭う。
「皆殺しだ」
あたり一面の木がありえない速さで、成長を始めた。
木の枝が、恐ろしいく早く山賊達の体を突き刺す。
数が多く、早くとてもさばき切れない。
断末魔を上げて、大勢た盗賊は誰も立っていなかった。
山賊を始末し終えて、魔女は歩き始める。
数歩、歩いたところで魔女は視線を勢いよく向ける。
殺気のこもった視線が注がれる。
ガサガサ、と茂みが揺れた。
少し離れたところで、様子を見ていた男が血相を変えて逃げ出した。
「逃がさない」
魔女が手を掲げると、成長した木の枝が男に向かって襲い掛かる。
男は、斜面を飛び降りた。
魔女はゆっくりと歩いて、倒れている男に近づく。
銀色の髪をはやした男が倒れこんでいた。
魔女の攻撃をかわしたが、飛び降りた拍子に足をくじいてしまったらしい。
両手を上げて降参の姿勢をしめした。
「待ってくれ、俺は盗賊じゃない。あんたに危害を加えるつもりもない」
「なら、どうして盗みをしていたの」
「俺は近くに住む。村人だ。ここ最近、盗賊の被害が起きていたから、村の男たちは、警備をしていたんだ。
それで、たまたま盗賊たちを見かけて、拠点をこっそり調べようとしていたんだ。
だから、頼む。 見逃してくれ」
「・・・・・・」
どうしたのものか。
私は、思案することになった。