降ってきた厄(わざわい)
商人が帰ってからしばらくしてのことだった。
いかにも人相が悪い男たちが村にやってきた。身体も大きい。全部で5人だ。
腰には剣をぶら下げている。長い槍を持っているのもいた。
今まで、この村に、こんなやつらが来たことはなかった。
男たちは、村の中をキョロキョロしながら歩き回る。
何かを探しているようだ。
「ああ、いたいた。あいつだ」
1人の男がヴィーを指さした。
「おっ、確かにそっくりだ」
「よしっ」
もう1人の男が剣に手をかけてヴィーに近づいた。
まわりでは村人が不安そうに見ている。
「心配するな。俺たちはそいつを連れて帰るだけだ。抵抗しなければ何もしない」
リーダーっぽい男が村人に向けて、大きな声で言う。
それからヴィーに向かって、
「おい、そこの。これから俺たちと来い」
そう言われてもヴィーは無表情だった。
近くにいた大人たちはおろおろと見ているだけだ。
「なんで?」
リーが大声で聞いた。
「こいつはな、帝国の兵器とそっくりなんだ。こいつがいるだけで誰でも勝手にびびってくれるからな」
男たちは、抗争の時、相手を脅迫するときにヴィーを利用しようと考えていた。相手をびびらすだけなら、そっくりで十分だ。
しかし、リーには、男たちが言ってることが、わからなかった。
ただ、ヴィーを連れていく、それだけはわかった。
男たちは、街の飲み屋で商人からマギロイドにそっくりな少年がいることを聞いた。
商人には悪気はない。ただの受け狙いの話のはずだった。
それを聞いた男たちは、(これは利用できるな)と考えたのだった。
村の大人は、年寄りと女だけだ。男の大人は出稼ぎか、森の中だ。
何もできない……。その場にいた大人はみなそう思った。
「やっつけたほうがいいのか」
リーの不安そうな表情を見て、森の狼や熊と同類のように思ったのだ。
「できるの?」
「問題ない」
ヴィーがそう言うやいなや、まわりにいた男たちの腕や足から血が噴き出した。
「何をやったんだ……」
男が血まみれの腕を押さえている。
「魔法……」
ヴィーが、ささやくように言った。
「もしかして、本物か?」
「まさか……。そんなはずはない……」
「でも、こんなことができるのは……、マギロイドしか……」
男たちは兵士崩れだった。戦場でマギロイドの戦いは何度も見ていた。
目の前に立つヴィーを見た男たちは、
(死ぬのか)
全身に鳥肌が立った。
「やばい!逃げろ」
一人が叫んで走り出した。
他の男たちも後に続く。
「やったー!」
村人は歓声を上げた。
その中でもヴィーは無表情だった。
「逃がしていいのか」
ヴィーが聞いた。
「大丈夫だよ。あんなに血の匂いをさせて、無事に森を抜けられるはずはない」
村の長老が言う。
「人は殺さんほうがいいだろう」
「うん、それでいいよ」
リーはヴィーに言った。
村には平穏が戻ったかのように思えた。
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長老の言ったとおり、男たちは森の中で狼や熊に襲われた。
しかし、一人だけが生き残って街にたどりついた。仲間たちが襲われているすきに、うまく逃げ延びることができたのだ。
その男は、ボスの前に引き出された。
「失敗したようだな」
ボスにそう言われて、男は生きた心地はしない。とにかく言い訳が必要だ。
「本物のマギロイドでした」
「ほ、本物!本当か?」
「はい、間違いありません」
男は、村でのできごとを説明する。
ボスと言われる男は、顎髭を弄りながら、男の説明を聞いている。
「あの戦争でリセットされたとき、たまたま村人の誰かが主となったのか……」
「どうします?」
「もう一度リセットすればいいじゃないか」
ボスは、ニヤニヤと笑いながら答えた。
「それはどうすれば?」
「確か、主が死ぬとリセットされるはずだ」
「でも、誰が主か……」
「そんなの村人全員を殺せばいいだろう」
「なるほど、さすがボス」
「マギロイドが手下となるのか……」
ボスは、薄笑いを浮かべた。




