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出陣

 帝国の北方の国々への侵攻は時間がかかっていた。

 山や森の多い国なので、兵士が森に潜んでゲリラ戦を始めたのだ。

 マギロイドを投入して陣地や街を占領しても、山道を通る補給部隊などを、少人数で襲撃して、帝国軍に被害を与え続けていた。


 帝国が北方の国々を侵略しようとするのは、自然が豊かで、多くの魔素があるからだった。

 魔素は、この世界のエネルギーの源であり、最高の資源とも言える。

 それを手にすることで、ソフィーネ王国をはじめとしてそのほかの国々を侵略することが容易になる。


 とはいえ、ソフィーネ王国への侵攻を止めたわけではない。本体を投入する準備段階として、少数だがマギロイドによる結界を破る攻撃は続けていた。


*****


「センに防衛に出てもらえないかな」

 デルタに呼び出されて、そう言われた。

「センは奥の手ではないのですか?こちらにマギロイドがいることがわかると、帝国も大量投入してきますよ」

「確かにそうなんだけど、事態はかなりやばくなってきたんだ」

 フェイルノートを投入して、第3世代までは22体を撃破した。それで第4世代以上の投入数が増えてきた。もう王国兵だけでの防衛は厳しくなってきていて、帝国の人間の兵士を攻撃することで、なんとか退かせることしかできていなかった。


「それに北方の国々の援護もしたい。北の戦線が長引けば、こちらにとっても有利になる」

「わかりました。センと一緒に防衛に出ます」

「頼む。行ってほしい戦場はここだ。守備隊長には伝えておくから、明日にでも向かってくれ」

「はい」


******


 エムとセンは、ミィをいつもいく食堂のおばさんに預けて前線に向かった。

 調査のためアルファも同行することになった。

「すまないね」

「いえ、それだけの戦況になったということですね」

「そうだ。帝国も、どんどん上の世代のマギロイドを投入してくるんだ。私が同行するのも、新しい戦術の開発も考えてのことなのだ」

「こちらはセンだけですからね。戦場はいくつもできているのに……」

「ああ、そうなんだ。なんとかしなければ……」


*****


 指定された戦場では、ミラー中尉が迎えてくれた。この地域の指揮官だ。

 戦場には、様々な匂いが漂う。焦げた匂い、むき出しの土の匂い、そして鉄の匂い……。 鉄の匂いは、血の匂いでもある。


「戦況はどうですか」

「厳しいです」

 指さした先を見ると、多くの負傷した兵士が、地面に横たわったまま魔術師の回復魔法で手当を受けている。

 誰もが疲れ切った様子だ。

 そして、センへの眼差しも冷ややかに感じる。


 ミラー中尉に案内されて、この戦場の司令部の幕舎へ行く。

 ここで戦場の状況の説明の予定だ。


「あいつらに、俺たちの仲間が殺されたんだ!」

「俺たちだけでも戦える!」

 幕舎の外から、兵士たちの声が響いてきた。

 帝国のマギロイドに多くの仲間を殺された。その恨みがセンへも向けられている。

 入り口に多くの兵士が詰め寄っているようだ。

 何人かの幹部が外へ出て、説得を試みるが、

「もし裏切ったらどうするんですか。俺たちは全滅ですよ」

「絶対そんなことはない」

「俺たちだけでも戦えます」

「いや、もう無理だろう」

「できます。俺たちを信じてください」

 そんな押し問答が続いていた。


「今日のところは、いったん宿舎に戻ってくれないか」

 ミラー中尉がすまなさそうに言う。

「わざわざ来てもらって、申し訳ない」

「いえ、みんなの気持ちを考えるとしょうがないです。私でも、きっとそう思います」

「ありがとう。状況が変わったらまた声をかける」

 エムとセンが幕舎の外に出た。波が引くように兵士たちがサッと離れた。

 その兵士の間を、二人はゆっくりと歩いて宿舎へと向かった。


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