預言者
「待った待った。落ち着いていこうぜ。相手はまだ反撃も、名乗りもしていないんだぜ」
「上左近幾朗の言う通りだ。挨拶すらさせてもらえないとは思わなかったよ」
「ゲーム内で本名言われるのはすっげぇなんか不愉快だということは分かった。けど、お前は何なんだ? ID情報盗み見てる運営の化身か何かか?」
空いている右手を横にすくうように左へ持っていって軽く会釈をした相手は、自分こそが預言者だと名乗った。
「運営とは何かね? 聖王のことかな? 残念ながら聖王は我らの敵だね。ああ、君たちの名前が分かることだったね? 私は預言者だよ? 君たちのことも知識として得ることが出来るんだ。君たちが異世界から来ている存在だということもね」
「第四の壁破りか? 難しいキャラを出してくるものだ」
おお、フライハイトは第四の壁を知っているか。そっち方面でも話が出来そうだ。と、今は彼の評価は関係ないな。
「ようやく分かった。この曲もクラシックだ。イントロがなかったから気づくのが遅れたけど、これはオペラ【預言者】で使われる戴冠式行進曲だね。戴冠式でも行進中でもないから、たぶん預言者にかかっている。今までと同じだよ。生演奏だけど」
急にひとりでに鳴り出した楽器の奏でる曲のことだろう。サントノーレが解説してくれる。俺等の中で一番クラシックに縁があるのが小学生のこの子なんだよなぁ。今までBGMなかったのにここで生演奏はなかなかしゃれている。
ふと聖王長の顔が浮かぶ。余計なことは言うなよ、と釘を差された気分になった。預言者が聖王とか言うから。
「こいつです。こいつが六体の悪魔の頭領、預言者プロフィットです。顔のない悪魔! 利益を偽るものです!」
ブルーキャバリアのハインリヒさんが叫んだ。
「うるさいですね」
未だに大きな本を開きながらこちらに空いている右手を向けた。やばい予感がしたので、スクリーンバリアを咄嗟にはった。
ドラゴンのブレスなみの強い炎が手のひらから噴出した。そんなわけはないので魔法なのだろう。ドラゴンのブレス並であっても所詮はただの炎なのでバリアで防ぐのは容易だ。半分も削られていない。
「ふむ。それがありましたね。では戦闘開始と行きましょうか。私にとっても貴方がたを倒すのには大きな利益がありますので」
ふわっとそいつが浮いて攻撃を本格的に始めてきた。
言うなって言われてたから、言わないし、そういう雰囲気でもなくなったから助かった。
が、皆は異世界から来た、ってのをコラボ先から来たって解釈したのかな。
もし本当にそうならいいんだけど。
運営がゲームとして俺達のIDを盗み見て、本名をパーティメンバーにも周知する、って意味が分からないんだよな。そんなことをする意味が思いつかない。
逆にあるいは本当に俺達の何かを見て知って、それを見せつけるために言い出した、の方がある程度分かるんだよな。




