嘘
「あらかた片付いたな、あとは現地の人でもなんとかなるだろ」
「もうすでにシャリーさんたちは森を抜けてきているみたいだしね」
「頃合いかもな。城に攻め入ろう。現地人はどうする?」
「敵の魔法対策にブルーキャバリアと魔法使いはついてきてほしいが、ブルーキャバリアのハインリヒさんはともかく魔法使いは護衛なしでは怖いよな。けど俺等が護衛している余裕はないと思うし」
「どうせ短期決戦にしかならないからエンチャントかけてもらうだけでいいんじゃないかな」
「ブラックキャバリアの人はどうする?」
「戦力として惜しいが、本来エマの護衛らしいし、あまり使うのもな。二人に決めてもらおう」
代表して俺がブラックキャバリアの二人に聞いたところ、一人だけついていってブルーキャバリアの護衛をしてくれることになった。もう一人は本来の任務に戻ると。
残ったのはフォードさんだった。
魔法使いと戦士、神官戦士も戻ってもらう。その際にありったけのバフを貰った。これでしばらくは魔法使いやブリーキャバリアに頼らなくても霊体を撃破することが出来る。
「おのおのバリアは回復してるよな。各種チェックもOK。それじゃ預言者とやらに会いに行こうか」
ふと後ろを見てみると赤いキャバリアが見えた。こっちに向けて祈ってくれているようだ。軽く手を上げて挨拶しておく。
「よし、城の中は慎重に行こう。俺が前に出る。なるべく一直線に俺の影に入るようにしてくれ」
「パーソナルフォートレス前衛でいくなら俺が殿するわ。狭いからミサイルや神の歌は期待しないでくれ」
城に入ったあとは、魔物たちが激減した。たまに思い出したかのように不意打ちをかけてこようとしてくるが、俺等にはレーダーがあるからだいたい筒抜けだ。
魔法で隠れてくるやつもブルーキャバリアのハインリヒさんが対抗魔法で看破してくれるから助かっている。
大きな部屋を二つくぐり、最奥に到着したと思う。二つの部屋にはそれぞれ中ボスと思われる巨大なヒドラと魔法使いのような格好をした見覚えのない大きな獣人がいたが、一蹴した。獣人は倒した直後に骨だけのアンデッドになって復活したけど、ハインリヒさんにあっさり退治されていた。
「さて、そろそろ預言者さんに出てきてもらわないと困るんだがな」
中ボスらしきやつらがいたような部屋の作りだ。今までと違うのは奥に進む扉の代わりにピアノらしきものが置いてあり、周辺の壁にはさまざまな楽器が飾られていることぐらいだ。
「お待たせしました。郡山聖」
何もいなかったはずの空間にいつの間にか出現していたのは、顔だけが何故か認識できず、モザイクのような、ノイズがかかっているかのようで見えない人型だった。手には片手でなんとか持てるか、といった分厚いハードカバーの本を開いて持っている。
「おいおい、本名呼びはないんじゃないか?」
前に持った疑いが再び持ち上がってくる。
問答無用と、ジョニーMが相手に無反動砲を放ち、命中した。
が、俺等のバリアみたいなエフェクトが出ていて、やつは無傷だった。
「やれやれ。呼ばれたから来たというのに臥竜岡美桜はせっかちなのだな。演奏もまだだというのに」
そういって相手は空いていた手で指揮をするように振った。すると周りにあった楽器たちが一斉に自動演奏しはじめた。俺には聞き覚えのない曲だが。……今まで通りだったらなにかのクラシックなんだろう。
ん? 臥竜岡美桜って誰のことだ? みおだから……田中さんのことか?
ジョニーMが隊列を無視して突っ込んでいってしまう。怒ってる? しかしわざわざ俺の本名も言いやがったし、ということは田中さんは本当は田中さんではない?
「どうした、ネ・ムイ。うかつだぞ!」
思わずフライハイトが非難するようなことを言った。まあ実際これでイベントキャンセルとか起こってしまうしな、このゲーム。俺はソロだから気にしたことがなかったが、みんなで初見イベントミッションとかなら、そういう文化もありそうだ。
「だって、こいつ、私のほんみょ……」
言いかけて止まった。もうほとんど言ってしまったようなものだけど、これは認めたも同然ということだ。すなわち、俺にはどうでもいいことだが、田中さんは実は臥竜岡さんで、俺達に嘘の名前を名乗っていた、ということだ。
それにそのおかげでもう一つ分かったこともある、が。




