閑話
かみさーに飲もうぜ、と誘われた。デスマーチ中はそんな余裕ないし、そうでないときは俺は付き合いが悪いと皆に知られているので誘われることもないから、たまには乗らないとな。さっき出会いガチャの話しておいて乗らないのはなぁ、とか思っていると、勝手にどんどん話が進んでいっていた。
メイドさんによると、銘柄の指定は出来ないけど、お酒自体はそれなりに確保されていて、旦那様からも振る舞って良いと言われているそうだ。
カクテル系もだいたい用意できるそうだ。なんでもバーテンダーの資格を持っている執事もいるらしく、旦那様専用スペースまであるそうだ。さすがにそこは旦那様専用なので案内できないが、そこから持ってくることは可能らしい。……ホテルのバー並になってしまったな。
注文は呉くんがビール、かみさーはブランデー、田中さんは甘いカクテルを所望していた。俺もカクテルにすることにしたら、そのバーテンダーの資格を持っている執事の方が来られてお酒を提供することになってしまった。
余計な仕事を増やして申し訳ない、と話していたら、ほぼ旦那様専属であるが、たまにお客様に振る舞うのでまったく仕事の範疇のうちだと説明され、俺以外の若い子たちがお客としてくることなどなかったのできっと楽しい仕事になると思っていると言われ、皆で恐縮した。
出てきたのは呉くんのビールは、この辺の地ビールらしいヴァイツェン。かみさーのブランデーとして出てきたのがコニャックのXOクラスで旦那様の普段飲み用らしい。たぶんすごい高いぞそれ。
田中さんの甘いカクテルという要望はいろいろ質問されて、最後のメジャーなものかマイナーなもの、どちらがいいかを聞かれていて、メジャーなものを頼んでいた。俺も色々と質問されたが、マイナーなものを頼んでみた。
田中さんに出てきたのは小さな金属製のマグカップに入ったおしゃれでもなんでもないものだった。中身はモスコミュールらしい。俺のは言うほどマイナーではないかもしれないがと言われたヨコハマというものだった。
「このビール、おいしいな。普段飲むビールとは全然違う気がするけど」
「コニャックのXOってナポレオンとかより上とちゃうん? なんつーか俺じゃもうよく分からんわ」
「モスコミュールなのにモスコミュールじゃないみたい。これが本物?」
「俺は聞いたことなかったからマイナーでいいと思うけど、これおいしいな。けどけっこうアルコール度高そうだから、あまり飲めないな」
とまあ、話はずっとお酒の話になってしまった。つまみとして出された乾き物もおそらく高級品なのだろう、食べたことないってレベルでおいしかった。そしてなぜか振る舞われたグラタンが絶品すぎた。
途中、一瞬俺は何をやっているんだろう?と考えてしまったが、すぐにまあいいか、楽しいし、でそんな考えは消え去っていった。
明日があるのであまり酔わない方向で頼んでいたので、徐々にアルコールでなくノンアルコールになっていったけど、それも好評だった。お酒が飲めないお客様のために常に準備されているものらしい。
そんな風にそんなに飲まないまでも高級で普段は飲んだこともないものを飲んだので皆は大盛りあがりだった。
もちろん大声で騒ぐようなことはなかったし、傍目には静かに飲んで話しているという風に見えたかも知れないが、皆興奮している感じだったな。
話にも熱が籠もっていると言うか、アルコールが入ったからってのもあるだろうけど、警戒心なく旧来からの親友のように皆が振る舞っていた。
毎回こんな感じなら俺も付き合い良くするんだがな。
飲み会は健康的な時間にお開きとなり、バーテンダーの執事さんやいろいろとつまみやあてを出してくれたりしたメイドさんにしつこくなりすぎない程度に感謝を重ね、明日に備えて早めに皆寝ることにした。




