出会いガチャ
大変豪華で美味しく、また緊張した夕食を終え、なんと家にある大浴場に入れさせてもらい、なんだか出された浴衣を着て、すっかり片付けられて開放された食堂で、旅館に泊まっている気分で野郎三人でくつろいでいた。
メイドさんから飲み物を出してくれると言われたので、俺は選択肢にあったコーヒー牛乳を思わず選んでしまった。呉達也くんと上左近幾朗くんこと【かみさー】はそれぞれフルーツ牛乳に牛乳だった。
俺は基本的にリアルでは甘いものを飲まないようにしているが、昔ながらの瓶に入ったそれらを見せられては我慢など出来るはずもなく。
「なんだか思いも寄らない方向に来てしまったな」
達也くんがぼそりと言う。
「それな」
かみさーも同意する。
「こっちはまったく欲目も何もなかったんだ。ご相伴にあずかれるものはあずかったらいいんだよ」
あえて年上の者として二人に意見する。本心はどきどきなんだが。
「九角グループの副総帥だっけ? 俺の親父でも会えないレベルの人に頭下げられちまったよ」
「正直な話、今僕が将来入りたいと思っている企業が、九角グループ傘下の会社なんだよなぁ」
「そうなんか。俺の親父もそれなりなはずだが、大滝さんにはまったく敵わねぇだろうしなぁ、いい縁が持てたって思った方がいいんじゃないか」
かみさーの言うとおりだとは思うが、呉くんとはしては複雑なようだ。
「あまりそういったコネは、ね」
「……あー、うん。分からんでもないな、確かに」
「コネ、か。俺も分かるつもりだが、そこは考え方だと思うぞ」
「考え方?」
「世の中金や頭がいると思われているけど、一番いるのは出会いガチャ運だからさ」
「出会いガチャ運?」
「そうさ、いくら頭が良くたって、それを評価してくれてうまく使ってくれる人と出会えないとあまり役に立てないし、有り余る金があってもそれを自分一人だけでは運用できないだろう? 出来たとしてその金で何をするんだ、って話になる。良い出会いが出来た時はそれに感謝しつつ利用するべきだと思う」
「そんなものなのかな?」
「そんなもんさ。自分一人で出来ることは少ない。それはゲームでだってそうだろ? 俺はソロ専だったから今身にしみてるぞ? 俺は君たちと知り合えたからこそ皆で挑む面白いゲームをたくさん体験できたし、明日はもっと面白そうだろう? これも立派な出会いさ。呉くんがサントノーレや皆にも声をかけてくれたおかげで今がある。俺達の出会いガチャ運はすごく良い目が出た、と考えていいだろう。そのガチャは君が回してくれたんだ」
「確かに皆に声をかける時は緊張したな。最初に帰ってきた返事が拒絶だったから余計に」
「はっは。そいつはとても残念な判断をしてしまったということさ。けどまだ自分の判断の間違えで出会いがなかったというやつはましな部類なんだ。どんなに頑張っても良い出会いができないってことはある。だから当たりがあるかどうかも分からないガチャを回しているようなものなのさ、出会いなんて。だからこそそこから生まれるコネクションは大事にした方がいいと思う。あってもうまく使えないこともあるし、使えるなら使えってことだと思った方が楽だと思う」
「そうですね。実際、僕ごときを副総帥が覚えてくれているとも思えないし。なるようにしかならないならなるように頑張るだけですね」
「なーに話ししてるんですか?」
おおっと、話に夢中になっていて、近づいていた田中美桜くんと大滝弓子ちゃんに気づいてなかった。
二人とも俺達とは別の浴場に入っていたらしく、田中美桜くんは俺達と同じような浴衣を、大滝弓子ちゃんはおそらく自前のパジャマに湯冷めしないためか俺等と同じ半纏を羽織っている。
「私はもうすぐ就寝の時間だ。大人はまだ起きていていいんだろう? 私も皆と話がしたいが仕方ない」
「おー良い子だな。大人になるとあまり長い時間眠れなくなるんだ。まだここの三人は大丈夫だろうが俺ぐらいになってくると寝たくても寝れなくなってくる。だから子供の頃はよく寝た方が良い、どうせろくな話もしないさ」
「そうなんだ。今日はもう眠いや。おやすみなさい」
そう言って、弓子ちゃんはメイドさんに連れられてたぶん自室に戻った。
「さて、じゃあ僕等はどうする?」
「あー、さっき弓子ちゃんのお母さんと話しできたんだけど、食堂自由に使っていいって。メイドさんたちもいつものルーチンワークじゃなくて楽しんでるから飲み物とか食事とか頼んでいいってさ」
「それじゃ親睦を深めるために明日に影響でない程度に飲もうぜ」




