すぐです
「はぁ?!」
四人の声がハモった。
いや、怪しいとは思っていたんだ。サントノーレって名前は、フランスのお菓子の名前であって、野郎ならあまりつけない名前だとは思っていたから、女性かもしれないとは思っていたんだ。けど女性がいかついおっさん兵士のアバターを使うかな?とも思っていた。
しかしそれらの予想を上回ってきた。小学生? 見た目は長い黒髪ぱっつんの女の子でかなり可愛い部類だ。
いやでもまだ名前だけだから小学生に見えるだけかもしれない。けど服装は一目で高価な仕立てだと分かるものの、大人はもちろん中学生でも身に着けるか?といったセンスだし。ランドセル背負って黄色い帽子をかぶれば似合いそうまである。
「私はまだ十歳なのでここにいる武田が今回の件での後見人みたいなものとなります。お金持ちなのは私の親なのは承知しておりますが、ある程度自由にしていいとなっております。ですので皆様には高待遇でと思いました。最初にお聞きしておきたいことがあるのですが……」
十歳、だと……。俺が十歳の時とかただのはなたれ小僧だった記憶しかない。大人に対しこうも堂々と話ができた気がしないよ。
質問を受けていたから俺はなんとかうなずいた。ちらっと皆を見たが、皆もうなずくだけでいっぱいのようだ。
「ありがとうございます。皆様のゲーム内でのお名前は把握しておりますが、ご本名、リアルでは本名で呼んだ方が良いときもあると思いました。が私はどう考えても最年少です。そんな私が皆様をお名前で呼んでいいのか?と思いましたが、他に適切な方法も思いつかず。失礼にならないならお名前で呼んで構わないでしょうか?」
またもちらっと見る。皆当惑するばかりで、あまり何を問われているのか、いまいち理解できていないように見える。……ここは最年長である俺が一番先に答えたほうがいいだろう。
「ああ、構わないと思う。俺は名前が聖でプレイヤーネームもヒジリだから、ひじりさんや呼び捨てででもいい。もちろんおっさんの俺を名前で呼び捨てが違和感がある場合は、郡山さん、でいいんじゃないかな?」
「僕も同じかな。フライハイトで呉達也だから、呉さんが言いやすいかもね」
「えっと、俺がウォーモンガーだ。君、大滝さんも歴戦の兵士のアバターを使っているなら分かるだろうが、へんな趣味があってあのアバターってわけじゃないからな。あー、上左近幾朗って名前なんだが、どっちも呼びにくいだろう? 皆からはよく、かみさーって呼ばれているからそれで」
あだ名で呼んでいいと言われても、初対面からではなかなか難しいのも確かだ。俺もまだ上左近くんという認識だしな。けどこれからはかみさーと呼んでやったほうがいいのかもな。
「ネ・ムイってふざけたプレイヤーネームだけど、田中美桜です」
ん? 田中さんの目線が武田さんにいってないか? なんでだ?と思ったら視線が大滝さんに移った。動揺してたのかな?
「普段は別のアバターなんだけど、皆さんと会った時は、フォックスハウンドを使う時専用みたいな感じで使っていて。あのその、見た目変わること多いと思います。田中もしくはみおでいいですよ。こちらは大滝さん? それとも弓子さんがいい?」
おお、俺等では聞きにくいことを聞いてくれた。
「ひじりさん、くれさん、かみさー、みおさん、でいいかな? 私はもしかすると両親も挨拶に来るかもしれないので、弓子ちゃんでいいです」
「いや俺がそう言えって言ったからいいけどさ。俺だけさんなしなのな」
空気を読んでか、あるいはわざと読まずか、上左近くんがクレームをつける。
「それじゃ、ウォーモンガーは一生上左近さんって呼びますね」
皆が笑った。弓子ちゃんも先程からの緊張した表情がいい笑顔に変わった。返された上左近くんの様子を見ていると、……わざとだったようだな。おどけて見せてくれているようだ。
「俺と呉、田中さんは同年代みたいだけど、郡山さんと弓子ちゃんは突出して離れているからな。どう扱っていいのかいまいち分からねぇのよ。郡山さんなら弓子ちゃんぐらいの年の子なら接し慣れているかもしれんが」
「すまんな、俺は子供がいるどころか独身だし、なんなら社畜だからな、彼女もいたことないからご期待には添いかねるな」
「そうなんか。俺らから見ても郡山さんは大人だからさ。……将来が怖いぜ」
俺たちがじゃれていると、武田さんがこほんと場を収めて、弓子ちゃんが話し始める。
「えーっと。それでですね。長旅お疲れ様なんですけど、先程【ミッションブレイク2】のアップデートが行われたようで、いろいろときたようですので、一戦どうですか?」
「おー、アップデートがきたんだ。相変わらずの運営だな。でも家庭用だよね? あいにく持ってきてないんだけど」
そういえば呉くんはかなりの軽装だったな。俺は念のため持ってきていたが。
「いえ、アーケードでです」
「今から行くのか?」
「はい、すぐです。我が家にありますので」




