豪邸
「もうすぐ到着いたします」
たぶん運転手さんから声がかかった。なぜ多分かと言うと運転席助手席と後部座席の間には物理的な壁が作られていて前は一切見えなかったから。最初の方に話題に出ていて、独自仕様の防弾用の壁ではないか、ということだった。
会話に夢中になっててもう三十分も過ぎたのかとなってしまった。
「合流してからどういう予定だったっけ?」
「それがサントノーレに任せたんだよ。宿も取らなくていいってな」
「そういや俺も取るなと言われていたから宿は取ってないぞ。いざとなったらそこらの安宿にでも駆け込めばいいか、と思って」
大阪なら安宿も、高級ホテルもいっぱいあるだろう、と。高級ホテルは飛び込みで入れる気はしないが、別にシーズンとかでもないし、どこかあるだろうと高をくくっていたな、そういえば。
「俺は京都だから日帰りでいいか、と思ってた。そういや皆は泊まるところが必要だよな。どういうことだ?」
ここからは声のトーンをかなり落としていたのでかなり聞き取りにくかったがなんとか聞こえた。
「こんな扱いしてるってことはサントノーレは超大金持ち、ってことか? うちもそれなりだと思ってたが、こんなレベルなんか親父の付き合いにもあるかどうかだぜ」
「車のことは趣味で知っていたけど、僕はただの庶民で、普通に金欠だから助かるといえば助かる、けどな」
「確かに、運転手付きのここまでの車とか日本でもトップクラスでないと無理だし、必要もないものだとは思う。もちろん俺にも、俺の務める会社の社長でもこのクラスの知り合いはいないレベルだと思う」
三人でひそひそと話していると、物理的な壁があって見えない運転手からだろう、スピーカから声が聞こえた。
「到着いたしました。が中までご案内するので少しお待ち下さい」
外を見てみるとずっと壁が続いており、今車も通れる門が開いていっているところだった。門が開き切ると車は前進し、しばらくして止まった。
「お疲れ様でした。到着しました」
そういうとすぐに運転手さんは車を降りて、たぶん降りる側、俺の方の扉を開けた。
降りるとそこは大邸宅の玄関口だった。なんかホテルみたいなドアマンがいるし。俺とかウォーモンガー上左近くんはある程度外の景色を把握しやすかったのでそこまでではなかったが、フライハイト呉くんはあまり景色を見れない位置に座っていたので驚いたようだ。
「それでは私はこれで。お荷物は後ほどお運びします。あとは武田が案内いたします」
そう言い残して運転手は車に乗って去っていった。そのあとについてきていた高級車が止まり、ネ・ムイ田中さんと武田さんが降りてきた。
「え? ネ・ムイって女だったのか。俺と同類だと思ってたのに」
そんなことを上左近くんは呟いていた。
自然と武田さんのところに集まる。武田さんは玄関を開けるドアマンに私が案内する、とか言っていた。
「お疲れ様でした、皆様。では私武田が大滝邸を案内します。サントノーレもお待ちでしょう」
玄関から入ると、そこは中世ヨーロッパの貴族が住んでいるかのような、ホテルのエントランスホールのような広々とした空間だった。
そしてそこの中心に一人の小学生と思われる程度の身長や顔つきの女の子が、タキシード?のおじいさんや、メイド服(もちろん長いスカートの)のおばさんや何人かのメイドさんを引き連れて立っていた。
まさか。
武田さんがその小学生ぐらいの女の子の隣に立った。
「私がサントノーレ。大滝弓子です。フライハイト、ネ・ムイ、ヒジリ、ウォーモンガー、の中の人ですよね?」




